- 作品 : ビギンズナイト 俺たちのカウント2.99!
- 番組 : FMシアター
- 格付 : B
- 分類 : スポーツ
- 初出 : 2020年3月28日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 虎本剛
- 音楽 : 小林洋平
- 演出 : 小島史敬
- 主演 : 棚橋弘至
高崎弘毅はチャンピオンだ。
それは単にベルトを巻いていることを意味しない。
プロレス人気が再燃した今でこそ会場は満員だが10年以上前はガラガラ。人気もなかった。
そんな時代から高崎は、どんな攻撃にも逃げずに、受けて、耐えて、みんなを勇気づけてきた。
本当の勝利は弱い自分に打ち勝つこと。
自分の姿を通して見せてきたその精神こそがプロレスの象徴、そういう意味で彼こそ真のチャンピオンなのだ。いやチャンピオンだった…
高崎ももう42歳。
売り出し中の若手カザマ・チカノリに負けたばかりか、選手生命を危ぶまれるほどのケガを負ってしまった。
高崎の時代も終わり。
そう囁く声も聞こえ始めたのだが…
本作品「ビギンズナイト 俺たちのカウント2.99!」は劇団「ステージタイガー」の劇作家・虎本剛さんの脚本によるオリジナルラジオドラマです。
プロレスラー高崎、2度目の登場
本作品自体は50分1本勝負の単発の作品なのですが、実は本作品には関連作があります。
それが2019年6月に同じFMシアターで放送された「カウント2.9!」。
「カウント2.9!」に重要な脇役として登場したイケメン・プロレスラー高崎弘毅を主人公に据えたのがこの作品なのです。
当然、高崎を演じるのも「カウント2.9!」と同じ棚橋弘至さん。
本職の人気プロレスラーにドラマ、しかも見た目でごまかしの効かないラジオドラマの主演をさせてしまったのが本作品なのです。
ただし役の深さは前作とは違う
ちなみに当然ながら、主役になったためセリフの量は激増。
というか単にセリフ量が増えただけではありません。
前作における高崎はあくまで「観客から見たプロレスラー」であり、試合あるいはその後のファンサービスの時間という外向きの姿でしか登場していませんでした。
端的に言えば「勇気づける立場」であったのに対して、本作品における高崎は自らが最も勇気を必要としている悩み多き立場。
演じなければならないキャラクターも前作とは実質的に大きく異なります。
正直なところ、この辺の棚橋さんの演技については、やはり本職ではない分だけ、それなりのたどたどしさを感じると言わざるを得ません。
棚橋さんの好演
でも聞いているうちにそのたどたどしさが、高崎の誠実な人柄をあらわしているように聞こえてくるのが不思議。
公式ホームページで棚橋さんご自身がおっしゃっていましたが「いつのまにか高崎弘毅と棚橋弘至の境目がボヤけていくような感覚」であり、これはこれで演技として十分に成立しているように感じました。
何せ周りは本職の役者さん、声優さんばかりですからね。
大したものです。
定評ある助演陣
さて、その「周り」については、まず高崎の妻、高崎菜摘を演じたのは女優の映美くららさん。
宝塚の元トップ娘役に生活感のある普通のおばさんの役をやらせてしまうあたり、NHK-FMもなかなかのものですし、これをきちっと演じるあたり映美さんも流石です。
その他、先輩レスラーのコング・木場を演じた菅生隆之さん(2代目沖田十三ですね)や、後輩レスラー風間役の佐藤祐基さん、近藤役の福山翔大さん、そしてリングアナ役で試合中喋りまくりの辻よしなりさんあたりが主要なキャストです。
ストーリーはスッキリ
…というわけでストーリーの紹介をほとんどせずにここまで来てしまったこの記事。
はっきり言ってストーリーは想像通りの展開です。
そして最後に、前作で示されていながら本作品では一度も登場しなかった高崎の決め台詞にちゃんと行き着き、そして作品タイトルとオーバーラップするセリフにつながって終わります。
まあ王道ということなのでしょう。
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