格付別一覧

格付:C

仮想郵便局 作:詩森ろば(FMシアター)

小さいころから私は引っ込み思案だった。 でもお話を声に出して読むのは好き。 だから地元のラジオ局「桜島ラジオ」に就職できたのは願ってもないことだった。 しかも前任者の急な降板で人気番組「仮想郵便局」のパーソナリティーの座が回って来るなんて。 「仮想郵便局」は誰かの出した手紙に、別の誰かの出した手紙をマッチングして返信として読み上げる人気番組。 でも最初の放送で気持ちが入り過ぎて大失敗をしてしまった。どうしよう。 落ち込む私にディレクターが見せたのは1通の手紙。 終戦直前、地元にあった特攻隊基地から飛び立った恋人にあてに、ある女性が出した手紙だという。 どうしよう、こんな人の人生を背負うような手紙に返信するに足る手紙なんて見つけられるのだろうか。
格付:B

カナコと加奈子のやり直し 原作:額賀澪(青春アドベンチャー)

高校三年の1月、教師を目指していた俺は教室のベランダで目の前を真っ逆さまに女子生徒が落ちていくのを見た。 あれから10年、俺は母校で教鞭をとっている。だが、あの頃の情熱はいつしかなくなっていた。 「教師に言って欲しいこと、して欲しいこと」を上手に演じているだけ。虚無。それが今の俺だ。 しかし、ある日、俺はあの時死んだ女子生徒 -石井加奈子- の伝説を知る。 石井加奈子は幽霊となって夜、校舎を徘徊しているというのだ。 そしてその出会いは突然訪れた。 「ぱんぱかぱーん!おめでとうございます。菅野先生はめでたくイシイカナコの『人生やり直し事業』の対象者に選ばれましたぁ!」
格付:AA

はるかぜ、氷をとく 作:渡辺あや(FMシアター)

あの時の姉の選択を自分は受け入れられてると思っていた。本当は私は姉を恨み続けてきてしまったのかもしれない。 ~麻子 スピッツの『田舎の生活』が聞けなくなったのは震災の後だ。ふと、失われているのは恋ではなく、街であるように聞えた。 ~祐実 祐実おばちゃんはいわゆる自主避難っていう選択をしたんだなって理解できるようになったのはその後しばらくしてウチが中学生くらいになってからのことだ。 もしかしたらあのふたりはそのことがお互いずうっと引っ掛かっているんじゃないかと思う。 ~こなみ
格付:B

鷗外 青春診療録控 千住に吹く風 原作:山崎光夫(青春アドベンチャー)

小説・詩・戯曲など自ら文学史に残る多くの著作を残した一方、積極的に啓蒙活動を行い多くの後進を見出した日本近代文学の祖のひとり。 あるいは陸軍の軍医として主要なポストを歴任し、最後には軍医総監(中将相当)にまで昇りつめた謹厳な軍官僚。 しかし、その男、森鷗外にも青春時代はあった。 小説「舞姫」へと昇華されたドイツ留学中の出来事? いやいや鷗外は留学前に“若先生”として父の医院を手伝っていた時代があるのだ。 この物語は、まだ何者でもなかった若き“森林太郎”の町医者としての日々の記録である。
格付:B

ワンさんは働き者 作:三井隆(FMシアター)

名古屋でラーメン屋を営む初老の夫婦の元に、日本語の怪しいアルバイト希望の若者が転がり込んできた。 少しでも赤字を減らしたい妻の提案で受け入れることを決めた店主だが、彼のやることはどこかおかしい。 夜中に“太陽系音頭”を大声で歌うわ、大量の放射性廃棄物を一般ゴミに出すわ。 耐えきれなくなった店主は、どこから来たのか彼に問いただすが帰ってきたのは奇妙な音ばかり。 その若者“ワンさん”曰く「私の故郷の名前、地球上で発音すると超音波になってしまう」。 そう彼は宇宙人だったのだ。
格付:B

今年の梅は 作:伊佐治弥生(FMシアター)

世の中には“便利屋”という仕事に不信感を持つ人間もいる。 確かに家庭内の仕事を手伝うという性格上、その家庭のナイーブな側面に触れざるを得ない面はある。 ましてお客が老人の場合、なぜ他人である便利屋に頼むのか、老人の弱みに付け込んで金をとっているのではないかと、依頼人の家族に思われることもある。 しかし、それにしても突然現れた倫子さんの大学生だという孫の言い方は失礼過ぎる。 これまで倫子さんとは適当な距離を保ち楽しくやってきたのだ。 それに私にだって事情はある。 女ひとりで便利屋を切り盛りすることはそんなに楽なことではないのだ。
格付:AA

ウブヒメ 作:今城文恵(青春アドベンチャー)

お江戸・浅草の裏長屋に住む5人の男女が、竹藪のあばら家に集まっていた。 浪人の天野新右衛門、猿回しの音兵衛役、町奴(侠客)の権太、そしてやたらと目力のある武女(むめ)という少女。 彼らが目論むのは権力者、柳沢出羽守保明の屋敷の焼き討ち。 罪のない町人たちが磔や追放の憂き目にあう徳川綱吉の世を一刻も早く終焉させるのだ。 由井正雪すらなし得なかった大事を目論む彼らにはある切り札があった。 それこそが武女の持つ“産火(ウブヒ)”の力。 正しい人間である自分が、悪いものを灰にするための力。 私が火をつけてやる。
格付:B

これは、私の落とし噺 作:本田誠人(FMシアター)

「母さん落語する。やってもいい?」 母が突然、落語家になりたいと言い出した。 若かりしあのころの夢にもう一度挑戦したいというのはわかる。 若いころオードリー・ヘップバーンに憧れていたのもわかる。 でも、なぜ落語? 恥ずかしい、絶対やめて欲しい…って言いたかったけど。 いつからだろう、相手の顔色を窺って感情を表に出さなくなったのは。 目立つな、騒ぐな、叩かれるな。 それが私の絶対条件、3箇条。
格付:A

かがみ池のからくり 作:松村武(青春アドベンチャー)

30目前の売れない歴史ライター・能垣拓郎(のうがきたくろう)と、サブカル好きの女子大生・鳥留つむぎ(とりとめ・つむぎ)が向かったのは「かがみ池」。 拓郎には微妙なパワースポットにしか見えないが、つむぎがいうには「知る人は知る聖地」らしい。 かがみ池の水面をのぞき込むと、何者かの呪いによって陰で操られている人はその陰の主が水面に映る。さらに、その水面に何も映らない場合は…とのことなのだが。 もちろん拓郎はこの与太話を信じてここまで来たわけではない。 旅雑誌の取材で訪れた祭りで出会った鳥留つむぎという可愛い女の子との距離を縮めたかっただけなのだ。 しかし、彼らはそこで歴史ライターでもサブカル好きでも予想もできないような出来事に巻き込まれることになる。 物語の始まりは平成バブルがはじけて間もないころ。 パフィーの「サーキットの娘」が流行っていた1990年代後半のことである。
格付:B

ぼくらの七日間戦争 原作:宗田理(アドベンチャーロード)

7月20日、中学1年1学期の修了式の日。 クラスの男子全員21名が学校から帰ってこなかった。 親や教師が集団誘拐かと大騒ぎをする中、「午後7時からFM放送を行う。ダイアルを88MHzにあわせろ。」という不審な電話がかかってくる。 大人たちが慌ててラジオのダイアルをあわせると、アントニオ猪木の入場テーマ「炎のファイター」に合わせて放送が始まった。 「皆さん、こんばんは。ただいまより解放区放送をお届けします。センコーの説教も親父の小言もお袋の愚痴も今日は休みだぜ。テストも宿題もついでに塾も今日は休みだぜ。それからテレビも漫画もおやつもビタミン剤も今日は休みだぜ。休んで何をするかって?…」
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