- 作品 : 私の翼
- 番組 : FMシアター
- 格付 : A
- 分類 : 少年(幼小)
- 初出 : 2015年5月16日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 豊田愛
- 演出 : 桑野智宏
- 主演 : 竹内琴音
コンビニで夕食を買い、家に帰る。
そして、家のドアを開ける前に上履きを履いて、軍手をはめる。
それが私の習慣。
だってママはもう随分と長いこと、ご飯を作ってくれていないから。
だってママが部屋中にゴミをため込んでしまって足の踏み場もないから。
小学校の友達から「駅前の高級マンション」と言われる私の家。
でも絶対に友達を家に呼ぶことはできない。
本ラジオドラマ「私の翼」は、第30回「NHK名古屋創作ラジオドラマ脚本募集」において最優秀賞を受賞した、豊田愛さんの脚本をもとにしたラジオドラマです。
「NHK名古屋創作ラジオドラマ脚本募集」はごく初期の第3回に木皿泉さんを輩出した歴史のある賞です。
ちなみに豊田さんは2018年にも同じFMシアターで「不惑検定」がラジオドラマになっています。
その家には秘密がある
さて、本作品の主人公・久保田芽衣(くぼた・めい)は小学6年生の女の子。
芽衣には同級生には話していない秘密があります。
それは2年前に両親が離婚して以来、同居している母親が徐々におかしくなり、今ではすっかり子供の世話をネグレクトし、家をゴミ屋敷状態にしてしまっていること。
しかも自分は悪くないと思い込んでいることから芽衣との親子仲も最悪。
その結果、芽衣自身も何事にもやる気が起きない状態になっており、卒業式で歌う「翼をください」の練習も口パクでごまかしている。
NHKらしい真面目な話
そんな芽衣が、家で洗濯すらすることができないことから行ったコインランドリーで、一人の高校生の少年と、彼の操る「ヒューマンビートボックス」に出会ったことから少しずつ変わり始める…
という、まあこれもNHKらしい、しかもFMシアターらしい、まじめなお話。
なんやかんや言って芽衣ちゃんは立ち直っちゃうんだろうなあ、と思われるかと思いますが、まあその通り。
高校生の彼の方にもシリアスな事情があったりすることや、母親も含めて1時間のドラマで立ち直ってしまうことも含めて、かなりご都合主義的な展開と言わざるを得ません。
実際に「ゴミ屋敷」をつくってしまう当事者は、医学的に見ると、強迫性障害のひとつである「脅迫的ホーディング」の状態にあることが多いようですので、終盤の母親の変化はあっさりしすぎのようにも感じました。
ラジオドラマにあったネタ
ただ、音だけで表現しなければいけないラジオドラマには、「ヒューマンビートボックス」(声を使って楽器などを模倣して音楽を作り出す音楽表現手法。「ボイスパーカッション」とほぼ道義。)という小道具がとても効果的に機能しますし、合唱曲「翼をください」と作品タイトル、そして作品のテーマを上手く絡ませて進む展開も外連味はありませんが、的確です。
曲と絡ませているという点では、作中で芽衣が歌う井上あずみさんの「さんぽ」(「となりのトトロ」のテーマ曲)が「めい」つながりであるところなんて、よくできています。
個人的には、健全な作品はとことん健全でよいと思いますので、その意味で本作品は首尾一貫した作品です。
小学生っぽくない?
惜しむらくは、芽衣を演じる竹内琴音さんの演技が小学生に聞こえないこと。
竹内さんは2002年3月生まれなので、収録当時11歳…って、実際小学生じゃないですか!
演技では中学生くらいに聞こえていましたが、芽衣が小学生っぽくなかったのは、竹内さんが上手すぎたのと、台詞が小学生っぽくなかったことが原因だったのかもしれません。
なお、本作品でもう一人、重要な役どころである高校生の少年ハルキを演じているのは劇団ひまわりの加藤創太さんなのですが、ヒューマンビートボックス部分を「演奏」しているのは「ik(稲吉宏輔)」という方の様子。
どのような方は判然としないのですが、こうして改めてヒューマンビートボックスを聞いてみると面白いものだなあ、と感じました。
本作品は当ブログが2015年末に実施したFMシアター年間人気投票で第3位に入りました(投票数が少なくて第3位がたくさんあるのですが…)
本作品以外のランキングに入った作品はこの記事をご覧下さい。
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