00-03 都より愛をこめて 作:藤井青銅(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 00-03 都より愛をこめて
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A-
  • 分類 : コメディ
  • 初出 : 2020年4月20日~5月1日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 藤井青銅
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 梶裕貴

21世紀に入り加速した人と金の一極集中、そしてその対極にある地方の破綻。
両方を同時に解決するため、国会で遷都法案が通った。
ただし、新首都は今後の国民投票によって決まるとされた。
これを受け、日本の新首都をわが故郷に呼び寄せるため、日本全国の秘密結社が蠢動を始める。
NATTO(North Akagi,Tsukuba,Tochigi Organization=ナットー)、DAGAYA(DaiNagoya,Gifu Atarashii Yume Association=ダガヤ)、そしてGATTEN(General Adviser of TokyoTo-yo Eien-Nare=ガッテン)。
日本の将来を掛けた暗闘が始まった。


藤井青銅さんと言えば「干支シリーズ」そして「笑う・踊るシリーズ」でしょう。

干支シリーズばかりではない

これらのシリーズのほか、前身番組である「サウンド夢工房」の時代から多くの単発作品にも関与しており、青春アドベンチャーに提供した脚本の数は、圧倒的な第1位。
最近、並木陽さんが「ハプスブルクの宝剣」にて、①単なる原作提供、②他人の原作の脚色、③オリジナル長編作品の提供、の”3冠”を達成しましたが、このうち②(東京防衛軍など)と③(ゴー・ゴー!チキンズなど)に加え、④自らの原作を自ら脚色(愛と青春のサンバイマンピーチ・ガイ~ハリウッドリメイク『桃太郎』など)、⑤オリジナルのオムニバス作品の提供(我輩は犬であるなど)の”4冠”を達成している方は紛れもなく藤井青銅さんだけです。

地元おちょくりネタ満載

そんな藤井青銅さんの「ゴー・ゴー!チキンズ パート2」(2010年)以来、およそ10年ぶりの青春アドベンチャー参加作品がこの「00-03 都より愛をこめて」です。
ちなみにこのタイトルは「ダブルオーゼロさん 都より愛をこめて」と読みます。
いうまでもなく「007 ロシアより愛をこめて」をもじったタイトルですが、内容としては、名古屋であれば名古屋飯、北関東であればヤンキー(←ひどい…)と言ったご当地ネタ満載のコメディ作品。
2019年に映画が公開された「翔んで埼玉」や2019年までウェブ配信されていた漫画「お前はまだグンマを知らない」に似た地元ネタおちょくり系の作品といってもよいでしょう。
変な東京愛が表現されていた「東京防衛軍」と対になる作品、と言ったら拡大解釈ですかね。
地方の人は怒るかな、とも思うのですが、江戸っ子についても「威勢がいいくせに、すぐシュンとなる」とディスられており、全方位を敵に回しています。

風刺色は薄い

いずれにしろ、粗筋は冒頭に書いたとおりなので、つくり方によっては政治風刺色を強くすることも可能ですし、実際、そういったセリフも多少は入って入るのですが、通しで聴いた感想としては、そこにあまり魂がこもっているようには感じられず、基本的には単純に楽しく聴けばよい作品だと感じました。
藤井さんご自身、著書の中で「政治風刺をやるのは書きやすくて面白いからであり、特段、政治談議が好きなわけではない」という趣旨のことを書いていたように記憶しますので、まあこれでいいのでしょう。

各回のタイトル

なお、各回のタイトルは以下のとおりです。
これも何となく他の映画、アニメ等のパロディになっている気がしますが、すべてのもとネタはわかりませんね。

  1. 京太郎危機一髪!
  2. 北関東に進路をとれ!
  3. ナナを訪ねて三千里
  4. 希望なきゲーム
  5. あらたなる敵
  6. 対決・千年の都!
  7. 00-03は二度死ぬ
  8. 暴かれた真相
  9. 東京カウントダウン
  10. 新首都よ永遠に

爆笑に至らず

ただ、コメディとしても大爆笑できるかというとちょっと微妙な出来。
「愛と青春のサンバイマン」のハチャメチャぶりを知っている身としては、もっと振り切ってもよかったのではないかと思ってしまいます。
「この作品は20XX年の出来事」、「○○の方も怒らないでいただきたい」、「個人の感想である」などの言い訳連発も、それ自体が面白くはあるのですが、どうせなら言い訳なしでやって欲しかったかな。
折角、主演が梶裕貴さんなのだから「あいつら…駆逐してやる!この世から…一都市残らず!」くらいは言わせて欲しかったものです。

有名声優・出演

さて、今しがた書いた通り、本作品の主人公、東京太郎(あずま・きょうたろう)を演じるのは声優の梶裕貴さん。
上記のセリフは梶さんが主演した「進撃の巨人」における主人公エレン・イエーガーのセリフのパロディです。
アキバの休日」で宮村優子さんに「あんたバカァ?」と言わせた前科のある藤井青銅さんなのであらぬことを期待してしまいました。
梶さんの他、アーノルド・シュワルツネッガーの吹き替えで有名な玄田哲章さん(ナレーション)が声優畑の方。

アイドル・出演

一方ヒロインのナナは元SKE48の女優・木﨑ゆりあさんが演じています。
木﨑さんは愛知県春日井市ご出身なので、敢えて「名古屋以外の愛知県出身者」ということで選ばれたのでしょうか?
春日井市は名古屋市のベッドタウンで名古屋市に敵対的な感情は持っていなさそうなので考えすぎかもしれません。
それにして、本作品の直前に放送された「阪堺電車177号の追憶」に出演された乃木坂46の久保史緒里さんもそうですが、最近のアイドルの演技はなかなか立派なものです。

首都圏以外の人の方が多い

最後に少しだけ真面目に。
私は成人して以降、東京にも、東京以外の首都圏にも、この作品でいう「地方のエリート」にも、「地方のノンキャリ」にも住んだことがあるのですが、東京および首都圏に住んでいると、日本全国がこんな感じなのだろうと錯覚してしまう面は確かにあります。
しかし、東京の人口が増えているとはいえ、今なお、日本人の多数は東京および首都圏以外の住人。
地方を知らずに日本を知ったとは言えないと思います。

分断が進んでいる

地方生まれの人が東京に対して持つ二律背反した思いは、生まれてからずっと首都圏で暮らしているとわかりづらいし、「首都圏の人にはわかりづらい」ということが地方にずっと暮らしているとわかりづらい。
今、丁度、コロナ禍で人の移動が極端に減っている状況にありますが、それでなくても近年、地元志向が強く、東京と地方が分断されつつあるように感じます(統計的にみると東京都に限れば必ずしもそうではなく特に女性は違うようですが(※))。
地元愛自体は悪いわけではないのですが、国家間、社会階層間など色々な意味での分断が起き、不寛容が世界を覆いつつあることは憂慮すべきではないかとボンヤリと思ったりします。
そんなことが思いおこされた作品でした。
よくわからない感想ですみません。

(※)参考外部リンク「令和元年2019人口動態データ分析-強まる東京「女性」一極集中(1)~追い上げをみせる大阪府、愛知県は社会減エリアへ」(ニッセイ基礎研究所)



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