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嘘じゃないんだ 原作:ドナルド・E・ウェストレイク(青春アドベンチャー)

  • 作品 : 嘘じゃないんだ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : C
  • 分類 : 推理
  • 初出 : 1996年10月7日~10月18日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : ドナルド・E・ウェストレイク
  • 脚色 : 香取真理
  • 演出 : 松浦禎久
  • 主演 : 千紘あい

サラ・ジョスリンはゴシップ新聞「ウィークリーギャラクシー」の新米記者。
7月15日土曜日、初出勤の朝にハイウェイで車を走らせていると道路わきに停車している車の中で死体を見つけてしまった。
普通だと驚き動転するシチュエーションだがサラは違う。
出勤初日に幸先よく記事のネタを掴んだと前向きに捉え、一旦出社後、早速、この事件の取材を始めるが、なぜかこの事件を警察に伝えるように頼んでいた駐車場の警備員は姿を消し、この事故自体はないものとされていた。



本作品「嘘じゃないんだ」は1996年に青春アドベンチャーで放送されたラジオドラマで、米国の推理作家・ドナルド・エドウィン・ウェストレイクの小説を原作とした作品です。
いうまでもなく、この記事をアップした時点で放送中の「嘘か真か」に掛けた作品チョイスなのですが、両作品にはタイトル以外、何の関係もありません。あしからず。

ドタバタものの王道

さて、ドナルド・E・ウェストレイクは主にニューヨークを舞台にした犯罪小説を書かれた多作の作家で、その作品は巧妙なプロットとウィットに富んだセリフが特徴です。
青春アドベンチャーでは1995年から1996年にかけて「踊る黄金像」、「二役は大変!」、「嘘じゃないんだ」の3作品がラジオドラマ化されました。
この3作品の特徴といえば、場面や登場人物の立ち位置がくるくると変わること。
また、登場人物が基本的にポジティブでアクティブなため、全般としてとてもスピーディーな展開が続きます。
続くのですが…

カタカナ、カタカナ

なんでしょう、この空回り感。
展開が速すぎるからなのでしょうか、どうにもストーリーが頭に入ってこないように感じるのです。
そもそも、外国人の名前がするっと頭に入ってこないのは私だけ?
本作品、第9回と第10回のキャスト紹介ででてくる主要キャストを並べただけでも、
サラ・ジョスリン、ジャック・インガーソル、アイダ・ギャビン、ニコラス・ハンナハン、ルイス・アービトン、デイビッド・レビン、メリー・ケイト、フィリス・パーキンスン、ヴィンクス・ラドウェル…
だめだー、もう訳が分からない。

道路わきに死体って…

そして米国人の常識と日本人の常識の差ってあるじゃないですか。
まず気候、風俗が違う。
欧米のアニメ好きが日本に来て初めて、日本のアニメの背景に流れていた音がセミの声だと気が付いた(ミンミンゼミは北東アジアにしかいない)みたいに、思っている以上にバックグラウンドの差ってあると思うんですよね。
カラッとしたフロリダの風景に没入させてもらえていないと、ハイウエイ沿いに死体放置ってもうそれだけでスプラッター感がでてしまいますよね、

アメリカンジョークって面白いか?

そして、それ以上に気になるのが、宗教的なものや社会的なものを含め会話の底にある共通の話題、会話のテンポ、そしてジョークの傾向。
いくらゴシップ誌とは言え「有名人の棺桶の中の死体写真」が定番の人気企画というのはやはり理解できない。
特に本作品のようにあまりに「翻訳調」で語られてしまうとどうにも作品に没入できず、脳が理解を拒否してしまうというか。
少なくともこの翻訳はあまりラジオドラマ向きではなかったと思います。
ラジオドラマだと、小説であればできる「戻っての内容確認」が困難ですので…
もっと頭のまわりの速い方なら楽しめたのかもしれません。
私の評価(格付け)はその辺を含んでみていただければ幸いです。

出演者と制作陣

さて、本作品の主役は「カムイ外伝」、ランドオーヴァーシリーズ、「ウェディング・ウィーズ」など数多くの川口泰典さん演出作品に出演された元宝塚女優の千紘あいさん。
恐らく青春アドベンチャーでは本作品が唯一の主演作品だと思います。
その他、準主役ともいえるサラの上司のジャック役の古澤徹さんを始め、舵一星さん、海津義孝さん、松本保典さん、佐戸井健太さん、そして高橋克実さんなど、川口組の出演者さんがずらり。
そういえば演出の松浦禎久も川口さんと組むことの多い方でした。
松浦さんが青春アドベンチャーで主に活躍された時期も、川口さんと同様1990年代で、長い間2000年5月に放送された、青春アドベンチャーでは数少ない本格ミステリー「二の悲劇」が最後だったのですが、実は本記事をアップする少し前の2021年3月におよそ21年ぶりに「当面の間、変身します」を演出されています。


【近代から現代にかけてのアメリカ合衆国を舞台にした作品】
第1次世界大戦後に完全にイギリスから覇権国家の座を奪い取ったアメリカ合衆国。
その発展期から現代までを舞台にした作品の一覧はこちらです。


Hirokazu

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