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AI(アイ)は故障中 作:桑原亮子(FMシアター)

  • 作品 : AI(アイ)は故障中
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : A-
  • 分類 : SF(その他)
  • 初出 : 2018年6月23日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 桑原亮子
  • 音楽 : 空間現代
  • 演出 : 新田真三
  • 主演 : 高城れに

廃墟になったかつての劇場で、老人はひとりのAIアンドロイドと出会う。
「40年型AI」、アイドル型AIの傑作と言われたそれは、しかし今は動かない。
彼女は死んでいるのか、生きているのか。
それは「生きている」の定義による、「死んでいる」の定義による。
彼女と老人と、そして若き日の老人。
過去と現在を行き来する3人の対話が始まる。



本作品「AI(アイ)は故障中」はNHK-FMのラジオドラマ番組「FMシアター」で放送されたラジオドラマで、「ももいろクローバーZ」の高城れにさんが主演されました。

ポップな作品?

現役のアイドルが主演で、しかも「AI(アイ)は故障中♡」(←♡はないけど)という能天気なタイトル。
脚本の桑原亮子さんの今まで紹介した作品(沈黙とオルゴール、冬の曳航、声命線)が割とわかりやすい作品であったこともあり、これは気軽に聞けるポップで楽しい作品なのではないか、と思ったのですが…全くそんな作品ではありませんでした。

抽象的な内容、難解なセリフ

演出の新田真三さん(主に連続テレビ小説やドラマ10などのTVドラマの演出家)のTwitterのプロフィールに「音像劇」と書いてあるとおり、情景描写は曖昧で、舞台設定もはっきりしません。
昔の場面における「彼女」がAIと別人だったなんて、キャスト紹介まで気が付きませんでした(←私が鈍すぎ?)
また、出演者は3人だけで、その3人のセリフがBGMを背景に絡まりながら進んでいくストーリー展開も抽象度が高い。
「生命は物質的な性質に抵抗する静的な性質の和、あるいは死に抵抗する機能の集合体」といったレベルのわかりづらいセリフが延々と続き、しかも分かりやすいセリフも「あなたは花さえ見れば何でも薔薇だと思う人。十分な証拠もないのに断定するのは人間の悪い癖」などと結構辛辣。

難易度の高い作品

公式HPによれば「『壊れた者』と『閉ざした者』との出会いによる、『心の再生』をテーマに、『愛の言葉』を紡ぎ出すまでを描く物語」らしいのですが、生死や愛を抽象的に描いているので難易度は高くならざるを得ない。
ただ、飽きずに聞くことができたのは自分でも意外で、聴いていて拒否反応が出るようなわかりづらさとは少し違う作品だったと思います。それが何かは上手く表現できないのですが。
とはいえ、正直私にはさっぱりわかりませんでしたよ。
「わからないのは受け止める器が小さいせいなのでしょう」

ラジオドラマもAI流行り

それにしてもAIと書いて「アイ=愛」と読ませ、人工知能に愛を絡めて語るのは最近の流行りなのでしょうかね?
漫画「AIの遺電子」なんかがそうですし、青春アドベンチャーでは「機械仕掛けの愛」などもそういう趣向のタイトルだったのだと思います。
と、ここで思い出したのが「わたしは真悟」(原作漫画は1982年~1986年連載、ラジオドラマは1991年放送)。
あの作品も最後には「アイ」だけが残りましたね。
昔からの黄金パターンなのかもしれません。

ももクロ・高城れにさん主演

さて、本作の出演者といえばまずは「ももいろクローバーZ」の高城れに(たかぎ・れに)さん。
「女」と「彼女」の二役でした(気が付かなかった…)
歌のシーンがあるのはアイドルさんならではですが、通常の芝居のシーンも予想以上に上手い。
ももクロの皆さんは芸達者ですよね。
また、助演は「過去の男」が柄本佑さんで、「男」が北見敏之さん。
柄本佑さんは青春アドベンチャーでは「七帝柔道記」(2017年)、「北海タイムス物語」(2019年)に主演されています。



Hirokazu

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