- 作品 : 田毎の月が沈む
- 番組 : FMシアター
- 格付 : B+
- 分類 : 家族
- 初出 : 2025年8月23日
- 回数 : 全1回(50分)
- 原案 : 安田淳一
- 脚本 : 大村仁望
- 演出 : 佃尚能
- 主演 : 小林涼子
あの日、母親に手を引かれて姉と3人で村を出てから30年。
瑞穂は父親がどうしているかなどに関心を持たなかった。
母親と自分たち姉妹を捨てた父親を憎んでいたからだ。
父親が死んだとの連絡をもらい帰省して初めて、父親がずっと棚田で農業を続けていたこと、彼に内縁の妻と息子がいることもを知った。
そして赤字の棚田は誰も継ぐ者がいないということも。

本作品「田毎の月が沈む」は映画プロデューサー・安田淳一さんが原案で、大村仁望(おおむら・ひとみ)さん脚本のオーディオドラマで、2025年にNHK-FMのFMシアターで放送されました。
「田毎の月」は棚田1枚1枚にすこしずつ形の違う月が映ることを示しており、本作品は僻地の棚田を舞台にしていますが、農業問題に鋭く切り込んだ作品というよりは、それを背景としつつ、家族の問題を描いた作品です。
登場人物の人間関係
大きなストーリーラインは冒頭の粗筋のとおりですが、もう少し人間関係を切り口に紹介すると、まず主人公の瑞樹はシングルマザーで小学生の娘・楓と一緒に父親・玄次郎の葬儀などを行うために30年ぶりの帰省をします。
そこで待っていたのは父親の内縁の妻(地元のスナック勤め)の和江とその息子(つまり瑞穂の腹違いの弟)、そして両親の離婚の真相でした。
残された棚田の面倒を見られる人がおらず今年の収穫をもって相続放棄とせざるを得ない状況のもと、残り数カ月の短い期間を通じて、来し方行く末を考えていく瑞穂の心の動きを丁寧に描いた作品です。
出演陣が豪華
本作品の最大の特徴は脇を固める出演陣。
亡くなった父・玄次郎を演じた俳優の奥田英二さんや、玄次郎の内縁の妻・和江を演じた鈴木杏樹さんがその代表でしょう。
そして娘の楓を演じた白山乃愛さんは第9回東宝シンデレラオーディションで最年少でシンデレラに選ばれた(当時10歳!)ですし、三村理江さん(旧芸名「ミムラ」さん)もご出演。
また弁護士の常田を演じる山口馬木也さんも最近、名わき役として進境著しいですね(私の中ではいつまでも「ぼろ鳶組」の武蔵ですが)。
農業繋がり・その1
そうした中、主演されたのが女優の小林涼子さん。
4歳から子役をしており、ローティーン時代には二コラの専属モデルもされていた方ですが、現在は女優業を並行して世田谷区でアクアボニックス方式(「ナカスイ -海なし県の水産高校-」でも出てきましたね)で農業もされているとのこと。
NHKのスタッフもよくこんな作品にあった女優さんを探してくるものですね。
農業繋がり・その2
そうそう農業といえば「原案」の安田淳一さんは映画「侍タイムスリッパー」でヒットを飛ばした方ですが、2023年以降、米農家と映画監督の兼業で生活されているそうです。
というか、本作品の導入部の設定は安田さんの前作・映画「ごはん」とも共通点が多い。
そういう意味でも「原案」としているのかも知れません。
ない本作品は演出の佃尚能さんとの共同でつくられた企画のようなのですが、この辺の事情は以下の外部リンクをご覧下さい。

農業ものとしては物足りない
とはいえ最初に述べたとおり本作品はどちらかというと家族の問題に力点を置いた作品。
稲作という文化を維持するためにどうしたらよいのかという問題には本質的には踏み込んでおらず、最後の瑞穂の決断についても「こんな状況でなんとかなるのかな」という思いがよぎります。
「使命感や責任感」を語るのであればもう少し具体的な打開策もあればよかったのになとは思います。
ただ出演者の好演もあり、この辺の都合の良い結末がそれほど気にならない作品ではありました。


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