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銀河鉄道999 原作:松本零士(ふたりの部屋)

  • 作品 : 銀河鉄道999
  • 番組 : ふたりの部屋
  • 格付 : A
  • 分類 : SF(宇宙)
  • 初出 : 1978年11月20日~12月1日
  • 回数 : 全10回(各回10分)
  • 原作 : 松本零士
  • 脚色 : 川崎洋
  • 演出 : (不明)
  • 主演 : 市村正親

機械の体をタダで貰えるという星に向かうため銀河鉄道に乗った少年・星野鉄郎。
死別した母に瓜二つの美女メーテルとともに旅を続ける少年は、停車する星々で出会いと別れを繰り返す。
様々な人生の断面を垣間見、価値感に触れ、少年は人生の哀歓を知り、そして考える。
今、万感の思いを込めて、汽車が行く…



現在も放送が続くNHK-FMの帯ラジオドラマ番組「青春アドベンチャー」の先祖を辿ると「サウンド夢工房」、「アドベンチャーロード」を経て、1984年4月放送に「FMアドベンチャー」で放送された「無頼船長トラップ」にたどり着きます。

青春アドベンチャーのもうひとつの源流

ただ、当時のNHK-FMの帯ドラマは2枠あり、もうひとつの番組であった「ふたりの部屋」も「カフェテラスのふたり」を経て、(番組編成上はともかく放送ジャンル的には)「サウンド夢工房」に合流し、青春アドベンチャーにつながっているとも言えます。
そのため、NHK-FM帯ドラマの「無頼船長トラップ」と並ぶもうひとつの源流が、「ふたりの部屋」の最初の作品である、この「銀河鉄道999」であるともいえます。
実はこの記事は本ブログにおける600作品目のラジオドラマ紹介記事です。
その記念としてこのご先祖的位置づけの本作品を紹介させていただきます。
なお、なぜ番組のスタートが11月20日という半端な時期だったのかは不明です。
当時の経緯をご存知の方はいらっしゃいませんでしょうか?

一世を風靡した人気作

さて、漫画「銀河鉄道999」とそのアニメ化作品について多くの説明は必要ないでしょう。
松本零士さんの代表作にして、1980年代のSFアニメの金字塔。
絵面を冷静に見ると、宇宙空間を機関車C-51が疾走するというシュールな作品ではあるのですが、その抒情性とエンターテイメント性の両立は、当時、多くの子供とその少し上の世代の人間を虜にしました。

原作連載中のラジオドラマ化

その原作漫画のラジオドラマ化作品である本作品が放送されたのはまだ原作が継続中の1978年末。
当然、このラジオドラマ版で作品全体の結末が描かれることはないのですが、「銀河鉄道999」は主人公・星野鉄郎が999号で旅する過程のエピソードを連ねていく連作短編集なので、いくつかのエピソード切り取っただけでも作品としては一応成立します。
そもそも、「ふたりの部屋」は1回10分の短い番組でしたので、この長い物語(少年画報社のコミック版で全18巻)全体のラジオドラマ化なんてとても無理。
ただ、原作者の松本零士さんご自身が、原作漫画より一足早く物語の結末を示してしまう1979年の映画版の公開にあたって語ったように、「鉄郎が停車駅で繰り広げる幾多の出会いが大切」なのであり、作品の価値は結末の有無で左右されるものではなく、特に問題ないと考えていたのでしょう。

抒情性に振り切った脚本

とはいえ、1回10分はいくらなんでも短すぎます。
ドラマとしてまともに成立しないとも思われる短さなのですが、本作品はこれを思い切ってファンタジックな方向性で作り替えることで乗り切っています。
原作漫画は抒情性が高いポエミーな側面は持ちつつも、基本的には戦いあり冒険ありの男の子の成長物語なのですが、その男っぽい雰囲気は薄められ、全般的に韻文調になっているのです。

それもそのはず、脚本川崎洋

ある意味、さらに元ネタである宮沢賢治の世界に回帰した感じ。
あるいは別の言い方をすると、小説をベースにその世界観を表す歌を作ってみた、小説をベースにその印象的なシーンを中心にミュージカルにした、的な企画に近い感じのアレンジです(本作品に歌があるという訳ではありません)。
というのも、実は本作品を脚色したのは、詩人でもあり作詞家としても盛んに活動されていた川崎洋さん(「交響詩・うるんだ美女~四万十川をさかのぼる」を紹介済み)なのです。
10分番組に合せたアレンジにあたり川崎さんが起用されたのも納得です。

各回のタイトル

さて、本作品でドラマ化されたエピソードは以下のとおりです。
このうち「フィルメールの想い出」の後半及び「エルアラメインの歌声」は聞いたことがありません。
通常、聞いたことがない回が2回以上ある作品はこのブログでは紹介しないのですが、本作品は前述のように番組の先祖的な作品なので特別ということでご理解ください。
もしも私が聞いたことのない、この2回の音源をお聞かせいただける方があれば是非ご連絡ください
お願いいたします。
(※2021/9/25放送の「発掘!ラジオアーカイブス」で聴くことができました。詳しくは追記をご覧下さい)。

  1. フィメールの思い出 (前編)
  2. フィメールの思い出 (後編)
  3. エルアラメインの歌声
  4. 雪の都の鬼子母神
  5. タイタンの眠れる戦士
  6. 霧の弔い星
  7. サケザン大陸
  8. 化石の戦士
  9. 海賊船クイーン・エメラルダス (前編)
  10. 海賊船クイーン・エメラルダス (後編)

各回の案内役は原作者の松本零士さんご自身が務められています。
具体的には、冒頭と終わりに登場し、その作品をどういう思いで書いたのかをご自身で述べていらっしゃいます。
なかなか贅沢な作品です。

若き日の市村正親さん

松本零士さん以外の出演者は市村正親さんと倉野章子さん。
市村さんはご存知のとおり劇団四季出身の役者さんで、本作品が放送された1979年時点(当時30歳)はまだ劇団四季で活躍していたミュージカル俳優でした。
その後の1988年に「オペラ座の怪人」で主役を演じ、2005年には女優の篠原涼子さんと結婚することになります。
一方、倉野章子さんは文学座所属の舞台俳優さんで、夫は俳優の角野卓造さん。
このお二人が鉄郎とメーテルのほか、すべての登場人物を演じる形です。
なお、このおふたりのコンビは本作品の前年1978年にNHKラジオ第一(AM)の「ミュージック・ストーリィー」でやはり「銀河鉄道999」を演じています。
両作品がどのような関係なのか、詳細をご存知の方がいらっしゃいましたら是非ご教示ください。
(※こちらも追記にて補足しています)



(追記)2021/9/19記載、2021/9/26加筆修正
こちらで紹介したとおり、2021年9月25日に「発掘!ラジオアーカイブス」にて本作品の一部がおよそ40年ぶりに再放送されました。
主な内容は以下のとおりです。

  • NHK-FMでは1978年に3度(1月・4月・11月)、「銀河鉄道999」をラジオドラマ化した(※ブログ注※このうち4月が上記の「ミュージック・ストーリィー」と思われる)。
  • 1980年以前の音源はNHKに保管されていないが、「銀河鉄道999」については昨年暮、リスナー提供によりこの3作品すべてがNHKに揃ったので、その一部を放送するもの。
  • まず1978年1月1日に新春特番の中で放送されたのが「シンセサイザーによる宇宙の旅・銀河鉄道999」で全3話。菅沼定憲さんの脚色で、冨田勲さんのシンセサイザー(アルバム収録曲)を音楽として使用。このうち「発掘!ラジオアーカイブス」の当日は第1作「ガラスのクレア」(15分)のみを放送。
  • また、1978年11月20日~12月1日に新番組「ふたりの部屋」の第1作として全10回で制作。脚色は川崎洋さんでこちらでも冨田勲さんのシンセサイザー曲が多く使われている。「発掘!ラジオアーカイブス」では11月20日・21日に放送された「フィメールの思い出」と11月22日に放送された「エルアラメインの歌声」、11月30日・12月1日に放送された「宇宙船クイーン・エメラルダス」の合計5話分を放送。
  • 当日の進行はNHKアナウンサーの後藤康之さん。ゲストはゴダイゴのタケカワユキヒデさん。映画版「銀河鉄道999」のテーマ曲制作の裏話なども披露された。

偶然だとは思いますが、聴くことができていなかった2回分を聴くことができて個人的には満足です。
実は、今回放送されなかった「ミュージック・ストーリィー」版は2019年3月3日に放送された「今日は一日“ありがとうFM50”三昧 ~オーディオドラマ編~」に一部だけ放送済みではあるのですが、それはあくまで約3分間の抜粋版。
この際ですので、折角なら、「ふたりの部屋」版&「新春特番」版&「ミュージック・ストーリィ―」版のすべてを再放送して頂けると、なお嬉しかったかな。
でも折角発掘した音源を公開することは大賛成です。
NHKまでいけば「ふたりの部屋」版全10回を聴くことはできるみたいですが(参考:外部サイト)、なかなかそこまではできないもの。
今後もいろいろな作品を再放送・配信して頂きたいものです。

Hirokazu

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