- 作品 : リプレイ
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AAA-
- 分類 : タイムトラベル
- 初出 : 1995年1月30日~2月10日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : ケン・グリムウッド
- 脚色 : 高橋いさを
- 演出 : 川口泰典、芦田健
- 演出 : 古澤徹
私の名前はジェフ・ウィンストン。ラジオ局のディレクターをしている。
1988年のある日、突然胸が痛くなり倒れた私は、気が付くと、1988年までの記憶を持ったまま、大学生であった1963年に戻っていた。
つまり、精神だけ年月を飛び越えて18歳の自分自身の体の中に住み込んだみたいになってしまったのだ。
戸惑う私だったが、元の時代に戻る方法も思いつかない。
何とかこの状況に適応するように行動を始めたのだが、これは私の何度も繰り返される人生の始まりに過ぎなかった。
ケン・グリムウッド原作の海外小説のラジオドラマ化作品です。
このブログでは、現在(2013年9月)に放送中の「リテイク・シックスティーン」に合わせて、この1か月ほど、タイムトラベルものを多く紹介しています。
その最初であった「タイムスリップ明治維新」の記事でも書きましたが、タイムトラベルものと言っても様々なタイプがあります。
本作品は、記憶だけ持って過去の自分の中に戻り人生をやり直すタイプ(いわゆる「タイムリープ」)で、リテイク・シックスティーンに近いものです。
ループものの元祖
このタイプの作品の元祖はゲーテのファウストなどといわれているようです。
このタイプの中でも、何度も何度も過去への移動を繰り返すタイプの作品を、特に「ループもの」などと呼んだりします。
「ループもの」は現代日本の漫画、アニメ、ライトノベル、ゲームなどのサブカルチャーシーンでは頻繁に目にするテーマです。
テレビアニメ「魔法少女まどかマギカ」やサウンドノベル「ひぐらしのなく頃に」などの傑作とされる作品もループものです。
そして、このジャンルがポピュラーになった切っ掛けともいえる古典的名作が、この「リプレイ」なのだそうです。
ここまで書いてしまうとちょっとネタバレっぽいですが、実は本作品は第1回の冒頭にナレーションで軽い粗筋紹介があるちょっと変わった作品。
そこにループのことが言及されているので、このくらいは良いかな?と思って書きました。
あわただしい展開
さて、本作品で人生をやり直すことになったジェフですが、最初は未来の出来事を知っていることを利用して、無我夢中で、金儲けや歴史改変(ケネディ暗殺阻止)に精を出します(ジェフは割とあっさりと状況に適応する)。
しかし、未来を知っていることを利用しても必ずしも幸せにはなれないこと、1988年の結末は変えられないこと、そして何よりリプレイが繰り返されること自体に次第に飽きてきます。
その頃、彼はその後のリプレイに大きな影響を与えるある人物に出会うことになるのですが…
これ以上はネタバレになるので止めておきます。
何回も繰り返される人生をわずか15分×10回で放送するので、かなり掛け足な感はありますが、リプレイごとにジェフがする選択の面白さや、人生が何度も繰り返されるテンポの良い構成、それにこれらを後押しする勢いのあるテーマ曲など、なかなか良くできた作品です。
結末に意外性はない
ただ、上記の2作品を含めて最近のループものは、日本アニメの初期の代表的なループものである「うる星やつらビューティフルドリーマー」以降、ループからの脱出手段に大きな趣向が凝らされることが特徴ですが、本作品の結末はあまり凝ったものではなく、それを期待すると少し拍子抜けするかも知れません。
最後の方のジェフの台詞「この時間を一瞬足りとは無駄には出来ない」にあらわされるとおり、リプレイによる積み重ねられる年月、そしてそれを脱したときの感慨等が作品のメインテーマになります。
そのため意外性のあるエンディングではないかも知れませんが、気持ちの良いエンディングです。
言い換え
ところで、この記事で書いたように、NHKでは特定の商品名などは伏せる傾向があるのですが、この作品では映画名(ダブルオーセブン、2001年宇宙の旅)、映画関係者の名前(ショーン・コネリー、スティーブン・スピルバーグ)、その他(ドジャース)などの固有名刺が、言い換えなしでバンバン出てきます。
以前、「死神の精度」で映画名を伏せている感じも受けたのですが、問題ないのでしょうかね。
まあ、本作品の場合、映画名を出さないと全然ストーリーが説明できないのですが。
宝塚出身の女優陣が熱演
出演者は、主役のジェフ役が、本作品が放送された時期の青春アドベンチャーの常連出演者(こちらの記事参照)だった古澤徹さんです。
「青の時間」や「カルパチア綺想曲」など川口泰典さん演出作品に多数ご出演されていました。
その他、ジェフと様々な関係を持つ女性達の役に、この時期の青春アドベンチャーに多かった宝塚出身の女優さん達が多数出演されています。
ジェフの“1周目”の妻のリンダは大輝ゆうさん。
“2周目”(=リプレイ1回目)の妻のダイアンと、謎の女性にして真のヒロインであるパメラ・フィリップスは前田悠衣さん。
大学時代のガールフレンドで“3周目”の妻のジュディは紘美雪(ひろ・みゆき)さん。
何度かのリプレイで愛人となるシャーラ・ベイカ-は“あづみれいか”さん。
この宝塚女優さんの多用も、川口さん演出作品の特徴であり、多重人格者を宝塚出身の女優さん5人で演じた「五番目のサリー」に優るとも劣らない華麗な配役です。
「五番目のサリー」と同様に本作品も前田悠衣さんの熱演が印象的です。
男性陣も橋本潤さん、橋本さとしさんなど、なかなかラジオドラマに手慣れた陣容で、聴いていて安心感があります。
川口作品の代表作のひとつ
スタッフは、脚色が高橋いさをさんで、演出が川口泰典さんです。
高橋さんは本作品のほか、本作品と同じように海外小説を原作とする「盗まれた街」、「ブラジルから来た少年」で川口さんとコンビを組んでいます。
いずれもなかなかの良作です。
一方、川口さんは「北壁の死闘」を始めとして多くの傑作を手がけられた方で、川口さんの担当作品は外れが少ないのが特徴です。
本作品の出来がよいのも納得できるスタッフです。
【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。
【近代から現代にかけてのアメリカ合衆国を舞台にした作品】
第1次世界大戦後に完全にイギリスから覇権国家の座を奪い取ったアメリカ合衆国。
その発展期から現代までを舞台にした作品の一覧はこちらです。
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