格付:A

格付:A

冬の曳航 作:桑原亮子(FMシアター)

鎌倉時代。 熊野の地から、ひとりの僧が浄土に旅立とうとしていた。 浄土といっても比喩ではない。 三十日分の食料とともに、艪や櫂を一切持たない「渡海船」に閉じこめられ、黒潮の流れに乗るのだ。 流された先の南方には極楽浄土があるという。 本当だろうか?わからない。 はっきりわかっているのは生きて帰ることはできないということだけだ。 民衆の願いのため身を捨てることを選んだ、この僧・浄定に対し、民衆は尊崇の念を惜しまない。 しかし、当の浄定には一つだけ心残りがあった。 それは、京の都で薬師になるために修行している捨て子の少年・捨三と言葉を交わしたかったということ。 死に行く自分だからこそ、母を人柱にされた捨三に掛けられる言葉があると考えたのだが…
格付:A

王妃の帰還 原作:柚木麻子(青春アドベンチャー)

滝沢さんのことを、私は心の中で「王妃」と呼んでおります。 もちろんホンモノの王妃ではありません。 キリスト教系の私立中学校といっても、所詮は現代日本。そのようなものがいるわけありませんから。 でも、クラスの「トップ」に君臨する彼女は、私のような下層民の「地味子」からすると、やっぱり「王妃」なのです。 それも、傲慢、横柄、荒ぶるマリー・アントワネット的な意味で。 でも、今、そんな滝沢さんが、見たことがない姿を見せております。 あの「王妃」がクラスメイトの前で号泣するなんて…
格付:A

唄娘 作:森脇京子(FMシアター)

「待ってぇ~、乗ります!乗りますからぁ~!」 岐阜県は白山の麓にある小さな集落・君丈村(きみたけ・むら)のバス停。 いつもぎりぎりにバス停に現れる民宿君竹屋の看板娘・君丈みさとを待って、バスが発車を遅らせるのは、もはやこの村の風物詩。乗客の老人たちも心得たものだ。 君丈村は、みさとが通う高校までバスで1時間もかかる山間の集落。 みさとはこの小さな集落で、周囲の大人たちの暖かい目に囲まれて育ってきた。 しかし、最近悩んでいる。 実は高校を卒業したらこの村を出て行きたい。 自由な社会で精一杯生きてみたい。 でも、母は、祖父は、そして村のみんなは、みさとが民宿を継ぎ、神事で村の民謡を唄う「唄娘」をも受け継いでくれることを期待している。 もう高校3年生だ。 でも、みさとはまだ迷っている。
格付:A

カーミラ 原作:シェリダン・レ・ファニュ(青春アドベンチャー)

深い森に佇む古城に住む少女ローラは、ある日、カーミラという名前の女性と出会う。 同年代の友人を渇望していたローラは、若く美しいカーミラを熱狂的に敬愛し、ふたりは実の姉妹のように仲むつまじく暮らし始めた。 しかし、甘やかな時間は永くは続かなかった。 城の周辺で次々と若い女性の怪死事件が起こっていたのだ。 そしてローラ自身もまた徐々に健康が蝕まれていく。
格付:A

毒見師イレーナ 原作:マリア・V・スナイダー(青春アドベンチャー)

「イレーナ、君に選択肢を与えようじゃないか。」 悪名高きヴァレク、謀略と暗殺でこの国を支えてきた防衛長官が、イレーナに告げたのは意外な提案だった。 「死刑か、それとも最高司令官アンブローズの新しい毒見役になるか、どちらか選びなさい。」 孤児だったイレーナを育ててくれた第五軍管区の将軍ブラゼルの一人息子レアードを殺したイレーナ。 暗い地下牢に投獄されてもう1年。 極刑は免れない。 いや、でもチャンスがあるならやはり生きたい。 たとえそれが死ぬより過酷な運命だったとしても。
格付:A

I want to be. ケンジノウタ 作:樋口ミユ(FMシアター)

聞こえただろ、歌だよ。 ほら、あの歌、ケンジの歌… 高校3年生の時、親友が死んだ。 死んだけど悲しくはなかった。 なぜなら、ケンジの声は相変わらず聞こえていたから。 彼は聞いてきた。「いつまでも覚えていられる?」 すっとそばにいる彼を忘れるわけがない… でも、その10年後、くだらない毎日を過ごす僕はあっさり忘れていた、ケンジのことを、ケンジの歌を。
格付:A

月下花伝 時の橋を駆けて 原作:越水利江子(青春アドベンチャー)

2か月前、おじいちゃんが亡くなった。 道場主だったおじいちゃんがいなくなった道場はいつもひんやりしたままだ。 私の取柄と言ったらおじいちゃんから習っていた古武術だけ。 同じ姉妹でも、女優をしている美人の姉とは比較にもならない。 でも、学校をやめる決意はした。 今日からは自分の力で何かをしてみせる。 でも何をしたらいいのかわからない。 だから、毎日、おじいちゃんの残した古い未編集の映画ばかり見ていたのだけど。 そのフィルムに移っている新撰組の沖田総司を見ているうちに不思議なことが起こったのだ…
格付:A

天下城 原作:佐々木譲(青春アドベンチャー)

落城の光景が忘れられない。 もし城さえ落ちなければ、侵略者の武田に囚われて、奴隷のような毎日を送るようなこともなかったはずだ。 だから、虜囚の立場からようやく抜け出した私、戸波市郎太(となみ・いちろうた)がやりたいことと言ったら、城を作ることしかなかった。 それも決して落ちない「不落の城」をだ。 石積み職人になったのもそのためだ。 そして、目の前の傲岸な男はそれをやらせてくれるという。 「天下人となる意思を示す城」、すなわち「天下城」。 それは決して落ちない「不落の城」でなくてはならない、その男、織田信長はそういったのだ。
格付:A

防潮門 原作:アリステア・マクリーン(アドベンチャーロード)

それはひとつの英語のメッセージから始まった。 「我々はFFF(エフエフエフ)である。 我々は北海に臨む堤防の要衝を爆破する用意がある。 第一の目標はスキポール空港。 洪水は明日11時に起こることを予告する。」 テロリストはオランダという国全体を人質としようというのだ。 国土の3分の1が海抜ゼロm以下というオランダを。
格付:A

弾け!はじけろ!そろばん甲子園 作:東多江子(FMシアター)

「もう、部活決めた?」 入学式の行われるこの日は、学校中が部活の勧誘活動で賑やかだ。 負けてはいられない。 わが「珠算(そろばん)部」は、現在、部員たったの2名。 部長を拝命してしまった私、北九州総合高校・商業科2年の古賀すずとしては、最低3名くらいは部員を集めたいところだ。 …でも集まらない。 それはそうだろう、こんな地味な部活、選ぶ方が変だ。 こうなったら2名でもいい。 いや1名でもいいから、有段者の新入部員がどうしても欲しい。 目標としている珠算の全国大会、いわゆる「そろばん甲子園」の団体戦出場には3名が必要なのだ。 このままでは出場することすら出来ない!
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