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アルバイト探偵 第1期 原作:大沢在昌(アドベンチャーロード)

  • 作品 : アルバイト探偵 第1期
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : A-
  • 分類 : アクション(国内)
  • 初出 : 1989年1月4日~1月6日
  • 回数 : 全3回(各回15分)
  • 原作 : 大沢在昌
  • 脚色 : 高谷信之
  • 演出 : 伊藤豊英
  • 主演 : 松田洋治

ちょっと不良の高校生・隆(りゅう)は、たまに父親の仕事を手伝っているアルバイト探偵。
その父親の冴木涼介は「冴木インベスティゲーション」なる探偵事務所を営む、こちらは本物の不良中年。
自堕落で女好きの、しょーもない父親だが、昔はその筋(どの筋だ?)では有名な腕利きだったという、ただならない噂もある。
ただならないと言えば、隆と涼介の関係には、隆自身も知らないただならない秘密がありそうだ。
そんなふたりの元には、やはりただならない事件が持ち込まれる。
今回、隆の家庭教師である麻里が持ち込んだ事件とは、一体どのようなものだろうか?



大沢在昌さん原作の小説「アルバイト探偵(アイ)」シリーズの第1作である短編集を原作とするラジオドラマです。
大沢在昌さんの作品は他に「新宿鮫・氷舞」もNHK-FMでラジオドラマ化されています。
大沢さんといえば今でこそハードボイルド小説界の大御所ですが、「新宿鮫」があたるまではヒット作に恵まれず「万年初版作家」と呼ばれていたそうです。
そのため、本作品は大沢さんのブレイク前夜の作品であり、NHK-FMスタッフの目の確かさが証明される原作採用の典型例だと思います。

わずか全3話

ちなみに原作小説「アルバイト探偵」には4篇の短編が収録されていますが、4話目の「セーラー服と設計図」のみ、同年7月に放送された第2期で放送され、この第1期では3話がラジオドラマ化されました。
なお、原作のタイトルは「探偵」と書いて「アイ」と読ませるのですが、このラジオドラマの中では普通に日本語で「たんてい」と発音していますので、この記事でもそのとおりのタイトル表記としました。
その他、原作では「行商人」に「スパイ」と振られているですが、こちらはラジオドラマでは英語で「スパイ」と発音しています。
要はラジオドラマでは、音で聞いてすぐにわかる方を優先しているようです。

各回サブタイトル

さて、本作品は冴木親子に持ち込まれる事件を、1話完結形式で放送する作品です。
全3話のサブタイトルは以下のとおりです。
各回はそれぞれ独立した事件ですが、全体を通じて涼介の過去や、隆の出生の秘密が少しずつわかっていく構成です。

  1. アルバイト探偵は高くつくの巻
  2. 相続税は生命で払えの巻
  3. 海から来たスパイの巻

ハードボイルド、少しコミカル

大沢さん原作の作品ですので、一応、ハードボイルド調の作品ですが、主人公が高校生ということもあり、全般的に舞台は身近で、コミカルな要素もあります。
ただ、父・涼介は昔は本物の“その筋のプロ”だったという設定であり、要所要所では、暴力あり、諜報活動あり、銃ありの本格的なハードボイルド作品の顔も覗かせるのが作品の魅力です。

松田洋治さんと谷隼人さん

出演者は、まず主役の隆を俳優・声優の松田洋治さんが演じています。
松田さんは一時期のNHK-FMのラジオドラマの常連出演者さんで、出演作を挙げると、まさに枚挙に暇がありません。
出演は「夢源氏剣祭文」などの脇役もあるのですが、「盟友」、「シュナの旅」、「645~大化の改新青春記」、「ふたつの剣」など、主役での出演が多かった印象があります。
また、隆の父親の涼介を演じているのは俳優の谷隼人さんです。
有名俳優をさらっと脇役に持ってくるのはNHKらしいところです。

その他の出演者

その他のレギュラー陣としては、ふたりが世話になっている喫茶店マローの圭子ママ役に「おいしコーヒーのいれ方」シリーズや「分身」にも出演されていた高林由紀子さん、圭子ママが飼っている九官鳥の“がーくん”役(タイトルコールとの2役)にTVアニメ「北斗の拳」の次回予告での怪演が忘れられない千葉繁さん(「これは王国のかぎ」や「サラマンダー殲滅」にもご出演)。
また、ダブルヒロインである、女子大生家庭教師にして元女暴走族のリーダー麻里さん役の石塚久美子さんと、一見お嬢様風だが実はスケ番(←死語?)の康子役の松岡ミユキさんはともに劇団青年座のコンビ。
調べてみると松岡さんは「機動戦士Zガンダム」のファ・ユイリィ役とか。
なんてこった、知らなかった。
この辺までがレギュラーですが、その他の出演陣も堀勝之祐さん、佐古正人(雅誉)さん、関根信昭さんなど、重要どころが実に手堅い配役です。

後半は半年後

さて、本作品は、青春アドベンチャー系列の番組では本作品のほかには「怪事件が多すぎる」(1987年)しか例がない、わずか3話の作品です。
そして、本作品の最終回で千葉繁さんが「では、また次の機会に。」といったとおりに、わずか6カ月後に続編が制作されました。
本作品と全く同じ「アルバイト探偵」と名付けられた、その第2期の作品についてはこちらの記事でご紹介しています(ちなみに「怪事件が多すぎる」も6カ月後に続編「怪事件が多すぎる パート2」が制作されています)。

【伊藤豊英演出の他の作品】
多くの冒険ものの演出を手掛けられた伊藤豊英さんの演出作品の記事一覧は別の記事にまとめました。
詳しくはこちらをご参照ください。

Hirokazu

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