あなたに似た自画像 作:新井まさみ他(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : あなたに似た自画像
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : 多ジャンル(競作)
  • 初出 : 2016年10年17日~10月28日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : (下表のとおり)
  • 演出 : 小見山佳典
  • 主演 : 国広富之ほか(下表のとおり)

少し前の青春アドベンチャーでは、「不思議屋シリーズ」(不思議屋百貨店不思議屋旅行代理店など)や「ライフシリーズ」(インテリア・ライフアクア・ライフなど)といった脚本競作によるオムニバス作品が頻繁に制作されていました。
2015年に「フラワー・ライフ」が制作されていますので、一応、ライフシリーズは継続しているようですが、昨今、タイトルの一部を共用するオムニバスシリーズはすっかり下火になっています。
そんな中で制作された、この「あなたに似た自画像」は2016年の新作で唯一のオリジナル脚本のオムニバス短篇ドラマ作品です。

新シリーズスタート?

この「あなたに似た自画像」というタイトルで思い出されるのは、2014年に同じ小見山佳典さんの演出で制作された「あなたがいる場所」。
「おっ、新しく『あなた』シリーズが始まったのか?」と思ったのですが、よく考えたら「あなたがいる場所」は、全話、沢木耕太郎さんの原作がある作品でした。
よって、この「あなたに似た自画像」と「あなたがいる場所」は似て非なる形態の作品ではあるのですが、オムニバス作品であることは共通しており、今後、「あなた」シリーズとして継続していく可能性はあると思います。
そういえば青春アドベンチャーとは縁の深い藤井青銅さんの小説に「あなたに似た街」というものがあります。
この作品もオムニバス作品のようですので、これを使えば簡単にシリーズっぽくなりますね。

多少ファンタジー要素あり

さて、本作品は毎回冒頭に「人生はコンフリクト。不合理で矛盾に満ちている。」との言葉から始まり、人生の一断面を切り取ったようなドラマが始まります。
なお、公式ホームページでは「現代の家族のありようを10人の脚本家が描く」と書いてありますが、「家族のありよう」とはあまり関係ない作品も含まれています。
また、「あなたがいる場所」との比較で言うと、「あなたがいる場所」が基本的に不思議な出来事は起こらない現実的なドラマであるのに対して、「あなたに似た自画像」には一定のファンタジー要素が織り込まれている作品が多いことが特徴です。

各回の概要

各回のタイトル、脚本家、タイトル、種別、粗筋、感想等は以下のとおりです。

◆第1話 「いない、いない、ばあ」

作  : 新井まさみ
主演 : 国広富之
分類 : 幻想(日本)
格付 : B
育児休暇を取ったが空回りばかりの男。そこに小学生の女の子が育児ボランティアにきたのだが。


これはズルイ。本当にベタベタの展開だがそれでもしんみりさせられてしまう。子を持つ親には反則ものの作品。

◆第2話 「ある日、ヤモリは縁側で」

作  : 山田文恵
主演 : 永宝千晶
分類 : 幻想(日本)
格付 : B-
男と別れた。しかし、彼と住むはずだった家にひとりで引っ越すとそこには男の声が。しゃべっているのは、ヤモリ?


子離れできない母親から、責任感を持たない男に乗り換えても、共依存からは脱せない。そもそも自立するなら空いている祖母の家ではなく、自力で部屋を借りるべき。

◆第3話 「あのひとのカナリア」

作  : 中澤香織
主演 : 手塚祐介
分類 : 少年
格付 : AA
渡り廊下で、見覚えない眼鏡の女子に急に手を引かれた。「全然変わっていないね。トモ君が私にしたこと、忘れてないから…」


小飯塚貴世江さんの演技が期待どおりの気持ち悪さで絶品。後味の悪さがとても気に入った作品(ん?、褒めていますよ!)

◆第4話 「欲望は転移する」

作  : 石原理恵子
主演 : 植田真介
分類 : 職業
格付 : B
人と関わるのは煩わしい。今日も森田さんにお昼の自由な時間を邪魔された。いい加減にして欲しい…


友達が少なくてもいい。人に頼ってもいい。どちらも正解。でも、一歩を踏み出す勇気は大切なもの。ありきたりな話だが、最後の植田さんの演技はちょっと好ましかった。

◆第5話 「息子までの飛距離」

作  : 時乃真帆
主演 : 浅野雅博
分類 : 日常
格付 : C
幼い息子との距離の取り方がわからない。これではまるで、あんなに嫌っていた父親と同じじゃないか。


ひねりのないお涙頂戴もの。自分の言動を親のせいにする主人公も、「器用じゃない」を言い訳にする親も好きになれない。浅野さんの演技はさすがだが。

◆第6話 「車の羽音」

作  : 中庭順子
主演 : 前東美菜子
分類 : 日常
格付 : B
育児と仕事の両立に悩んで母に相談したら、なぜか高齢の祖父に運転をやめるように説得に行けと言われた。


F1ドライバーのスターリング・モスは「男には下手だと認めたくないことが2つある。運転とセックスだ」といったらしい。

◆第7話 「誠実な浮気」

作  : 田中攝
主演 : 吉見一豊
分類 : 日常
格付 : C
育児ノイローゼ気味だった妻が最近、機嫌がいい。薄っすら化粧もしている。機嫌がいいのは良いが何だか気になる。


主婦の孤独(?)と工場の環境変化を関連付けられても、こじつけにしか聞えない。結末は諧謔的にしたのかもしれないが、単に後味が悪い。

◆第8話 「夜明け前の朝日」

作  : 湯川立子
主演 : 手塚祐介
分類 : 幻想(日本)
格付 : B-
青いビー玉みたいだけど、ぼくは生まれる前の魂。明日までにママを探さなければいけないんだ。


パパは探してくれないのか(涙)。それにしても、今時、不動産はノリで買わない方がいいと思います。

◆第9話 「愛の相対性理論」

作  : 中治人
主演 : 谷川清美
分類 : 恋愛
格付 : C+
「このままではあなた方の愛は破たんする」突然、話に割って入ってきた女。「しかし二人の愛は永遠に不滅なんです!」


相対性理論を社会心理学に絡める?浮気はどうなったの?何でみんなで歌うの?意外な展開は楽しめたが、ストーリーはさっぱりわからない。

◆第10話 「ひと部屋ホテル」

作  : 吉田海輝
主演 : 国広富之
分類 : 幻想(日本)
格付 : B-
離婚協議の心労で全く執筆が進まない作家がようやく見つけた場所は、地下に客室が一部屋だけのホテルだった。


第9話から一転、こちらはオチが読めすぎるなあ、なお、こちらの小飯塚さんはいたってまとも。ベテラン女優さんらしい演技。

主演は国広富之さん

国広富之さんと手塚祐介さんが2回ずつ主演を務められています。
手塚祐介さんは「雨にもまけず粗茶一服」に続き2作品連続の出演です。
そろそろ手塚さんを主役に据えた長編があっても良いように感じます。
また、国広富之さんは「あなたがいる場所」でも2回主役を務められていました。
本作品でも第1回と最終回で主演していることも併せると、やはりこの作品の看板は国広富之さんだと思います。

小飯塚貴世江さんが絶品

ただ、個人的に一番印象的だったのは第3回「あのひとのカナリア」に出演されている小飯塚貴世江さん。
双子島の秘密」に出演された時もとても気になっていたのですが、残念ながら「双子島の秘密」では終盤に存在感がなくなってしまう役でした。
「あのひとのカナリア」では、終始、ぐさっとくるセリフを独特の声と演技で連発しており、一種独特の迫力があります。
例えば、「遠くから見ると人の笑った顔ってバカに見えるね」、「謝れば許して貰える世界観か」、「罪悪感って人をコントロールできるね」、「あたし罪悪感についてはちょっと詳しいよ」などなど。素敵です。

脚本は中澤香織さん

この回のシナリオを書かれたのは中澤香織さんなのですが、今回の脚本家10人のなかでは田中攝さん(なくしたものたちの国いまはむかし~竹取異聞クラバート)と並んで、数少ない青春アドベンチャーで長編の脚色経験のある方(リテイク・シックスティーン)。
さすがに経験の違いを感じます。
それにしてもこのおふたりを始めとして、今回の脚本家陣に何と女性の多いことか。
この分野でも女性の活躍は著しいですね。


◆シリーズ以外の競作オムニバス作品の一覧
不思議屋シリーズライフシリーズ10人作家シリーズだけじゃない!
シリーズもの以外の単発で制作された脚本家競作のオムニバス作品の一覧はこちらです。




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