うつ病九段 原作:仙崎学(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : うつ病九段
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : 職業
  • 分類 : A
  • 初出 : 2019年7月13日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 原作 : 先崎学
  • 脚色 : 小松與志子
  • 音楽 : おかもとだいすけ
  • 演出 : 吉田浩樹
  • 主演 : 津田寛治

頭がぼやっとする。覚えられない。考えられない。
一体どうなっちまったんだ、俺の頭は。
小学5年のときに奨励会に入会。俺のあだ名は「天才」だった。
以来、将棋一筋。
そんな俺が将棋を指せない。
心配した妻が呼んだ精神科医の兄貴が俺の顔を一目見るなり言った。
「学…。どうしたんだ。いつからこんな状態だ。」
2017年8月。俺は本格的におかしくなっていた。



FMシアター「うつ病九段」は、プロ棋士・先崎学さんによるうつ病闘病記「うつ病九段 プロ棋士が将棋をなくした一年間」を題材としたラジオドラマです。

もともと文章は達者

先崎さんはプロ棋士ではありますがもともとエッセイストとしても活躍されていた方で、羽海野チカさんの将棋漫画「3月のライオン」で将棋コラムも書かれているのをご存じの方もいらっしゃるでしょう。
そのため文章を書くことはもはや玄人といっても良い方なのですが、その発信力の高さを将棋連盟に買われ、棋士が対局で将棋ソフトを使用した疑惑の対応を任されていたのが良くなかった。
勝負師としての日常に加え、委員としても不祥事の対応に忙殺される中、ほとんど休めない日々が続きうつ病を発症。
ついに入院のやむなきに至ります。
退院後もアマチュア向けの将棋本すら理解できないような体調で、復帰に向けての苦闘が続く様を描いたのが本作品です。
そういう意味では最大のテーマは「病気」ではあるのですが、同時に棋士という職業(あるいは生き方)へのこだわりも描かれているので本作品の分類は「職業」としました。

つらい。

本作品の特徴はとにかく聴いていてつらいこと。
ストーリーが進んでもなかなか明るい展開になりません。
というか、散歩をしているだけで周りの人が幸せそうに見えて耐えられなくなったり、「今は明るい話を聞きたくない」と自分から言っちゃったりするので明るくなりようがありません。

津田寛治さん熱演

この先崎学を演じるのは俳優の津田寛治さん。
小劇場出身の苦労人で近年、性格俳優として評価が高まっています(「シン・ゴジラ」出演者記事で紹介済み)。
本作品の半年ほど前に放送された青春アドベンチャー「北海タイムス物語」で鬼上司・権藤を演じたのですが、そちらの役も後半、精神的に追い詰められて弱っていく様がリアルです。
演出も同じ吉田浩樹さんですし、津田さんが本作に登用されたのは、この権藤役の熱演が理由なのかも知れません。

ヒロインは鈴木杏樹さん

その他に出演者は、女流棋士(囲碁)である先崎の妻(ドラマ中では「繭」という名前は明示されず)を鈴木杏樹さん、精神科医でもある兄(ドラマ中では「章」という名前は明示されず)を朝倉伸二さん(ぼろ鳶組の寅次郎ですな)、弟弟子の中村大地を窪塚俊介(金魚姫ディス・イズ・ザ・デイなど)さん、永世十段・中原誠を陰山泰さん(「鷲は舞い降りた」のリーアム・デブリンなど)さんが演じています。

あまり焦らないで

それにしてもこれ、2017年から2018年に掛けての出来事なのですね。
書籍の出版も2018年7月で、このラジオドラマが2019年7月。
将棋と同様に執筆もリハビリの一環だったのかも知れませんが、まだまだ昔の話ではありません。
作中で「とにかく時間を稼ぐのがうつ病治療の全てだ」とお兄さんも言っています。
作品自体も「俺たちの戦いはこれからだ」的に終わっているのですが、実際、焦らずお体は大事にしていただきたいものです(いやまあ社会人として焦る気持ちは十分分かるのですけど)。

TVドラマ版主演の安田顕さんも聴取

なお、同作品、2020年には安田顕さん主演でTVドラマにもなっています。
脚本はこのラジオドラマ版と同じ小松與志子さん…というがラジオドラマを元にしたTVドラマらしく、安田さんも事前にラジオドラマを聴取したとのことです。

ラジオドラマどうでしょう

それにしても安田顕さん、最近引っ張りだこですね。
個人的には鼻から牛乳を吹き出して悲しそうな顔をしていたのが忘れられないのですが、是非、青春アドベンチャーやFMシアターにもご出演いただきたいものです。




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