ふたりの娘 作:新井まさみ(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : ふたりの娘
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : A
  • 分類 : 家族
  • 初出 : 2016年1月9日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 新井まさみ
  • 音楽 : 徳永洋明
  • 演出 : 木村明広
  • 主演 : 吉岡里帆

建付けの悪い扉を力いっぱいに開けたら、向こう側に1人の少女が立っていた。
わざわざ東京から京都まで訪ねて来たはずなのに、すぐに帰ろうとする少女の態度に不審を感じて問い詰めると、彼女は父の不倫相手の娘だった。
父が遺書にとんでもないことを書いていることが発覚して、今、両親は離婚寸前。
娘である私としても父に裏切られたという思いしかない。
寄りにもよってこんなタイミングでやってきたこの少女は、またとんでもないことを言い出した。
不倫相手の女が死んで、そちらも遺言を残したというのだ…



本作品「ふたりの娘」は第36回BKラジオドラマ脚本コンクールの最優秀賞を受賞した新井まさみさんの脚本をオーディオドラマ化したもので、NHK-FMのFMシアターで放送されました。

「エンディング・カット」の脚本家

新井まさみさんの作品がFMシアターで採用されたのは当然、本作品が初ですが、その後、複数の作品がFMシアターで放送されており、特に2019年に芦田愛菜さん主演で制作された「エンディング・カット」は文化庁芸術祭ラジオ部門大賞を受賞し、同じ芦田さん主演でテレビドラマ化もされました。
一方の青春アドベンチャーでは本作と同じ国広富之さんが出演した「あなたに似た自画像」の中の1編「いない、いない、ばあ」を担当されています。

ふたりのセリフ劇

さて、本作品は不倫をしている男女のそれぞれの娘(血のつながりはない)の会話を中心に進むセリフ劇です。
この「ふたりの娘」を演じるのは吉岡里帆さんと山田由梨さん。
吉岡里帆さんは学生演劇出身でグラビアアイドルの経験もある女優さんで、朝ドラ「あさが来た」出演で知名度を上げた方なのでご存知の方もいらっしゃると思います。
一方の山田由梨さんも小学生時代にミュージカル「レ・ミゼラブル」でリトル・コゼット役で出演経験のある元子役で、立教大学時代に劇団「贅沢貧乏」を旗揚げするなどなかなかの経歴をお持ちの方。

不倫カップルの娘たち

終盤、主人公・愛子の父親(つまり問題の男)役である国広富之さんが会話に加わるほか、3人のキャストが参加してはいますが、中盤までのほぼ全編のセリフが愛子を演じる吉岡里帆さんと、愛子の父の愛人の子である香澄を演じる山田由梨さんの2人のものです。
作品内容は冒頭の粗筋から想像されるとおりで、不倫の話を被害者?である娘たちが、不倫関係の肯定側・否定側に別れて話し合うという実にドロドロした話です。

印象は悪くない

ただ、2人の話がかみ合わない緊張感と、少女の気持ちの揺れを表現する2人の演技の巧みさ、あるいは京都を移動しながら話が進み場面展開がアクセントなることなどから、飽きずに聴くことができました。
正直、不倫をしていた父親の本当の心の内が今ひとつわからない(しょうもない人間であることは確かですが、そもそも恋愛中の心のうちなんて他人からは推しはかりようがないものなのかも知れません)など何となくすっきりしないところもあります。
また公式HPにおける「共に行動するうちに父親への葛藤、自身の恋愛観に変化が生じる…。」という表現はミスリードを誘っているというか、それが結末というのは若干違うような気もします。
ただ、愛子の強さ、成長は爽やかで、この手のテーマとしては印象がよい結末になっていると感じました。

ふたりの娘、とは

そうそうミスリードといえば、この作品タイトルもミスリードを狙っていますよね。
冒頭にも書きましたが、一読すると「ふたりの娘」は“Two daughters”あるいは“Two Girls”の意味にとれるのですが、そうではないことにリスナーは最後の最後に気が付く仕掛けになっています。
ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、この最後の締めは印象的でした。


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