ウィッグ取ったらただの人 作:伊勢直弘(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : ウィッグ取ったらただの人
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 2020年9月28日~10月2日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 作  : 伊勢直弘
  • 音楽 : 小林洋平
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 入野自由

「でもシュンキ君、ホントすごいよなあ」
なによ…
「目力強くて、細マッチョ。で、顔も声もアクションもキャラに寄せてて、なおかつあの青のロン毛が似合うって!」
やっぱりそれか…
「マジで奇跡の再現度!!」
そこじゃねえよ…お前と違って俺はちゃんと演技してんだから演技褒めろよ…
このままじゃ俺はいつまでたっても「2.5次元の人」。ちゃんとした俳優として認めてもらえない。
俺にとって2.5次元はもはや足枷だ。
なんとかしないと。



本作品「ウィッグ取ったらただの人」は伊勢直弘さん脚本によるNHK-FM青春アドベンチャー向けのオリジナル脚本のラジオドラマで、2.5次元ミュージカルとその出演者を取り上げた作品です。
「2.5次元」とは、3次元(リアル)と2次元(フィクション、特に漫画・アニメ・ゲームなど2次元の媒体に描かれた作品)との中間という意味で、「2.5次元ミュージカル」はこれらの世界観を舞台上でリアルに描くことを特徴とする舞台作品。
2.5次元ミュージカルは1990年代の「美少女戦士セーラームーン」や2000年代以降の「テニスの王子様」あたりが嚆矢のようです。
本作品は2.5次元ミュージカルの制作現場自体を舞台にした内幕ものの作品です。

普通の舞台劇とどう違うのか

なお、「ベルサイユのばら」を代表的演目とする宝塚歌劇団を始めとして従来から、漫画等を原作とする舞台作品は数多くあった訳ですが、劇団や演者自体に強固なファン層が付いていた宝塚などと比べて、「2.5次元ミュージカル」は劇団や出演者のファンより原作ファンをこそ主要なターゲットとしている点で大きく異なります。
本作品で「キャラ再現度」が重要なキーワードとなっているのもそういう文脈で読み解く必要があります。
ちなみに「2.5次元ミュージカル」は日本2.5次元ミュージカル協会の登録商標なのだそうで、それだからか本作品ではこの言葉は使われず、本作品中ではあくまで「2.5次元舞台」です。

「2.5次元の人」では嫌だ

さて、本作品の主人公シュンキは若手役者で世間では「2.5次元のトップランナー」などという呼び名で持て囃されている若手役者。
しかし本人はその現状に全く満足していない。
「再現度で褒められて喜ぶほどレベルは低くない」「演技で褒めろよ」「みんな俺の演技ちゃんと見てんのかよ」などと心の中では不満たらたらです。
それもそのはず。彼ももうすぐ30。
演技で認められ本格俳優と呼ばれたいのです。
…あれ?昨年のこの時期青春アドベンチャーで放送されていたオリジナル脚本作品も「本格舞台俳優」を目指していた男だったような…

王道の展開

まっまあそれは偶然の一致でして、昨年の男と違ってシュンキはいたってまじめ。
嫌いながらも再現度には人一倍こだわったり、ひとりでオーディションを受けに行ったりなど地道に苦労しているのですが、どこか空回り。
オーディションでは後輩に負け、2.5次元舞台への出演態度を周りから責められ、挙句の果てには思いもよらないハプニングに巻き込まれていきます。
しかし、自分の仕事を見つめなおし逆境を乗り越えていく様はまさに「お仕事もの」の王道と言ってもよく、ストレートな好感の持てるストーリーです。
ただ、確かに主人公に傲慢な側面はあったとしても仕事に対する態度は序盤からあくまで真摯であったためあまり大きく成長したとも感じづらかったこと、一連の騒動がごく狭い業界内の「コップの中の嵐」という程度のものだったことから、予想外の展開とはならなかったのは少し残念に感じました。

脚本家も2.5次元関係者

さて、スタッフに話を移しますと、本作品の脚本を書かれた伊勢直弘さんは俳優として舞台「黒執事」(原作は枢やなさんの漫画)に出演経験があるほか、「PEACE MAKER~新撰組参上~」、「ノラガミ」、「四月は君の嘘」等の脚本や演出を手掛けられており、べったり「2.5次元」関係者ではないものの、かなりその世界に精通されている方。
こちらの記事(外部サイト)では2.5次元への思いも口にされています。
なお、2019年には本作品の作中作「幕末キック・アス!」に近い「エドアス!〜大江戸キック・アス!〜」なる作品の脚本を書かれているようですが、ストーリーは全く関係ないようです。

珍しい声優メイン作品

また、主演の入野自由(いりの・みゆ)さんは主にアニメ等で活躍されている声優メインの俳優さん。
出演者が舞台俳優メインである青春アドベンチャーでは珍しく、声優メインでありながら「夢みるゴシック それは常世のレクイエム」、「尾張春風伝」、「魔岩伝説」、「砂漠の歌姫」など多くの作品に出演経験があります。
共演者も山口由里子さん(「新世紀エヴァンゲリオン」の赤木リツコ博士役の方ですね)や仲村宗悟さん、狩野翔さん、鈴木達央さん、神尾晋一郎さんなど声優さんがメインの珍しい作品です。

サブタイトル紹介

最後に各回のサブタイトルを列挙すると以下のとおりです。
コテコテですね。

  1. キャラ再現度?そこじゃねえよ!
  2. 絶体絶命!なのか?
  3. 俺の俳優人生、どこに向かう?
  4. おいおい!今度はなに?
  5. もう迷わない、やってやるぜ!

(補足)
2020年12月30日の「一日で聴く青春アドベンチャー」において「逢沢りく」、「暁のハルモニア」と一緒に再放送されました。
新作として放送されたのと同じ年のうちに再放送されるのは青春アドベンチャーではかなり異例です。




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