格付:AA

風の向こうへ駆け抜けろ 原作:古内一絵(青春アドベンチャー)

「初めっから勝ち組は決まっているんだよ…」 淡々とした口調で先生が吐く言葉は、あるいは真実なのかもしれない。 「競馬の名門に生まれて技術もある。そんなやつには地方競馬出の雑草なんて、とても太刀打ちなんかできない。」 でも、でも…悔しい! そう、私の中にある思いもまた真実だ。 「先生、教えてください。私、勝ちたいんです。」
格付:A

弾け!はじけろ!そろばん甲子園 作:東多江子(FMシアター)

「もう、部活決めた?」 入学式の行われるこの日は、学校中が部活の勧誘活動で賑やかだ。 負けてはいられない。 わが「珠算(そろばん)部」は、現在、部員たったの2名。 部長を拝命してしまった私、北九州総合高校・商業科2年の古賀すずとしては、最低3名くらいは部員を集めたいところだ。 …でも集まらない。 それはそうだろう、こんな地味な部活、選ぶ方が変だ。 こうなったら2名でもいい。 いや1名でもいいから、有段者の新入部員がどうしても欲しい。 目標としている珠算の全国大会、いわゆる「そろばん甲子園」の団体戦出場には3名が必要なのだ。 このままでは出場することすら出来ない!
格付:AA

想い出あずかります 原作:吉野万理子(FMシアター)

二十歳の誕生日を前に、海辺の街に帰省した里華(りか)。 親への挨拶もそこそこに出かけて行ったのは、波打ち際に建つ「想い出質屋」だった。 この店の店長は普通の人とは違う不思議な人。 この店は想い出を預かる代わりにお金を貸す不思議な店。 しかし、人は二十歳を過ぎると、この店に行けなくなってしまう。 最後のチャンスに店を訪れた里華は、中学3年生で初めて訪れてからの想い出を店長さんと語りあうのだった。
格付:B

すやまたけし短編集「帆船の森」より (サウンド夢工房)

すやまたけしさんは、雑誌「詩とメルヘン」にて、同誌の名を冠した賞を受賞して本格デビューされたメルヘン作家さんです。 Amazonで検索すると、「火星の砂時計」(1987年12月)、「ナーガラ町の物語」(1988年10月)、「帆船の森」(1990年1月)の3作品が出てきますが、いずれも絶版のようです。 ちなみに、すやまたけしさんご自身も2011年に亡くなられているようです… 時間の流れを感じますね。
格付:AA

無頼船長トラップ 原作:ブライアン・キャリスン(FMアドベンチャー)

一体、ジェームズ提督はなにを考えているのだ。 2800回もドイツ軍からの空襲を受けた孤立無援の島・マルタ。 最近ではろくな物資も入ってこないこのマルタと北アフリカの間を、非武装で、レーダーも無線も持たず、しかも機雷の情報もなしに1年2カ月も往復を続けた船がいるというのか? しかもトラップなる無頼漢が率いるその船はドイツアフリカ軍団の横流し物資で闇商売をしてきた旧式の小型貨物船だというのだ。 そんなことはありえないはずではないか。 しかし、一番信じられないのはそのことではない。 なんと提督は、ようやく拿捕したそのボロ船をそのまま英国海軍に編入し、北アフリカのドイツ・ロンメル軍団の補給路を断ち切る任務に就かせろというのだ。 しかもその責任者として、この私、ミラー大尉を任命するというのだ。
格付:AAA

また、桜の国で 原作:須賀しのぶ(青春アドベンチャー)

中学を卒業後に外務省の留学生試験に合格してから早10年。 1938年、日本の外務書記生・棚倉慎(たなくら・まこと)はベルリンからワルシャワへと向かう列車の車上にいた。 先の大戦で傷つき、疲れ果てた欧州。 欧州中のすべての人々が平和を渇望しているはずだった。 しかしこのポーランドを覆う暗い影は何なのだ。 歴史上幾度も他国に侵略され国土を失ってきたポーランドはまた何かに怯えているかのようだ。 何かとは? それは領土的な野心を隠そうとしない隣国・ナチスドイツなのか。 それとも平和のためなら小国の滅亡にすら目をつぶろうという大国の無関心なのか。 いくつもの価値観の間で押しつぶされるポーランドの人々。 自身、日本とロシアという二つのアイデンティティの狭間に立つ慎は、この踏みにじられ、引き裂かれた国で何を目にするのか。
格付:AA

夕凪の街 桜の国 原作:こうの史代(FMシアター)

ぜんたい この街の人は不自然だ 誰もあの事を言わない いまだにわけがわからないのだ わかっているのは「死ねばいい」と誰かに思われたということ 思われたのに生き延びているということ そしていちばん怖いのは あれ以来 本当にそう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったことに 自分で時々気づいてしまうことだ
格付:AA

東の国よ! 作:福田義之(FMシアター)

1929年、日本の女性研究者は、イギリスの片田舎でようやくアーノルド・モロウを探し当てた。 アーノルド・モロウ。 文久2年に通訳として日本に来て以来、類まれな語学力と未知の世界に対する強い好奇心、そしてあくなき情熱で、明治維新の時代を日本人とともに駆け抜けた男。 彼の残した回顧録「いちヨーロッパ人の見た明治日本の変革」は、明治維新前後の日本を知るための第一級の資料とされている。 しかし、彼の回顧録には、ある重大な欠落がある。 鳥羽伏見の戦い前後の記録が混乱し、間違いも散見されるのだ。 これはモロウが意識的に行ったことではないか。 記録に残せない、あるいは残したくない、何かがあったのではないか。 すっかり年老いて反応も薄くなっているモロウの前で、研究者は自らが知る当時の時代背景を語り始める。 彼の証言を得るために。
格付:B

不思議の国のヒロコの不思議 原作:谷山浩子(FMシアター)

どうしてもあと1曲。あと1曲が出来ない! 新しいLPの録音まで、もう時間がない。 曲が出来なければ折角集まってもらったバンドメンバーと練習も出来ない。 もう逃げ出したい! あれ?あんなところに大きな木の扉が? あんなもの、あったかしら? なんでもいい。 あの扉から逃げ出してしまおう。 扉の先にいたのは金髪の少女。 少女はこう言ったの。 「あなたは標本よ、あなたは死んで剥製になったの。ここは地球博物館だから。」
格付:A

斜陽の国のルスダン 原作:並木陽(青春アドベンチャー)

1223年。 ヨーロッパとアジアの中間、黒海とカスピ海に挟まれたキリスト教国でひとりの女王が即位した。 周りをイスラム教国に囲まれるという地理的な不利を跳ね返し、その国が繁栄を極めたのはすでに過去のこと。 前王はモンゴルとの戦いで戦死し、国の存続すら危うい中、政治に無関心、無関係で育った女王にとって、唯一の味方は、隣国ルーム・セルジュークの王子であり幼馴染であった夫ディミトリだけであった。 これは国の運命を一身に背負った女王の物語。 最愛の男性と結ばれるという幸福と最愛の男性と離別するという悲しみを同時に受け止めた女王ルスダンの物語。
タイトルとURLをコピーしました