柳生非情剣 原作:隆慶一郎(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 柳生非情剣
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2022年1月10日~1月14日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 隆慶一郎
  • 脚色 : 池谷雅夫
  • 音楽 : 川崎良介
  • 演出 : 吉田浩樹
  • 主演 : 津田寛治

織豊政権下で没落し領主としての地位を失った柳生一族。
剣に没頭し兵法家として狭い世界での名声に甘んじる父・石舟斎の態度が、宗矩には我慢できない。
失った領土を取り戻してこその剣ではないのか。
敢えて柳生庄を離れ、広い世界で剣の腕を磨きながらついに得た立身出世のチャンス。
2代将軍・徳川秀忠の兵法(剣術)指南役。
その実態は政権を守るための裏の仕事をこなす汚れ役。
しかし宗矩はこの機会を逃さない。
必ずや江戸に柳生新陰流ありと、その名を全国に轟かせてみせる。
そして領地を取り戻し最後には大名の座に上り詰めるのだ。



新年早々なんかすごいものを聴いちゃったな…
それがこの青春アドベンチャー「柳生非情剣」を聴いた最初の感想です。

コテコテの時代劇

原作は隆慶一郎さんの唯一の短編小説集。
隆慶一郎さんは池田一朗の名前で映画・テレビドラマの脚本家として大活躍された方で、晩年の5年間だけ、隆慶一郎の名義で小説家として活動。
急逝されたすぐあとに始まった原哲夫さん作画による漫画「花の慶次-雲のかなたに-」の原作者としても有名です。
ドラマの脚本家出身というその性格上、小説もサービス精神旺盛で娯楽作品として秀逸なのが特徴。
特に男の生きざまをコテコテに描くのが定番で本作品の原作も、柳生一族という、これまたコテコテのテーマを列伝的に外連味たっぷりに描いた作品です。

コテコテの剣劇アクション

そしてそのラジオドラマ化作品である本作品ですが、これがまた微妙に違う方向にコテコテ。
柳生一族が持つ陰惨なイメージは抑え気味に、むしろ「これはコメディなのか?」と思えるほどの過剰な演技を演者の皆さまが照れることなく(プロだから当たり前か)やり切っている作品です。
具体的には、原作は剣劇部分の描写はかなり抑え気味であるのに対して、本ラジオドラマは音響効果とセリフでそこをクローズアップしています。
とくに剣士たちの「きえぇー」的な奇声は小説にはない世界。
いやもう何かすごいです。

時系列順に再構成

そしてストーリーも大胆に再構成。
原作小説は以下の6章からなりたっているのですが、このうち「跛行の剣」と「逆風の太刀」をカットし、それ以外の4編を時系列的に並べなおしています。
そして、ただ並べなおしただけではなく、ややこしい事情は省略して、柳生一族の苦闘と謀略を描くライトな剣劇アクションに換骨奪胎しており、上記の演出や演技もあり、雰囲気はほぼ別物レベルといってもよいです。

  • 慶安御前試合(柳生連也斎)
  • 柳枝の剣(柳生友矩)
  • ぼうふらの剣(柳生宗冬)
  • 柳生の鬼(柳生十兵衛)
  • 跛行の剣(柳生新次郎)
  • 逆風の太刀(柳生五郎右衛門)

簡略化しすぎて宗矩が宗冬をなぜ謀殺しないといけなかったかなど、わかりづらい部分もありますが、まあ全5回で気持ちの良い作品を作ろうと思ったらこれはこれでありです。
まあラストが爽やかすぎるのはちょっと柳生的ではありませんが。

各回のタイトル

さて、ラジオドラマとしての各回のタイトルは以下のとおり。

  1. 江戸柳生誕生
  2. 柳生の鬼
  3. 剣の舞
  4. 柳枝の剣
  5. 江戸尾張最終決戦

各話ごとに主人公となる柳生一族の男が変わっていく構成で、最終話は第1話の脇役だった柳生平助と第3話で主役だった柳生宗冬が主役格ですが、エンディングでのキャストは柳生宗矩役の津田寛治さんが最初に並びます…ってすでに混乱しています?

柳生一族の系図

そうです。
この作品、柳生だらけなのです。
全5話で展開が速いため、誰が誰かわからなくなるかもしれません。
そのためまずは小説版含む主役たちの系図を載せます。
時代劇の常ではあるのですが諱と通称がごちゃごちゃに使われているのでなるべく併記しました。

柳生3

柳生の男たち

また、時代劇を全く見ない方に(私も詳しくないですが)各回の主役の事績及び時代劇における典型イメージを簡単に紹介しつつ、出演者の紹介も併せてしたいと思います。

柳生宗矩(1話主役、演:津田寛治)

剣豪にして柳生新陰流の創始者である柳生石舟斎の息子だが、時代劇ではどちらかというと政治家、謀略家として描かれることが多い。
実際、一剣術指南役でありながら総目付という大名の監視役になり1万石の大名になるのはただ事ではない。
本作ではすべての回に登場する唯一の柳生の男。
演じる津田寛治さんは「北海タイムス物語」での好演が印象的だが本作も、ある意味やりきった感じの演技。
なお、父・石舟斎を演じる朝倉伸二さんとは「うつ病九段」でも共演している。

柳生十兵衛(2話主役、演:小手伸也)

いわずとしれた時代劇のスーパースター。
隻眼ながら、柳生一族でも有数の剣士として描かれることが多く、父親・宗矩と仲が悪く諸国を遍歴していたり、逆に裏柳生(笑)の一員として幕府を守るために戦ったり。
妖術を使う天草四郎と戦ったりする映画もありましたね。
本作品では第1回以外すべての回に登場。

柳生宗冬(3・5話主役、演:加藤諒)

十兵衛亡きあとの柳生家を引継ぎ第4代家綱時代に柳生家をもとの大名に復帰させた傑物。
本作中では乱暴者の十兵衛、イケメンの友矩の両兄のもと、不細工で地味な存在とされていたが一念発起し、柳生一族の意地を見せる。
本作では第3回~第5回に登場。
この役に実写版「パタリロ」で主人公パタリロ・ド・マリネール8世を演じて絶賛された加藤諒さんをもってくるあたりスタッフも狙っている。

柳生友矩(4話主役、演:古河耕史)

3代将軍家光の寵愛厚かったが早逝したため歴史上の記録が少ない人物。
その行間を埋めるようにフィクション作品では美男とされ、家光と衆道に関係にあると設定されることも多く、本作品もその一例。
つまり本作第4回は青春アドベンチャーでかつないほどBL的な内容の回になった。
かつて「カーミラ」が女性どうしのかなり怪しい表現がされた作品だったが、ある意味、その対になるのでは。
本作では第4回・第5回に登場。

柳生兵助(5話主役?、演:堀井新太)

始祖・石舟斎の後継者である天才・兵庫助の息子。
どちらかというと柳生連也斎(連也)の名が有名で、柳生最強剣士の一人として描かれることもある。
本作では第1回に登場してからしばらく出番がなく、第5回に再登場。
実は原作ではかなり陰惨な運命が待ち構えているが、本作では爽やかなラストに大いに貢献している。

その他の柳生

この他、朝倉伸二さんが柳生石舟斎を、政岡泰志さんが柳生(列堂)義仙を演じており、日本史上の重要人物であり作中でも重要な役割がある徳川家光を演じた渡部豪太さん以外は、男性で子役以外のすべてのキャストに柳生の男が割り振られていたことになります。

コメント

  1. 広島主婦52ちゃい より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    風呂場で聴いたり台所で聴いたり、今回はなかなか飲み込めずに何度も何度も聞きましたが、
    聴き応えあり!
    何度も聴いた甲斐がありました。
    雑記帳の中に『イケメンの宗冬』とありましたが、『イケメンの友矩』では?と一人ツッコミしてました。
    いかがでしょうか?
    ナレーターの銀河さんもノリノリで
    ホントに何度聴いても毎回楽しかったです。私の飲み込みが遅いのはおいておいても楽しめました(笑)

  2. Hirokazu より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    広島主婦52ちゃいさま

    コメントありがとうございます。
    ストーリーは単純なのですが、演者の皆さんが熱演なのと展開が速いのとで情報量が多くて、付いていくのが大変ですよね。
    何だか勢いに飲まれているうちに終わってしまった感もありますがこれはこれでいいものです。

    あと誤字のご指摘ありがとうございました。
    本文は修正しておきます。

  3. 広島主婦52ちゃい より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    わ!
    自分の文が載っていてびっくり!
    本文直されてました????恐縮????

    コロナ禍、ラジオはマジ友です。
    色んな世界に連れて行ってくれて
    感謝感謝です。
    スタッフの皆様も気を付けながら
    それぞれの世界で
    お互いがんばりましょー!

  4. Hirokazu より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    広島主婦52ちゃいさま

    非公開希望でしたら削除しますのでお申し付けください。
    私、誤字脱字、勘違い多いのでご指摘は感謝です。
    コロナ禍、鬱々とすることも多いですが何とかやっていきましょう。
    コメントありがとうございました。

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