記憶の城 作:大田淳子ほか(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 記憶の城
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : 多ジャンル(競作)
  • 初出 : 1997年2月3日~2月14日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : (下表のとおり)
  • 音楽 : 小野文栄、BANANA
  • 演出 : 堀切園健太郎、土屋勝裕、佐藤譲、角岡正美
  • 主演 : 利重剛、片岡礼子

青春アドベンチャーはNHK-FMのラジオドラマ番組ですが、この「記憶の城」はNHKはNHKでもNHK名古屋局によって制作された作品です。

十人作家シリーズ

青春アドベンチャーでは例年2月ごろを中心に名古屋局の制作作品が放送されることが多いのですが、1996年放送の「新・夢十夜」以降しばらくの間は、10人の脚本家がオリジナルストーリーを1本ずつ担当する「十人作家シリーズ」(ネットにおける通称として名古屋脚本家競作シリーズ)が放送されていました。
本作品「記憶の城」はその第2弾であった作品です。

テーマは「記憶」?

本作品全体を通じたテーマ(お題)は、作品名からすると「記憶」だと思いますが、記憶がお題という曖昧なものだからか、聴いていて特にお題を意識させられることはありませんでした。

各回の概要

なお、本作品で放送された10本の作品の詳細は以下のとおりです。
脚本が10人バラバラであるのみならず、音楽も小野文栄さん(おの・ふみえ、第1・2・7・8話担当)とBANANAさん(第3~6・9話)が分担しています。
また、演出家もNHK年鑑では堀切園健太郎さんとなっていますが、ネットで検索すると、堀切園さんの他に、土屋勝裕さん、佐藤譲さん、角岡正美さんの名前も見えますので、各話ごとに分担されているようです。

◆第1話 「花園」 (大田淳子)

分類 : ホラー
格付 : B
姉を守るために結婚できないという男。女はふたりで面倒を見ようと答えるのだが。


あくまで静謐で繊細でどこか薄気味悪い。十人作家シリーズの典型のような作品。

◆第2話 「白い宝石」 (一尾直樹)

分類 : 日常
格付 : B
離婚を決意した女は、男の部屋で見つけた指輪について“YS”に当てた手紙を書く。


日常のすれ違いが生む人生の一コマ。淡々と進むが最後はうまくピースが嵌まる。

◆第3話 「たからもの」 (伊佐治弥生)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C
幼い頃の記憶。閑静な住宅街に、あの家はあった…


論評できない。本作品でも伊佐治さんの回は私には難しすぎる…

◆第4話 「彼女の未来」 (高松優)

分類 :職業
格付 : C+
声優として有名になった。しかし、人生を生きるのは私自身なのか、演じた役なのか。


「ガルフォース」が元ネタのSF展開は導入部だけ。脚本家本人が言うほど尖った作品ではない。

◆第5話 「猿蟹」 (大道珠貴)

分類 : 日常
格付 : C
久しぶりに叔母の家にやって来た男。昔と同様に我が儘で不遜な物言いだが…


後の芥川賞作家・大道珠貴さんの作品。猿蟹合戦のキャラがモチーフだが難解。

◆第6話 「原型」 (長島槇子)

分類 : 幻想(その他)
格付 : B
「私は形状記憶シャツである。名前はまだない。」


粗筋に書いた冒頭の一言がストーリーの伏線になっている。お見事。

◆第7話 「パタパタ」 (高橋里美)

分類 : 幻想(その他)
格付 : C+
息子が出かけるようだ。今回はおもちゃの内、誰が同行できるのだろうか。


おもちゃ同士が会話をする作品。残念ながら何が言いたいのかわからず。難しい。

◆第8話 「ワックス・ピナコラーダ」 (二木美希子)

分類 : 恋愛
格付 : B-
「彼が海に行ったまま戻らない。」私を訪ねてきた彼女はそう言った…


ファンタジックな話かと思ったら意外と生々しかった。

◆第9話 「四次元太郎」 (池田紀子)

分類 : 幻想(日本)
格付 : B
残した妻が気がかりで幽霊として現れた。しかし妻の顔と自分の名前しか思い出せない。


記憶が埋められていくだけの退屈な展開、と思っていたが、爽やかな終わり方で好印象。

◆第10話 「いいわ、またかけるから」 (田島秀樹)

分類 : SF(宇宙)
格付 : C
漂流が始まって7カ月。絶望とあきらめの中で男は、ある儀式をするようになった。


「青函連絡船」かと思ったら「星間連絡船」のようだ。設定は面白いのになあ…

「10人作家シリーズ」の常として、本作品も幻想的で難解な話(第3話など)が多いのですが、シリーズの他の作品と比較すると比較的明るく、分かり易いつくりの作品が多いようにも感じました。
特に第6話の「原型」と第9話の「四次元太郎」はなかなかのお気に入りです。

利重剛さんと片岡礼子さん

出演者については、各回とも、男性のメインの役を俳優・映画監督の利重剛さんが、女性のメインの役を女優の片岡礼子さんが演じています。
片岡さんは、同じ「十人作家シリーズ」の前作「新・夢十夜」及び次作の「嘘の誘惑」でも主演されています。
おふたりはほとんどの回に出演されており、一部の回ではおふたりに加えて何人かの方が出演される形です。
第2話には脚本家でもある北村想さん(「怪人二十面相・伝」原作)なども出演されています。
ただし、例外的に、第5話(利重さん)と第6話(片岡さん)は、ひとり芝居です。

【10人作家シリーズ(名古屋脚本家競作シリーズ)作品一覧】
その難解さとアンニョイさで青春アドベンチャーでも異彩を放つ、名古屋局制作のオムニバス作品シリーズの一覧は、こちらです。
本作品以外の作品の記事もご覧ください。


コメント

  1. てん より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    当時カセットテープに録音したのをテープが激しく劣化するまで聞きました。
    テープが壊れてから聴けてません。
    また聴きたいですね

  2. Hirokazu より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメント、ありがとうございました。
    正直、名古屋局の脚本家シリーズは高尚すぎて付いていけない作品も多いのですが、「記憶の城」はいいですよね。
    個人的にはこのくらいの加減だと嬉しいです。

  3. テン より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    おんなじ気持ちの人いるんだって書こうとしたら……その2016年のコメント、私が書いたものだって気付いた……お恥ずかしい。誰か仲間はいないのか……!

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