百八つの人助け 作:鈴木絵麻(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : 百八つの人助け
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : A-
  • 分類 : スラップスティック
  • 初出 : 2017年11月11日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 鈴木絵麻
  • 音楽 : ニウナオミ
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 石田法嗣

人前で話すことが極端に苦手なコウヘイがこのゼミを選んだのは、レポートさえ提出すれば単位がもらえると聞いたからだ。
しかしゼミで一言も話さなかったコウヘイに対して教授は単位取得のために条件を付けてきた。
それは、余命1カ月だと思い込んでいる親戚のお嬢さん(いとこの娘)に、病気になんてかかっていないことを理解させること。
ゼミとは何の関係もないではないか!パワハラだ!アカハラだ!…という思いはあれど、就職のためにグッとこらえることにしたコウヘイだったが、彼の目の前に現れた「お嬢さん」はなんと40過ぎの中年女性だった。
しかも彼女はコウヘイに向かって即座に言い放ったのだ。
「グズグズしている暇はありません。さあ始めましょう!」
あの~何を?
「人助けです!」


本作品「百八つの人助け」は鈴木絵麻さんによるオリジナル脚本のラジオドラマで、FMシアターの枠で全1回・50分で放送されました。
ちなみに本作品は当ブログが実施した「2017年FMシアター・特集オーディオドラマ人気投票」で第4位(「蛍の光、窓に雨」と同点)に入った作品です。

痛い、痛すぎる

さて、本作品は内気な大学生コウヘイと、彼を振り回す「勘違い中年女性」サヨリの物語です。
ここでいう「勘違い」とはまず、彼女が自分が不治の病にかかっていると勘違いしていることをさすのですが、ことはそれにとどまりません。
実は彼女の言動はほとんどすべてが勘違い。
最初の痴漢摘発こそ一般的にも正義といえる範疇にあるのですが、その後、彼女の行動はどんどんエスカレートしていき、独自の正義感に基づいて電車の中やバスの中、さらには自転車に乗って街中で「人助け」を押しつけていきます

はた迷惑

一方で、その脱線ぶりを他人から指摘されると「見解の相違」でばっさり。
その他、思い人が「テンピース」(ワンピースのパロディ?)の主人公だったり、出で立ちがロングスカートに女優帽だったりと、とにかく痛々しい。
結果、本人は「人助け」をしているつもりですが、端から見ると「憂さ晴らし」をしているようにしかみえません。
コウヘイも「お手伝い」をしているというより「尻ぬぐい」をしているといって良い状態。

でも意外と爽やか

しかし気づかないうちに人と会話することが苦ではなくなっていくコウヘイ。
そして最後の事件であるゴミ屋敷事件(FMシアターでは「遙かなり、ニュータウン」や「私の翼」などなぜかよくゴミ屋敷が出てきます…)を経て、確かに成長していくふたり。
なんやかんやいいつつ、割と爽やかな、いい意味でFMシアターらしい展開と結末を迎える作品でした。

石田法嗣さんといえばヘタレ

さて、本作品の主人公コウヘイを演じたのは俳優の石田法嗣さん。
帯ドラマ枠である青春アドベンチャーの「三匹のおっさん」(2011年)、「雨にもまけず粗茶一服」(2016年)で、ちょっとへたれた若者を巧みに演じていらっしゃったこともあり、私の中では、すっかり「巻き込まれ型の気弱な若者」のイメージが定着しつつあります。
きっとご本人の性格とは違うのでしょうけどね。
また、ヒロインのサヨリを演じているのは安藤玉恵さん。
役の年齢とほぼ同じ41歳の女優さんです。
年齢相応の大人びた声の方ですが、本作品のサヨリはかなりエキセントリックなキャラクターですので、声くらい年齢以上にかわいい感じで良かったのではないかと思いました(「ミラーボール」のイメージ)。

百八つとは?

さて、本作品「百八つの人助け」は実は106番目の人助けをした段階で終わっています。
あと二つの人助けで助かったのは誰だったのか。
コウヘイか、サヨリか、あるいは最後の事件の****か。
その辺は鈴木絵麻さんが作品に込めた寓意と関係するのかもしれませんが、各人の想像次第と言ったところでしょうか。



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