うるはしみにくし あなたのともだち 原作:澤村伊智(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : うるはしみにくし あなたのともだち
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A-
  • 分類 : ホラー
  • 初出 : 2022年1月23日~2月3日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 澤村伊智
  • 脚色 : 藤井香織
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 桜庭ななみ

この学校に通う女子の鞄には、ある日突然、雑誌が入っていることがある。
占い雑誌「ユアフレンド」の昭和64年4月号。
そこには昔自殺した姫崎麗美が残したおまじないが書かれている。
そのおまじないは同じクラスの女子の顔を好きに変えることができる。

かほちよの
いきるすべなき
もののわざ
たえてのろはむ
うるはしみにくし

クラスで一番の美少女・羽村更紗が自殺した。
原因はわからない。
しかし棺の扉は固く閉じられ、葬式の参列者が彼女の顔を見ることは決してなかった。




待望のホラー

ホラーです。久しぶりのホラーです。
青春アドベンチャーで放送された作品に当ブログで「ホラー」のタグをつけるのは、2018年8月の「なにわ純情ナイトメア」以来、約4年半ぶりですが、「なにわ純情ナイトメア」はほとんど怖くない作品でした。
ある程度怖い作品となると2013年4月放送の「泥の子と狭い家の物語~魔女と私の七十日間戦争~」まで遡る必要があります。
そもそも青春アドベンチャーで本格的に怖い作品は30年間の歴史の中でも「おしまいの日」(1993年)や「アクアリウムの夜」(2002年)など数作品に限られます。

やればできるはず

しかし、「金魚姫」でやったように突然耳元で囁くような演出をすれば相当怖いオーディオドラマをつくることは可能です。
「青春アドベンチャーの7不思議」を選ぶとすれば「なぜかホラーがほとんどない」は必ず入ってくると思っており、いつか徹底的に怖いものを作って頂きたいと個人的に思ってきたのですが、この作品はどうでしょうか?

舞台は現代日本の高校

舞台は都立高校(当然共学)、ルックスでスクールカーストができている世界です。
スクールカースト的な描写のある作品は青春アドベンチャーでは「王妃の帰還」、「アグリーガール」、「逢沢りく」などが制作されてきましたが、本作のそれはより直接的。
ずばり美醜を作品のテーマにしています。

ルッキズム

近年わが国でも「ルッキズム」(見た目を至上の判断基準として差別するような価値観のこと)について議論されることが増えてきました。
このことについて意見を述べられるほど自分の考えを整理できていない(作中の先生間の会話がクズ過ぎるとは思います)が、実際、写真アプリで自分や友達の画像を加工することがむしろ当たり前という時代。
インターネットやソーシャルメディアの発達によりルッキズムはむしろ広がっているように感じており、とても今日的なホラーと感じました。

主人公は教師

さて、主人公はこのクラスの生徒たち…ではなく、担任教師の小谷舞香。
ただ彼女自身も母親から容姿についてトラウマが残りかねないような声掛けを受けながら育てられており、容姿に関して強いコンプレックスをもっています。
担任するクラスで次々と起きる事件に巻き込まれ、彼女自身も当事者になっていくのですが…

妙に冷静になってしまった

本作品、ジャンルとしてはホラーなのですが後半、犯人探しが重要になる面ではミステリー的な要素も強い作品です。
ホラーとしてみた場合、演出で驚かすような感覚的・直観的なものではなく、恨みや嫉妬心といった人の悪意で心が震える種類のものだとは思います。
ただ、聴いていて心のどこかに、顔が変わるということへの恐怖心が切実には共感できていない自分がいました。
それは私が男性だからかもしれず、そうであるならルッキズムという側面からはともかく、ジェンダー平等の観点からはどうなんだろうと妙に反省してしまい(作品の質とは全く関係ない個人的な事情から)完全には没入できませんでした。

やはり後出しでは?

また、ミステリーとしてみた場合、随所に伏線があったことが最終回に示されはしますが、○○○でも呪えること、○○がそれほど美人ではないこと(姉妹関係含め)は、正直、後出し感が強く、もう少し事前ににおわせておいて欲しかったと思いました(ネタバレのために一部伏字にしました)。
以上、今ひとつピンとこない部分はあった(原作では説明があるのかな)のですが、全体としては毎回、ヒキで終わる緊張感のある展開で楽しく?聴くことができる作品でした。

主演は美人女優。顔は出ないけど。

さて、主人公・小谷舞香を演じるのは、女優の桜庭ななみさん。
青春アドベンチャーは初出演ですが、FMシアターの方では「私は、スーパーキューピッド」(2020年)、「私の人生は喜ばれない」(2022年)ですでに主演経験があります。
「そんな目付きじゃお友達はできない」「笑っているときが一番まし」と言われる舞香の役をこんな美人が演じるのは皮肉ですが、こんなに美人なのにおどおどした演技が上手いのも皮肉ですね。

公式HPの並び順

その他、同僚の男性教師を演じる忍成修吾さんや、クラスの女生徒たちを演じる、山本真菜さん、しまずい香奈さん、大出菜々子さん、清水美沙さん、三田みらのさん、岸本華和さん、村崎真彩さん、山下侑梨那さんあたりが主要なキャスト。
それにしても、この女生徒役の出演者、山本真菜さん、しまずい香奈さん、大出菜々子さんですが、公式ホームページのキャスト欄で、演じる役のクラス順位どおりに並んでいるのは何とも皮肉に感じました。

サブタイトル

なお、各回のサブタイトルは以下のとおりです。

  1. 狙われた美少女
  2. ユアフレンドのおまじない
  3. 疑惑の眼差し
  4. 錯乱する放課後
  5. 容姿の呪縛
  6. 呪いの餌食
  7. 逃れられない罠
  8. 生贄を差し出せ
  9. 切実な願い
  10. 真犯人の嘆き


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