- 作品 : 聖杯伝説
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA-
- 分類 : SF(宇宙)
- 初出 : 2003年5月19日~5月30日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 篠田真由美
- 脚色 : 入山さと子
- 演出 : 保科義久
- 主演 : 置鮎龍太郎
人類同士の宇宙戦争は、宇宙連邦の成立で終わりを告げた。
しかし、長く続いた戦争の過程で、人類は自らの故郷がどの星であったかという記録を失ってしまっていた。
そんな時代のある日、辺境の惑星バルカで、たったひとりで遺跡の観光ガイドをするヨギのもとに、季節外れの観光客がやってくる。
その観光客-男-は、人類発祥の星に辿り着くために、宇宙中に散らばった人類が継承してきた「物語」を探し集めているという。
男と行動を共にしたヨギは、やがて自らの体に秘められた惑星バルカの秘密を知り、男もまた物語を探し求めることの意味を知るのだった。
篠田真由美さん原作のSF小説をラジオドラマ化した作品です。
騎士物語ではない
「聖杯伝説」というタイトルは、アーサー王伝説に代表される中世イギリスの物語群を連想させ、私もそのような作品だと思ったのですが、本作品は未来の宇宙を舞台にした作品です。
もちろん作中で「そのような物語もある」という伝聞で現実の聖杯伝説の存在が仄めかされているのですが、本作品のストーリーは中世の騎士物語とは直接の関係はありません。
ただし、本作品の劇中劇が13人の勇者の物語だったりしますし、「未知のものを追い求めるために旅を続ける物語」全般の比喩として「聖杯伝説」という言葉は意味付けされています。
(以下、ストーリー展開上のネタバレがあります。ご注意下さい。)
こちらをクリックして展開
さて、本作品は推理小説をメインに活躍される篠田さんの原作作品だけあって、なかなか凝った構成です。
具体的には、前半5話は、ヨギと観光客のふたりを中心とする惑星バルカでの出来事が語られます。
しかも第4話で劇中劇「光を求める13人の勇者の物語」が始まるのですが、第5話で突如中断されるともに、後半は現実世界に戻ったうえで全く違った舞台に移ります。
また、これに併せてヨギが殆ど登場しなくなり、第6話からは新たに女性キャラクターである宇宙連邦の統合開発部文化部長ティエム・ノイが主人公格として登場します。
後半は、このノイと、前半では単に観光客と呼ばれていたアーリーン・コーイを中心とした物語になります。
また、冒頭からナレーションとして登場していた女性がレンというキャラクターであることが徐々に判明し、後半には主要キャラクターのひとりになります。
そして終盤、第9話で劇中劇が再開され、その結末を登場人物達が聴き終えることにより、登場人物それぞれの物語が終了するとともに、新しい物語が始まるストーリーになっています。
(ネタバレ終了)
SFとしては中途半端だけど
全般を通じてテーマはありがちですし、部分部分のストーリーもそれほど興味を引かれるものではなく、SFとしてみても雰囲気だけという面もあります。
しかし、この凝った構成と、ヨギ、レン、ノイ、アーリーンと主人公格のキャラクターが4人(劇中劇のキャラクターを加えたら更に多い)もいながら混乱しないという巧みなストーリー展開は一聴の価値があると思います。
置鮎龍太郎さん主演
出演は、主役のヨギ役を青二プロダクション所属の人気声優・置鮎龍太郎さんが演じています。
「SLAM DUNK」「地獄先生ぬ~べ~」「聖闘士聖矢」「テニスの王子様」など少年ジャンプ系の漫画のアニメ化作品で多くの役を持っていらっしゃる方のようです。
ちなみに「銀河番外地、運び屋サム」や「ジグが来る」でアドベンチャーロード時代のラジオドラマに主演されていた故・沖田浩之さんは遠縁にあたるという噂もありましたがどうもデマのようです。
保科義久演出作品の特徴
青春アドベンチャーは一般的に専業声優さんよりも舞台役者さんの出演が多い番組です。
そうした中で、保科義久さんの演出作品には「トリガー」や「ジャガーになった男」、「王の眠る丘」、「タイムスリップ明治維新」、「魔女たちのたそがれ」など、アニメで活躍する専業声優さんが比較的多い印象があります。
その他の出演者
また、準主役であるノイを演じるのは「精霊の守り人」、「闇の守り人」でのバルサ役が印象的な唐沢潤さん。
同じく準主役といえるアーリーン役の金尾哲夫さん、レン役の広瀬彩さんとともに、充実した脇役陣です。
なお、ヒロインのレンと語りを担当するのは広瀬彩さんは、既に紹介した作品の中では「失われた地平線」が印象的ですが、その他、「ダブル・キャスト」や「押入れのちよ」、「ブルボンの封印」などにもご出演されています。
【保科義久演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。
コメント