水晶宮の死神 原作:田中芳樹(青春アドベンチャー)
11月のロンドンはとても大英帝国の首都とは思われないくらい沈鬱だ。
こんな天候では、貸本屋「ミューザ―良書倶楽部」に勤めるエドモンド・ニーダムだって気の晴れようもない。
ようやく晴れ間の覗いたある日、姪のメープル・コンウェイが思いついた気晴らしは、水晶宮(The Crystal Palace)への小旅行だった。
第1回万国博覧会の会場として建てられた水晶宮は、1854年にロンドン郊外のシデナムの丘に再現され、多くの観光客を集めている。
行われている催しが「インドの大魔術」などという俗っぽい見世物であること気が進まないニーダムだったが、可愛くかつ押しの強い姪の誘いに負け、とにかく出かけてみることした。
もちろん、そこで首なし死体が待っていることなど予想もせずに。