BANANA・FISH パート2 原作:吉田秋生(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : BANANA・FISH パート2
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : アクション(海外)
  • 初出 : 1995年6月12日~6月23日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 吉田秋生
  • 脚色 : じんのひろあき
  • 演出 : 川口泰典、芦田健
  • 主演 : 古澤徹

謎の言葉「バナナ・フィッシュ(BANANA FISH)」を追っていたストリートキッズのリーダー、アッシュ・リンクスは、その正体 - 1970年代に3人の学生が作り出した激烈な幻覚剤 - を知ることと引き換えに囚われの身になってしまう。
ようやくそこから逃げ出したアッシュだが、彼に安息のときは訪れず、バナナ・フィッシュをめぐる争いは激化していく。
コルシカ・マフィア、チャイニーズ・マフィア、ニューヨーク市警、謎の国家機関・国立精神衛生センター、そしてアッシュをも上回る最強の戦闘能力を持つ男…
バナナ・フィッシュをめぐる争いはいかなる結末を迎えるのか。
そしてアッシュと、彼が心を許す唯一の友人・英二の運命は。



NHK-FM青春アドベンチャーによる、吉田秋生(よしだ・あきみ)さんの代表作「BANANA FISH」を原作とするラジオドラマの第2弾がこの「BANANA・FISH パート2」です。

BANANA・FISH愛

第1弾の「BANANA・FISH」が放送された1994年5月は原作漫画が完結(「別冊少女コミック」1994年4月号)した直後でした。
NHK-FMのスタッフが目端が利くことがわかる、何とも素早い対応です。
そして、この続編が放送されたのはそのほぼ1年後。
しかも、この全10回の「パート2」が放送された翌週から、同様に全10回の「パート3」が放送され、原作では19巻もある大作を一気にラストまで描ききっています。
この作品をラジオドラマにする選択を誰がしたのが、演出の川口さんか芦田さんか、あるいは脚色のじんのさんかはわかりませんが、これはもう「目端が利く」というレベルではなく、作品愛まで感じられます。

アッシュの強さと弱さ

さて、本作品の最大の魅力として多くの人が指摘するのが、やはり主人公アッシュ・リンクスでしょう。

  • 札付きの不良で男娼あがり。
  • SWATクラスのシューティング技術とIQ180の頭脳。
  • 五十男の分別と知識を持った17歳。
  • チンピラではなく天才。
  • 外見はかわいい猫だが中身は獣。

以上のように、彼は作中でも様々な言葉で表現されているのですが、彼の魅力は、こういった言葉で表現されている美貌や戦闘能力だけではなく、その隠し持ったナイーヴさや、ショーターや英二に接したときに垣間見える弱さなのだと思います。
この弱さ、そしてアッシュと英二の精神的なつながりは、いわゆる「腐女子」の心をつかむに十分な要素。
英二がアッシュに向けて言う「君に僕の国を見せたい」なんて台詞、プロポーズで言われてもおかしくない言葉ですな。

井上和彦さんでもよかった?

前作の記事でも書いたのですが、そういった点で、アッシュを演じるのが古澤徹さんであるというのは、個人的には少し違和感のある配役でした。
どちらかといえば、本ラジオドラマでは英二を演じている井上和彦さんでよかったような…
もちろん「リプレイ」や「青の時間」、「星の感触」、ランドオーヴァーの34など多くの青春アドベンチャー作品に主演されている古澤さんの演技に不満があるのではないのですが、声質的にはむしろブランカが合いそう。
もちろんブランカを演じている古田新太さんもなかなか合っている配役なんですけどね。

ブランカの存在が効いている

ブランカといえばこのパート2、ブランカが登場する終盤、急にストーリーが締まってきたように感じました。
もちろんこのパート2でもアッシュはピンチに次ぐピンチ。
シシリアン・マフィアのボス・ゴルツィネから相変わらず執着されているにとどまらず、ニューヨーク市警から追われ、国立精神衛生センターのマッドサイエンティスト・マナーハイムに人体実験の対象にされそうになり、チャイニーズの不良少年の新ボスであるシン・スウ・リンからも付け狙われています。
しかし、どんなピンチでも万能すぎるアッシュの能力を見せられると、「まあどうにかなるのではないか」と、どこか緊張感が欠けてしまいそうになる中、ガツンと登場するのがブランカ。
もとKGBでアッシュをも圧倒する戦闘能力を持つブランカがアッシュの敵として登場することで一気に物語は加速しそう…なところで物語はパート3へと続いていきます。

悪役の配役の素晴らしさ

さて、改めて本作品のキャストを紹介しますと、主人公アッシュ・リンクスを演じたのが古澤徹さんで、その親友(?)である奥村英二を演じたのは井上和彦さん、そしてブランカを演じたのが古田新太さんであることは前記のとおり。
でも本作品の味のあるキャストはむしろ「悪役」側に多い。
まずはマフィアのボス、ディノ・ゴルチネを演じた川久保潔さん。
最初は老人声過ぎると思いましたが、慣れると、これはこれでなかなか。
また、チャイニーズ・マフィアを支配する家系の末弟であるユーシスを演じた舵一星さん(前作の大輝ゆうさんから交代)は元宝塚女優らしい中性的な演技で、いかにもユーシス。
また、「マッド」マナーハイムを演じた関根信昭さんは、川久保さんと同じ東京放送劇団の方で、FMアドベンチャー時代・アドベンチャーロード時代の数々の実直な役(「渇きの海」、「暗殺のソロ」など)のイメージが強いのですが、こういったマッドで、気持ち悪い役もさすがの安定感です。


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スピーディーな展開、的を絞った見せ場。
青春アドベンチャー初期の名脚色家・じんのひろあきさんの担当作品一覧はこちらです。


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