いつか猫になる日まで 原作:新井素子(アドベンチャーロード)

格付:A
  • 作品 : いつか猫になる日まで
  • 番組 : アドベンチャーロード(SFファンタジー)
  • 格付 : A-
  • 分類 : SF(宇宙)
  • 初出 : 1987年11月2日~11月6日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 新井素子
  • 脚色 : 岡本螢
  • 演出 : 松本順、小木哲郎
  • 主演 : 有森也実

大学生・海野桃子(うみの・ももこ、愛称“もくず”)は、ある日、不思議な夢を見る。
自分と同年配の5人の男女とともに、白く輝く部屋で、女神を中心に座っているのだ。
隣の女性は幼なじみの“あさみ”だが、他の4人ははっきりしない。
そして翌日、もくずは更に不思議なことに遭遇する。
石神井公園近くの喫茶店で偶然にもこの5人と出会い、しかも駅への帰り道で空中戦を繰り広げるUFOを見てしまったのだ。
そう、これが6人の若者達が奇妙な“宇宙戦争”へと参加するキッカケだったのだ。



新井素子さん原作のSF小説をラジオドラマ化した作品です。
新井さんの作品は、青春アドベンチャー系列の番組(ここでは「ふたりの部屋」、「カフェテラスのふたり」、「アドベンチャーロード」、「青春アドベンチャー」)で合計9作品がラジオドラマ化されており、このうち本作品「いつか猫になる日まで」の紹介をもって、合計7作品の紹介が終わりました。

お聞かせ願いたく…

残り2作品は「プシキャット翔んでも大冒険」と「ひとめあなたに…」なのですが、残念ながらごく一部しか聴いたことがなく、ご紹介できません(不完全な音源しかもっていませんが「ひとめあなたに…」は紹介しました)。
もしも音源をお持ち方がいらっしゃいましたら、お聴かせ頂ければ幸いです。

ライトノベルの元祖

さて、本作品はライトノベル作家の始祖のひとりとも言われる新井さんの、その中でも特にライトノベルっぽい作品のひとつです。
何せ舞台が石神井公園(新井さんの地元の東京都練馬区にある比較的規模の大きい都立公園)ですし、もくずが通う大学も例によってR大学であるなど、やたらと身近です。
そういった身近なキャラクターが“宇宙戦争”に巻き込まれるあたり、とてもライトノベル的です。

SFでもある

ただ、あくまでライトな作風ではありますが、「レベルが上の生物への抵抗」、そして絶望的な状況でも諦めずに抗い続ける、というストーリーは、考えようによっては山田正紀さんの「神狩り」にも一脈通じるところがあり、日本のSFの正当な流れも引き継いでいることも感じます。
そういえばこのテーマは「絶句」にも通じるものですね。
というわけで、「神狩り」好きの私としては、本ラジオドラマを聴く以前に、本作品の原作を楽しんで読んだ覚えがあるのですが…

残念な点

正直言って、このラジオドラマはいささか薄すぎると感じました。
もちろん新井作品なので、深刻ぶった演出をされたら、それはそれで興ざめです。
でも、UFO同士の戦闘シーンや戦闘終結シーンのSEが「スペースインベーダー」などの安い電子音というのは残念過ぎます。
配役も、もくず役の有森也実さんやあさみ役の立原れい子さん、そして木村役の河西健司さん(なんとこの24年後の「三匹のおっさん」におっさんのひとりとして出演)はあまり違和感はありません。
でも、水原役の中西良太さん(「夏・風・ライダー」の方があっていた)、神様役の三谷昇さん、そして特に美姫役の鈴木みえさんはちょっとイメージが違いました(あくまで個人的な感想です。また、上手い下手ではなく合っているか否かです)。

良作の予感がするのに

考えてみると色々な意味で残念な作品です。
例えばスタッフは、脚本が「最後の惑星」の岡本螢さん、演出が「西風の戦記」の小木哲郎さん。
主演しているのは、後に「東京ラブストーリー」などで名を馳せる有森さん(本作当時19歳)ですし、脇役にも「銀河鉄道999」のメーテル役で有名な池田昌子さんや女優の戸川純さんやティナ・グレースさんが出演されているなど、意外と凝った配役なのです。

やはり短すぎた?

そして、本作品の抱える様々な要素の中でも最も惜しいのは、何より全5回というボリューム。
全5回だとどうしても細かい部分を端折った展開にならざるを得ませんし、折角、明確な個性付けがされているキャラクターなのに個々の心情まで掘り下げるのはほとんど不可能です。
その結果、ダイジェスト的な薄味な作品になってしまっているのは、とても残念だと感じました。
でも、これも原作に思い入れがあるからであり、これ単体として素直に聴けば悪くない出来なのかも知れません。
この辺は割り引いて読んで頂ければ幸いです。

タイトルにご注意

あっ!あと最後ですが、本作品、猫は出てきませんよ~
「いつか猫になる日まで」というのは、むしろ「いつか猫のように心安らかに暮らせるようになるまでは戦い続ける」という決意が込められたタイトルなのでした。

【新井素子原作の他の作品】


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