ツシマヤマネコの歌 作:桑原亮子(FMシアター)

格付:B
  • 作品 : ツシマヤマネコの歌
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : B
  • 分類 : 幻想(日本/ライト)
  • 初出 : 2023年12月2日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 桑原亮子
  • 音楽 : 伊賀拓郎
  • 演出 : 岡山結季乃
  • 主演 : 大谷育江

そのツシマヤマネコは幼い男の子でした。
母親はいません。エサを探しに行ったきり戻らないのです。
生きるためには自分でエサをとらなければいけませんが山にはエサがありません。
危険だけど田んぼの近くまで行けばエサは見つかるはず。
仲良しのスダジイの老木・スダ爺に教えられたその子は里に下りたのですが…


本作品「ツシマヤマネコの歌」はNHK長崎局制作のオーディオドラマで、主人公は長崎県の離島・対馬にのみ生息するツシマヤマネコの男の子、という設定の作品です。

ピカチュウ!

主人公は獣ですので人間と言葉は交わせないわけで、本作品ではモノローグ部分は日本語であるものの、人間と話している場面ではミャーミャーという鳴き声で話します(ただしなぜか子供とは会話ができるという設定なので中盤以降は普通の会話の場面が多くなります)。
このヤマネコの役を演じたのは声優の大谷育江さん。
言わずと知れたポケットモンスターの「サトシのピカチュウ」で声優アワード「キッズファミリー賞」を受賞されている方です。

大谷さん大活躍

つまり「ピカピカ!」という言葉だけで感情を表現するという難題を30年続けてきた大谷さんを起用したわけで、明らかに意図的なピカチュウ役を意識した意図的なキャスティングだと思われます。
とにかく本作はヤマネコ(寅吉)のセリフ量が多く、子猫で感情表現が豊かなキャラクターであることもあり最初から最後まで大谷さんの全開の演技(歌も含め)が展開されるのが最大の特徴だと思います。

ストーリーは?

で、ストーリーですが…
母親を人間に殺されながら、自分自身は人間に助けられた子猫が、人間の行動の意味、自身の生きる理由を探して、助けてくれた人間を探す、というのような話なのです。
ありていに言えばテーマは自然との共生とかになるのでしょうが、まあありがちな話ですし、結論もわかったようなわかんないような。
ただ、本作品はそこに意外性を探すような話ではなく、全体の雰囲気と大谷さんの演技を堪能したうえでふんわりとテーマを感じ取れれば十分なのだと思います。

その他の出演者

なお本作品は大谷さんに意外にも石黒賢さんや西内まりやさんも出演されています。
大谷さんの印象が強すぎるので気が付きづらいのですが意外と豪華な配役ですね。

ツシマヤマネコとイエネコって違うの?

さて、ところでツシマヤマネコってみなさんどこまでご存じですか?
大きさはイエネコとさして変わりませんし、ルックスもしかり。
正直、多分私は現地で見かけても野良猫と区別がつかないと思います。
でも実はイエネコはネコ属のリビアヤマネコ(もともとの生息域はアフリカ・中近東)が家畜化されたもの、ツシマヤマネコはベンガルヤマネコ属に属するベンガルヤマネコの亜種とされており、属レベルで全く違う種です。

よく考えると不思議

日本におけるイエネコの移入は弥生時代ごろというのが定説のようなので、イエネコ移入以前に有史以前から日本に生息していたものの本島では絶滅してしまったベンガルヤマネコ類の細々とした生き残りがツシマヤマネコであり、またイリオモテヤマネコということになります。
そう考えると対馬や西表島のような小さな島でのみ生き残っていたことが本当に不思議に感じますね。

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