- 作品 : フルネルソン
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : C+
- 分類 : 少年(中高)
- 初出 : 1997年10月20日~10月31日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 永倉万治
- 脚色 : 高谷信之
- 演出 : 平位敦
- 主演 : 川名浩介
東京オリンピックの開催された1964年。
清島浩二は青春まっただ中の高校2年生だった。
部活でレスリングに打ち込んでいるが、レスリングに青春を捧げている、というほどではない普通の高校生。
電車で見かけた女生徒との恋、音楽と映画、父親の病気、喧嘩、猥談。
普通の高校生の日常を通して描かれる、高度成長期の青春グラフティ。
永倉万治さん原作の小説を原作とするラジオドラマです。
「フルネルソン」(双羽固め=レスリングの技)という題名のとおり、アマチュアレスリングが描かれる作品ですが、スポーツがメインテーマの作品ではなく、あくまで青春劇を描くための一つの要素としてアマレスが使われています。
スポーツものではない
この点で、同じ青春ものでも、「DIVE!!」、「バッテリー」、「一瞬の風になれ」など、スポーツのドラマ性が作品の主な魅力になっている作品群とは性格が明らかに異なる作品です。
恋愛ものでもない
また、本作品では、恋愛も構成要素の一部ですが、「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズのように恋愛それ自体がテーマという訳でもありません。
どちらかというと「ぼくは勉強ができない」や「翼はいつまでも」や「レヴォリューションNo.3」にように青少年の生活全般を描いた作品です。
そういう意味では、番組名である「青春アドベンチャー」のうち、「青春」自体がテーマの作品ではあるものの、「アドベンチャー」要素は極めて少ない作品です。
まあ、たまにはそういう作品もあっても良いとは思います。
高校生男子の日常
全体の構成は、父親になった主人公の清島浩二が、高校生の自分の息子を捉まえて、自分の青春時代を語っていく形になっています。
浩二の一人称のモノローグをベースにドラマは進んでいきますが、時々、数十年後の親子の会話(主として息子である実が茶々を入れる)が挟まります。
作中で起こる出来事は、当事者である浩二にとってはドキドキする大事件であるものの、客観的にはごく普通の高校生の日常生活です。
高校生のやることなんて、大人から見たらイタイことばかりなのですが、この作品では頭を抱えてしまうほど極端にイタイ行動に走るわけでもなく、本当に日常的な内容です。
有名な「三丁目の夕日」で描かれている時代よりは、かなり現代に近い時代ですが、同じように少しノスタルジックな雰囲気を楽しむ作品だと思います。
どう考えても立教大学
なお、作中で浩二が通っている高校は「りっけい」大学の附属高校とされています。
原作ではR大学と表記されているのですが、音だけのラジオドラマでR大学だと違和感があるからこのようにされているのだと思います。
原作者の永倉さんご自身が立教高校・立教大学のご出身(中退)であることを考えると、モデルが立教大学であることはあきらかですが、NHKでよくあるように、あえて架空の「りっけい」にされているようです。
映画の固有名詞などは普通に出てくるのですけどね。
出演者紹介
出演は主役の浩二役を俳優の川名浩介さんとベテラン俳優の小倉一郎さんのお二人が演じています。
高校生の浩二と、父親になってからの浩二をお二人で演じている形です。
浩二のあこがれの女性である高橋優子役は主として声優として活動されている飯塚雅弓さんが演じています。
川名さんと飯塚さんのふたりはともに劇団若草のメンバーです。
その他、木下浩之さん、加賀谷純一さん、立川三貴さんなどの渋い面々。
「西風の戦記」でアポロニアを演じていた松本留美さんが、ちょっとだけ出演されていたりもします。
スタッフ紹介
脚本の高谷信之さんはアドベンチャーロード時代に「摩天楼の身代金」や「長く孤独な狙撃」、「アルバイト探偵」シリーズなど、割とハードな作品を多く担当されていました。
番組が青春アドベンチャーになってからはあまり多くの作品は担当されておらず、本作品の他には「モンテ・クリスト伯」と「P」を脚色されているだけです。
一方、演出の平位敦さんも、評価の高い「海賊モア船長の遍歴」や「分身」など全部で5作品程度しか担当していない、青春アドベンチャーでは寡作な方です。
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