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拝啓 名探偵殿 原作:藤原宰太郎(ふたりの部屋)

  • 作品 : 拝啓 名探偵殿
  • 番組 : ふたりの部屋
  • 格付 : AA
  • 分類 : 推理
  • 初出 : 1979年10月15日~10月26日
  • 回数 : 全10回(各回10分)
  • 原作 : 藤原宰太郎
  • 脚色 : 高垣葵
  • 演出 : (不明)
  • 主演 : 西田敏行

本作品「拝啓 名探偵殿」は、推理研究家・作家の藤原宰太郎さんによる「拝啓名探偵殿-掌編推理小説10分間ミステリー」をラジオドラマ化した作品で、1979年10月に「ふたりの部屋」で放送されました。
「ふたりの部屋」は本作品放送当時、1日10分の帯番組でしたので、まさに番組にぴったりの原作であったと思います。
それもあってか翌1980年にはパート2も制作されています。



推理クイズ本

さて、藤原宰太郎さんは1960年代から推理小説のトリック部分をピックアップしたような「推理クイズ」本を大量に世に送り出された方です。
今ではあまり見かけなくなりましたが、当時は本屋さんの一角や鉄道駅のキオスクにこの類の本がそれなりのボリュームで置かれていました。
本作品もその推理クイズ本に準じた構成になっており、まず「問題編」(再現ドキュメント)が5分程度放送され登場人物より「出題」がなされます。
そのあとリスナーの検討時間として一定時間音楽が流され、その後に「解決編」が放送されて終了。
なにせ各回10分ですので謎解きもワンテーマで、解決編も種明かしはきちんとするとしてストーリー上のエンディングはごく簡素。

10分番組に最適の原作

でもこれがいい!
そもそもラジオドラマで本格的な推理ものを放送するのはなかなか困難なのです。
過去当ブログでも「二の悲劇」、「放課後はミステリーとともに」、「精神分析ゲーム」などの推理ものを紹介してきましたが、どの作品もかなり苦労して制作されていると思わざるを得ません。
謎解きを中心とした本格推理ものは、ラジオの場合、ボーっとしていてトリックの鍵となる部分が聞き逃すとリカバーが困難という点でかなりハンデがあります。
では人間関係の解きほぐしを中心とした人情もの的に作ろうとしても、セリフと少しのナレーションだけで複雑な人間関係を把握するのはリスナーには結構難しい。
結果どうしても、動機を重視したミステリーというよりサスペンスと呼ぶべき作品や、アクション多めの作品とならざるを得ない。
そうした中、ワンテーマのトリックを解くために必要な最小限な場面に絞り、時間も集中力が途切れない5分程度にして、その後にすぐ解決編を放送するというのは、ラジオドラマで推理ものを成功させるための一つの優れた解だったのではないかと、聞いていて改めて感じました。

各回概要

さて、それでは各回のタイトルと概要を示すと以下のとおりです。

●第1夜:狂った殺意
女が殺された。犯人は幼馴染か恋人か。謎を解くカギは電圧。

●第2夜:深夜の追跡
ひったくり犯はどちらの部屋の男か。カギはある飲み物が握っている。

●第3夜:やっかいな死体
無事に死体を処理したプロの殺し屋。しかしある物が原因で足がついてしまった。

●第4夜:凶器はネクタイで
1時間前から美容院にいた女。アリバイは万全のはずだが…?

●第5夜:自殺志願者
保険金を妻に渡すために自分を殺せという依頼者。殺し屋が授けた完全犯罪の方法は?

●第6夜:女スパイをさがせ
重要な会議の直前に盗聴器が発見された。犯人特定のカギは録音されていなかった音。

●第7夜:誘拐された愛人
(音源未所有:もしお持ちの方がいらっしゃいましたらぜひお聞かせください)

●第8夜:白い花と赤い花
官能小説家が殺された。残されていたのはあまりに曖昧なダイイングメッセージ。

●第9夜:怪盗ルパン2世
秘蔵しているゴッホの絵画があまりに鮮やかに消え去った。犯人は誰だ?

●第10夜:名探偵シュリーマン
考古学への夢を胸に秘める若きシュリーマンが出会ったのは埋蔵された金貨の謎。

出演者はふたりだけ

さて本作品の出演者は西田敏行さんと初井言榮さん。
おふたりですべての役をこなされています。
西田さんはこの記事アップ時点では、竹下景子さんとともにNHK-R1(ラジオ第一)で二人芝居の「新日曜名作座」を担当されています。
そのはるか昔に同じような作品を担当されたことに少し驚きました。
また、初井言榮さんといえば日本を代表する「おばあちゃん女優」。
無くなられたのは61歳とのことですので、長い間、若くして老人(特に姑)を演じ続けていたことになります。
なお、この記事アップ時点で再放送をしている青春アドベンチャー「幻坂」主演の山野史人さんは初井さんの元夫(初井さんと死別後、現在は別の方と再婚)です。


作品タイトルに「探偵」という言葉が入った作品をここでまとめて紹介しています。
ご覧ください。


本作品は当ブログが実施した「2020年FMシアター人気投票」の第4位の作品です。




Hirokazu

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