並木陽さんの原作・脚本・脚色作品の一覧

演出家・脚本家別一覧

スタートは一篇の小説

青春アドベンチャーで複数のオリジナルの長編脚本が採用された脚本家さんはごくわずかなのですが、並木陽(なみき・よう)さんはその中で数少ない4本のオリジナル脚本が採用された方です。
もともとは主に同人系の小説を書かれていた方で、そのうちの一作「斜陽のルスダン」が(恐らく)演出の藤井靖さんの目にとまり2017年にラジオドラマ化。
この時のラジオドラマ向けの脚色は別の方(山谷典子さん)がされたのですが、その後、青春アドベンチャー向けに書き下ろしで7作品、脚本を手掛けられました。
また、2020年には藤本ひとみさん原作の小説「ハプスブルクの宝剣」を、2023年には中村小夜さん原作の「昼も夜も彷徨え」をラジオドラマ向けに脚色されています。

ヨーロッパ歴史もの+宛書

並木陽さんの作品の特徴はすべて中世又は近世のヨーロッパを舞台としていること。
そしてオリジナル脚本の作品については、出演者選定を同時に進め、演者をイメージしながら脚本執筆を進める「あてがき」的な手法で制作されたこと。
これは制作統括・演出を担当した藤井靖さんとの連携なくしては実現しなかったと思われます。

宝塚等の舞台俳優

そのため藤井さんの意向を反映してか、宝塚歌劇団出身の女優さんや、「レ・ミゼラブル」などの本格ミュージカルも出演経験者がキャストに多いことも特徴のひとつになっています(これは藤井靖さん演出作品に共通する特徴ではありますが)。
これが奏功してか、本ブログで毎年実施している人気アンケートでも多くの作品が上位に入っています。

関連作品一覧

それでは、並木さんが担われた役割ごとに一覧表にします。
ご覧ください。

原作提供

斜陽の国のルスダン

斜陽の国のルスダン 原作:並木陽(青春アドベンチャー)
1223年。ヨーロッパとアジアの中間、黒海とカスピ海に挟まれたキリスト教国でひとりの女王が即位した。周りをイスラム教国に囲まれるという地理的な不利を跳ね返し、その国が繁栄を極めたのはすでに過去のこと。前王はモンゴルとの戦いで戦死し、国の存続すら危うい中、政治に無関心、無関係で育った女王にとって、唯一の味方は、隣国ルーム・セルジュークの王子であり幼馴染であった夫ディミトリだけであった。これは国の運命を一身に背負った女王の物語。最愛の男性と結ばれるという幸福と最愛の男性と離別するという悲しみを同時に受け止めた女王ルスダンの物語。
  • 放送 : 2017年8月
  • 出演 : 花總まり、海宝直人、今井朋彦ほか
  • 舞台 : グルジア(ジョージア)
  • 評価 : 2017年投票第2位、本ブログ格付けA+

オリジナル脚本

暁のハルモニア

暁のハルモニア 作:並木陽(青春アドベンチャー)
17世紀、ドイツは戦乱の渦中にあった。三十年戦争。カトリックとプロテスタントの間で争われた最後にして最大の宗教戦争により、国土は荒廃、住民たちは塗炭の苦しみを味わっていた。後世から見れば「暗黒の中世」は終わりを告げつつある時代。しかし、イタリアでガリレオ・ガリレイが「それでも地球は動く」と呟かざるを得なかった時代でもある。いわんやドイツにはまだ近代文明の曙光もさしていない…ように見える。しかし、そんな時代でも新しい学問を求め歩みを止めない青年がいた。彼の名はヨアヒム・ハインツェル。若き天文学者であるヨアヒムは戦乱で大学を焼け出され、行くところがない。しかし、これ幸いと、予てから憧れていた大天文学者ヨハネス・ケプラーに会いに行くことに決めた。神のあり方を巡って混乱する地上。しかし、真理の光があれば世に調和をもたらすことだってできるはずなのだ。

紺碧のアルカディア

紺碧のアルカディア 作:並木陽(青春アドベンチャー)
西暦1201年、ヴェネツィア共和国元首エンリコ・ダンドロの孫娘フェリチータ・ダンドロが船長を務める武装商船ファルコドーロ号は、ヴェネツィアへの帰途、海賊に襲われる商船を救援、ひとりの貴人を保護する。彼女の名はテオドラ。斜陽の時を迎えつつある東の大国、千年の都コンスタンティノポリスに都をおく東ローマ帝国の皇女。それは終わりの始まり。理想と欲得、賞賛と罵声に包まれた「史上最悪の十字軍」に自分が加担していくことになることを、この時のフェリチータはまだ知らない。
  • 放送 : 2019年10月
  • 出演 : 花總まり、坂本真綾、井上芳雄ほか
  • 舞台 : イタリア・ギリシャ
  • 評価 : 2019年投票第1位、本ブログ格付けA

悠久のアンダルス

悠久のアンダルス 作:並木陽(青春アドベンチャー)
8世紀にウマイヤ朝が征服してから数百年。イベリア半島、イスラム教徒が呼ぶところのアル・アンダルスは、ウマイヤ朝が滅亡して小国に分裂してもなおイスラム教の勢力圏にあった。そうした小国のひとつムルシア国の王アル・ディーブは、聡明な姉ラシーダの補佐のもと、強力な国家による平和の実現のため、日々戦いのさなかにあった。国政面ではアンダルス東海岸の統一が視野に入り、家庭的にも妹ミスリーンや身内と言ってよい亡命王女カトルンナダーとの心安まる生活を得、順風満帆に見えたアル・ディーブとラシーダ。しかし、隣国バルセロナに傭兵隊長として"隻腕のダリオ"が雇われたのを境にふたりの運命は予想もしない方向に転がり始める。
  • 放送 : 2020年7月
  • 出演 : 朝夏まなと、伊礼彼方、相葉裕樹ほか
  • 舞台 : スペイン
  • 評価 : 2020年投票第5位、本ブログ格付けA-

1848

1848 作:並木陽(青春アドベンチャー)
「『騎馬の民なるマジャルの王はかつて、東の果てより馬を駆り、この地にたどり着いた。羊…の群れ、え、悠然と…草を食み、荒々しき…いや猛々しき?…』 だめだめだめ!どうして私の書くものには心踊る勇壮さというものが宿らないのかしら…」悄然としてユリシュカは筆を置いた。羊飼いの娘を母に持ち、大平原を駆ける英雄の生涯に思いをはせる夢見がちな少女に過ぎなかったユリシュカ。しかし、時代の荒波は近代化に立ち遅れた辺境の男爵家の少女の人生をも大きく変えていくことになる。欧州のそして世界の歴史を変えた革命の1848年まであと少し。ユリシュカも、そしてその兄カーロイも、まだ自らを待ち受ける運命を知らない。

軽業師タチアナと大帝の娘

軽業師タチアナと大帝の娘 作:並木陽(青春アドベンチャー)
18世紀前半、女帝アンナ・イワノヴナ治世下のロシア。帝都ペテルブルクにひとりの女芸人が華麗に舞っていた。彼女の名はタチアナ。国家と教会から弾圧され消えていったロシアの伝説的な芸人集団スコモローフの末裔であることを自認する彼女であったが、彼女自身はただの軽業師に過ぎなかった。しかし、帝国政府の暴政、それに対する人々の不満、そして彼女がもつ特別な運命が彼女が街角のいち芸能者であることを許さない。ある日、言い寄ってきた貴族の誘いを断ったことをきっかけに彼女は罪人としてシベリアに送られてしまう。これがロシアの大地を股に掛けたタチアナの冒険の日々の始まりだった。
  • 放送 : 2022年8月
  • 出演 : 朝夏まなと、野々すみ花ほか
  • 舞台 : ロシア
  • 評価 : 2022年投票第3位、本ブログ格付けB

ラングドックの薔薇

ラングドックの薔薇 作:並木陽(青春アドベンチャー)
1237年、フランス王との戦いが終焉し一時の平和を享受している南フランス・ラングドック。しかし平穏は表面的なものに過ぎない。フランス王に屈服した南フランス諸侯も、異端として迫害される「良き人々」(=カタリ派)の民衆も未だ苦しみの最中にあった。主を持たない若き自由騎士ペイレも領地を奪われた没落貴族の子弟である。一見、無責任な放蕩生活を続けるペイレだが、彼にも自らの心の内を苛む、ある思いがあった。
  • 放送 : 2023年6月
  • 出演 : 海宝直人、廣瀬友祐、坂本真綾ほか
  • 舞台 : フランス
  • 評価 : 本ブログ格付けB+

逆光のシチリア

逆光のシチリア 作:並木陽(青春アドベンチャー)
1859年。貧しい身分から身を起こし弁護士として大貴族に取り入ることに成功。美しい令嬢ペトロニラの関心も得、自分の立身出世のチェックメイトも近づいている。アウレリオは得意の絶頂にあった。しかし、公爵の別荘で過ごすペトロニラとのひと夏に2人の男女と出会ったことにより彼の運命は変わりだす。ひとりは公爵の農地管理人の息子ベネデット。もうひとりは英国から来たインゲストル子爵夫人アリス。激動のシチリアで彼らの運命はいかに。
  • 放送 : 2024年6月
  • 出演 : 加藤和樹、田代万里生、愛月ひかるほか
  • 舞台 : イタリア
  • 評価 : 2024年投票第1位、本ブログ格付けB+

脚色

ハプスブルクの宝剣

ハプスブルクの宝剣 原作:藤本ひとみ(青春アドベンチャー)
1732年6月、フランクフルトのユダヤ人居住区。医者となってパドヴァの大学から帰郷したエリヤーフーを待っていたのは、壁の中に閉じこもる同胞・ユダヤ人からの非難の視線だった。非ユダヤ人との融和を願って翻訳したドイツ語訳の律法(ユダヤ教の聖典)がラビの逆鱗に触れたのだ。そして壁の外でも世界は彼を追いつめる。名家の娘アーデルハイトと恋に落ちたエリヤーフーはその代償として左目と命を失うことになる。そう、ユダヤ人・エリヤーフー・ロートシルトは死んだ。神聖ローマ帝国の継承者マリア・テレジアが出会った男は、ユダヤ人の医者ではなく、エドゥアルト・アンドレアス・フォン・オーソヴィルという片目の伯爵。彼女の夫であるロートリンゲン公フランツの家臣。

昼も夜も彷徨え

昼も夜も彷徨え 原作:中村小夜(青春アドベンチャー)
12世紀。ヨーロッパ・イベリア半島にイスラム教徒が跋扈し、中東・エルサレムを十字軍という狂気が支配していた時代。2大宗教の圧迫が強まる中、ユダヤ教徒はその内部でも独善的なラビ(宗教指導者)による排他的な指導体制を敷いていた。そんな時代にひとりの若いユダヤ人神学者がラビたちの独善的な主張に異を唱える。イスラム教の信仰告白をしてでも生き延びるべきだ。しかし、彼自身は違う道を選ぶ。自由だけは手放せない。だからそれ以外の全てを手放して逃げる。逃げて己の信条が守れる場所を探して昼も夜も彷徨い続ける。風のように彷徨い続けるその生き方こそ彼の精神の姿そのものだった。
  • 放送 : 2023年3月
  • 出演 : 成河、咲妃みゆ、入野自由ほか
  • 舞台 : 北アフリカほか
  • 評価 : 2023年投票第5位本ブログ格付けA+

海の綺士団 -Umi no kishidan-

  • 放送 : 2025年4月予定
  • 出演 : 柚香光、渡辺大輔、三浦涼介ほか/li>
  • 舞台 : 地中海(マルタ島)
  • 評価 : 本ブログ格付け(未格付け)

藤井青銅さんに勝るとも劣らない

青春アドベンチャーで原作、脚本、脚色等でマルチな活躍をした方といえば何といっても藤井青銅さんなのですが、藤井青銅さんの主戦場はショートショートやコント作品
並木陽さんは、長編作品に限れば藤井さんに勝るとも劣らないご活躍です。

コメント

  1. Nagi より:

    YouTubeで並木陽さんの青春アドベンチャーに関わるようになった経緯のお話がありました。宝塚の演出家の生田大和さんがNHKオーディオドラマファンという話も!ご興味がある方は是非!
    https://www.youtube.com/watch?v=V5HaQ62v1ok

    • Hirokazu Hirokazu より:

      Nagiさま

      情報ありがとうございます。
      ヒロ・ヒロイさんのBHチャンネルですね。
      他にも何件か並木さん、中村小夜さん出演動画があります。
      ぜひ探してみてください。

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