1999年から2007年に掛けて全8作品が制作された「不思議屋シリーズ」。
いずれの作品も、各作品ごとに、ある種類のお店又は業種を共通テーマとした、1回15分完結のオリジナル脚本ラジオドラマ10本を束ねた(「不思議屋博物館」のみ全15回)オムニバス作品でした。
今回紹介する「不思議屋不動産」はその第5弾として2003年に放送された作品ですが、このブログで紹介する順番では8番目。
すなわち、これで全8作品の紹介が終わったことになります。
さて、この「不思議屋不動産」の共通テーマとなっている業種はずばり「不動産屋」。
ただし、「不動産屋に紹介された」と言いさえすれば、どんな場所でも舞台になってしまうので、統一感を出すにはあまり効果的なテーマではなかったようにも感じます。
個人的には不動産業ならではの面白さが表現できている作品がひとつもなかったのが残念。
そもそも「不動産屋」というテーマを与えられて「仲介」しか思いつかないのは少し発想が貧困だと思います。
デベロッパーやハウスメーカー、不動産投資業者、リフォーム業者なんかでも面白い作品は十分につくれると思うのですが。
結果として、良くいえばバラエティーに富んだ、悪く言えばまとまりのない作品群になっています。
各回のタイトル、脚本家、ジャンル、格付け、粗筋、一言は以下のとおりです。
◆第1話 「トイレの神様」 (山本むつみ)
「紫姑神」(しこしん)とか「何媚」(かび)とかは実際にある伝承らしい。
◆第2話 「ホテル・カルフォルニア」 (勝栄)
不動産屋がホテルを紹介する、というには如何にも苦しい。
◆第3話 「よもつひらさか」 (渥美珠巳)
確かに「上る」という表現でアレっと思った。ただオチが見えていてもそれなりの出来。
◆第4話 「ウェディングベルは南の島で」 (黒沼美佳子)
脈絡のない展開だし、子供を出すのもあざとい。3回目は帰ってこられないのでは?
◆第5話 「静かな部屋」 (前原一磨)
身勝手な主人公の言動が不快。展開も予想通り。
◆第6話 「心を見る部屋」 (さわだみきお)
一応コメディなのだろうが、「ふーん」という感じで、さして笑えない。
◆第7話 「また会う日まで、会える時まで」 (橋本信之)
幽霊との同居は創作ではよくある。一応、あの曲に結びつけているが、これも苦しい。
◆第8話 「エンドロールには早すぎる」 (塩塚夢)
何とも陳腐な話。どうやって戻ったのか一切描かずいきなり3カ月後?
◆第9話 「壁の中」 (中江有里)
「寂しさを肥料にした」というフレーズは印象的だが。古い家が語りかけるのは陳腐。
◆第10話 「素敵なアジト」 (安形眞司)
唐突に悪魔と言われても… 「正義の名の下に殺戮」という言葉だけは深いが。
出演者は大鶴義丹(おおつる・ぎたん)さん、馬渕英里何(まぶち・えりか)さんと永井一郎さんの3人。
他の「不思議屋シリーズ」と同様に、大鶴さんが男性の出演者を、馬渕さんが女性の出演者を演じ、永井さんが「不思議屋」の店主を務めるのが典型的なパターンです。
馬渕さんは他の青春アドベンチャー作品では「あでやかな落日」や「ヤッサン」に出演されていますが、大鶴さんは本作品が青春アドベンチャーで唯一の出演作品なのではないかと思います。
ちなみに大鶴さんに限らず、一度不思議屋シリーズに出演された方は、同シリーズの他の作品には出演されていません。
唯一の例外は「不思議屋博物館」と「不思議屋貿易商」の2作品に出演された尾美としのりさんです。
そして、大鶴さん、馬渕さん以上に印象的なのは、不思議屋シリーズ全体を象徴するといって良い永井一郎さんの演技。
本作品を聴いていると、先年他界された永井一郎さんの名調子がもう聞けないなんてとても信じられません…
さて、本作品、「不思議屋」の名のとおり、基本的にはどの回もファンタジー要素が強い作品です。
…といえば聞こえは良いのですが、ご都合主義で荒唐無稽と感じられることが多いのも事実。
実は本作品を演出された小林武さんは、本作品以外で、
と、通常の青春アドベンチャーより高い年齢層を対象とした作品を制作されている方。
不思議屋シリーズは若干、小林さんの志向とは異なった作品だったかも知れません。
【不思議屋シリーズ作品一覧】
全部で8作品制作された不思議屋シリーズの作品一覧はこちらです。
是非、他の作品の記事もご覧ください。