宇宙艇モモタロー号の帰還 作:倉島齊(FMシアター)
結婚して銀河の果てまで金を探しに行こう。それがプロポーズの言葉だった。人工冬眠とワープ航法を繰り返して100年余り宇宙を彷徨った末に、地球から200光年離れた辺境の星でやっと見つけた金鉱脈。その頃には2人の息子に恵まれ家族は4人になっていた。さらに8年を費やして採掘・精錬し続けた結果、小型宇宙艇に乗せられる限度いっぱの123本もの金塊を得ることができた。今後は12回のワープと48年の人工冬眠により、所要実働時間4年で地球に帰ることができる。2人の息子にとっては両親以外に初めての人間に出会うことになる。両親のように心から愛しあえる伴侶を見つけることができるのだろうか。愛がなければモモタロー号に積んだ莫大な金も一文の価値もないと同然なのだから。