東の国よ! 作:福田義之(FMシアター)
1929年、日本の女性研究者は、イギリスの片田舎でようやくアーノルド・モロウを探し当てた。
アーノルド・モロウ。
文久2年に通訳として日本に来て以来、類まれな語学力と未知の世界に対する強い好奇心、そしてあくなき情熱で、明治維新の時代を日本人とともに駆け抜けた男。
彼の残した回顧録「いちヨーロッパ人の見た明治日本の変革」は、明治維新前後の日本を知るための第一級の資料とされている。
しかし、彼の回顧録には、ある重大な欠落がある。
鳥羽伏見の戦い前後の記録が混乱し、間違いも散見されるのだ。
これはモロウが意識的に行ったことではないか。
記録に残せない、あるいは残したくない、何かがあったのではないか。
すっかり年老いて反応も薄くなっているモロウの前で、研究者は自らが知る当時の時代背景を語り始める。
彼の証言を得るために。