伸坊の哲学的 原作:南伸坊(カフェテラスのふたり)

格付:C
  • 作品 : 伸坊の哲学的
  • 番組 : カフェテラスのふたり
  • 格付 : C+
  • 分類 : エッセイ
  • 初出 : 1985年4月15日~4月26日
  • 回数 : 全10回(各回10分)
  • 原作 : 南伸坊
  • 脚色 : 津川泉
  • 演出 : (不明)
  • 主演 : 伊武雅刀

本作品「伸坊の哲学的」は南伸坊さんのエッセイ「哲学的」をもとに、少しだけドラマ風に味付けした番組です。
放送された「カフェテラスのふたり」という番組は、1985年4月に前身番組の「ふたりの部屋」から模様替えされた番組であり、本作品はその2作品目にあたります。


「カフェテラスのふたり」は、全般的に女性や若者を意識した現代的な題材を採用することが多く、また、ラジオドラマ(例:星へ行く船)だけではなく本作品のようなエッセイ風の作品(例:ザ・素ちゃんズ・ワールド-”ひでおと素子の愛の交換日記”から)を多く放送したことも併せて、「ふたりの部屋」と似た傾向の番組でした。

「ふたりの部屋」以上にライト

では違いは何かというと、「ふたりの部屋」が15分番組(番組開始当初は10分番組)であったのに対して「カフェテラスのふたり」が10分番組になったこと、また、「カフェテラスのふたり」はラジオドラマであっても出演者が基本的に2人に限られていたことが挙げられます。
総じていうと、基本的にライト側に振られた番組であったと思います。

エッセイの朗読に近い

本作品もその流れに乗っており、出演者は伊武雅刀さんと島津冴子さんの2人だけ。
またエッセイの一部をおふたりがドラマ風に演じるだけで、基本的にはエッセイにBGMと効果音を付けて伊武さんが朗読したような作品です。
エッセイの内容自体も、何せ南伸坊さんのものですので、良くも悪くも軽やか(あるいは軽薄な?)ものです。

南伸坊さんを知っていますか

ところでみなさん、南伸坊さんってご存知ですかね?
一時期は文化人的な扱いでかなりTVにもでていたので、一定以上の年齢の方はよくご存知かと思いますが、ここ10年くらいはあまり活動していないので若い方はご存じないかも知れません。
出版社青林堂ではかの「ガロ」の編集長などもしていた南伸坊さんですが、フリーランスになったのが1979年。
1980年代から1990年代にかけては、イラストレーター、エッセイスト、漫画家として、あの特徴的な三角形(?)のお顔もあり(画像検索してみてください)かなり有名でした。

着眼点は面白い

確かに軽薄と言ってしまえばそれまでの内容なのですが、さすが有名エッセイスト。
着眼点はなかなかに面白く、気軽に聞く分にはなかなか楽しい作品です。
良く聴いてみると、賛成しかねる内容も多いのですが。

各回の概要

各回のタイトル及び簡単な内容は以下のとおりです。
毎回冒頭に「使用上の注意」というテーマ紹介の時間があります。

回数 タイトル 内容
1 伸坊の哲学的恋愛論 伸坊さんの初めてのナンパの話。確かにすごい美人って無意識のうちに目で追っちゃいますよね。
2 伸坊の哲学的変態論 どんなエロ話かと思ったらおしっこネタだった。おしっこの我慢は美徳、根性、意地といったある種のヒロイズムにつながるらしい。
3 伸坊の哲学的差別論 伸坊さんは差別より正義の方が気に入らないようだが、差別と正義は容易く結びつきうるから問題なのではないか。
4 伸坊の哲学的女性論 伸坊さんの小学校5年生時代の栄光の記憶と、そのしょーもない終わりについて。
5 伸坊の哲学的男性論 「女性論」と対になる回…かと思ったら「男性論」の男性とは、つまりはアレのことだった。
6 伸坊の哲学的変装論 今でいうところの「コスプレ」。コスプレすると世の仕組みがほの見えたりするらしい。子どもが何か大変なことを発見したと思い込んでいるのと同じにしか見えないが。
7 伸坊の哲学的分類論 スペースが一番高くつく、というのは全く賛成だが、背表紙で本を分類するやり方は全く理解できない。
8 伸坊の哲学的感情論 TVドラマから受ける感動は自分の暖かさに感動しているだけ、とのこと。概ね同意だが、だからといって感動できないエッセーが偉いわけでもなかろう。
9 伸坊の哲学的風呂論 「外から風呂におしっこするのは駄目だが、風呂の中でするのは大丈夫」って理解できないし、西洋の風呂が合理的というのも疑問に思う。
10 伸坊の哲学的群衆論・大衆論 正義とか生命の尊厳とかで手っ取り早く片付けるのは良くないとは思うが、建前が本音の堕落を防ぐという面もあるのでは?

基本的にどうでいい話が多いのですが、特に第5回や第9回ははひどいです(笑)。

出演者の紹介

さて出演者は、伊武雅刀さんと島津冴子さんのお二人。
伊武雅刀さんは「ふたりの部屋」時代に「さらば国分寺書店のオババ、かつをぶしの時代なのだ」などで怪演されていますし、島津さんも「絶句」などに出演されています。
「カフェテラスのふたり」の2作品目ということもあり、まだ「ふたりの部屋」の色を強く感じる作品です。
それにしてもお二人が色々な声を出されることに感心しました。
特に伊武さんはいつもの派手でオーバーな演技ばかりではなく、地味で普通な会話調の演技も自然なのが印象的です。

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