どこかで家族 作:木皿泉(FMシアター)

格付:B
  • 作品 : どこかで家族
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : B-
  • 分類 : 家族
  • 初出 : 2014年3月8日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 木皿泉
  • 音楽 : やまだ豊
  • 演出 : 小野見知
  • 主演 : 柿澤勇人

多分、神様からのバチが当たったのだと思う。
あんなことを思ったからだ、こんなくそ面白くない場所、全部なくなれって。
まさか本当になくなってしまうなんて思っていなかった。
2020年夏。
なくなってしまったのは僕の故郷。そして家族の絆。
あれから9年になる。
久しぶりに会う「家族」にどんな顔をして会えばよいのだろう…


本作品「どこかで家族」は神戸市在住の脚本家・木皿泉さんによるオリジナル脚本のラジオドラマで、2014年にNHK-FMのFMシアターで放送されました。
木皿泉さんは「すいか」(2003年)、「野ブタをプロデュース。」(2005年)、「セクシーボイスアンドロボ」(2007年)などを書かれた人気テレビドラマ脚本家さんで、それもあってか、本作品は2019年3月に放送された「今日は一日“ありがとうFM50”三昧~オーディオドラマ編」のトリを飾る作品として再放送されました。

木皿泉さんについて

なお、「木皿泉」は和泉務さんと妻鹿登季子さんのご夫婦による共同ペンネームで、もともと和泉さんが使っていたペンネームでしたが、その後おふたりのペンネームとなりました。
この辺の詳しい経緯は外部サイトをご確認ください。
ちなみに当ブログではかつて妻鹿さんが単独名義で脚色された作品最近では珍しく青春アドベンチャー枠で放送された作品も紹介しています。

エンタメ色の強い今回の三昧では異色

さて、先ほど本作品は「今日は一日“ありがとうFM50”三昧~オーディオドラマ編」で再放送されたと書きましたが、文芸色が強かった2015年放送の「今日は一日ラジオドラマ三昧」と比較すると、2019年の「三昧」はかなりエンタメ色が強かったため、いかにもFMシアターらしい「震災もの」+「家族もの」である本作品がトリであったことには若干の違和感がありました、

実はタイミングぴったりの再放送

ただ、本作品の時代設定が放送当時からみると6年先である2020年に設定されていること、そしてこの三昧が「3月」に放送されたものであることを考えると、なかなか考えられたタイミングだと思います。
なぜなら、本作品は、東日本大震災後8年、東京オリンピック前1年というこのタイミングを逃すと、明らかに「過去」の作品となってしまい、リアリティーを持った物語として聴くことができなくなってしまう宿命を持つ作品だからです(※放送タイミングについては追記をご覧ください)。

震災と家族

物語の舞台は2020年の愛媛からスタートします。
東日本大震災で一つの家族が避難するものと残るもののふたつに引き裂かれてから9年。
2020年東京オリンピックの開催を機に久しぶりに再会することを決めます(そういえば本作品は東京オリンピックの開催が決定された2013年9月から半年後の作品でした)。
実は家族4人はそれぞれ皆、家族がふたつに分かれてしまったのは自分が原因だと思っているのですが…
あとは作品を聴いてのお楽しみ、と言いたいところですが、予想どおり、特別なことは起こりません。
本作品の聴きどころは、すこしずつあきらかになっていく4人の思い、そして再会し話していく中でみつかる小さな希望(のようなもの)。
基本的に内省的な展開が続き、如何にもFMシアターらしい作品ではあります。
個人的には、お祭りはお祭りに徹すればよいのではないかとも思うのですが、エンタメに徹した10時間の最後にこれが流れることも、やはりNHK的な良さではあるのでしょう。

小野見知さん演出

なお、本作品を制作したのはNHKの松山局で、演出家は小野見知さん。
小野さんは本作品の2年前に同じ木皿泉さん脚色でラジオドラマ「LET IT PON!~それでええんよ~」を制作しており、また、本作品の4カ月後にはNHK総合「しこく8」で震災避難民を扱ったドキュメンタリー「“生きる意味”を探して ~避難家族3年の記録~」(ナレーション内野聖陽さん)を制作しています。
そういう意味では本作品は如何にも小野さんらしい作品です。
ちなみに、この小野見知さん、当ブログで実施した2016年青春アドベンチャー人気投票で1位を獲得した「逢沢りく」の演出家であり、先日まで放送していたTVドラマ「トクサツガガガ」(小芝風花さん主演)の演出家のおひとりでもあります。

柿澤勇人さん主演

また、本作品の主演は劇団四季出身の俳優・柿澤勇人さん。
そういえば柿澤さんは「今日は一日“ありがとうFM50”三昧~オーディオドラマ編」のメインゲストだった中川晃教さんとダブルキャストで、2020年1月にミュージカル「フランケンシュタイン」(ラジオドラマ版の主演は今井朋彦さんでした)を演じる予定です。
この「どこかで家族」の放送時間前に中川さんの出演時間が終わってしまい、中川さんによる柿澤さんのエピソードが聞けなかったのは残念でした。


(2021/11/23追記)
完璧にタイミングを計った再放送だったのですが、なんと本作品放送の1年後に新型コロナウィルス感染症の蔓延により東京五輪が1年延期されてしまい、本作品の「2020年夏に東京オリンピックが開催される」という設定自体が架空になってしまいました。
予想もつかないことが起きるものです…

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