川辺のアジール 作:水城孝敬(FMシアター)

FMシアター等単発番組
  • 作品 : 川辺のアジール
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : C+
  • 分類 : 日常
  • 初出 : 2025年8月30日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 水城孝敬
  • 音楽 : 小林洋平
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 藤山扇治郎

「時代にあった売れる企画」ってなんだ。
こんな血の通った原稿が何でダメなんやろ。
1年半ずっと準備してきたのに。これからどうしたら。
もうアカン。あたまに霧がかかったみたいで…もう職場に行くことができない。
しかも妻に相談したら「休職中の収入ってどうなるの?あたしだってすぐには働けないよ!」。
家にも居場所がない。
帰ろう、実家に。実家になら居場所がある、のだろうか。


本作品「川辺のアジール」は水城孝敬さんの脚本によるオーディオドラマで、NHK-FMのFMシアターで放送されました。
内容は、仕事で追い詰められた中年男性が、故郷の川沿いにある私設図書館「アジール」(ドイツ語あるいはフランス語で「聖域」あるいは「避難所」の意味)で生きる力を取り戻していくといういたってマジメなものです。

アジール繋がり

基本的にエンタメ作品を取り上げる本ブログには似合わない作品選択ですが、あえて取り上げたのは同時期にもう一つのオーディオドラマ番組「青春アドベンチャー」で放送されていた「常識のない喫茶店」の再放送(とその続編「記憶を食む」の放送)に関連付けてのこと。
「常識のない喫茶店」もほぼ似たようなテーマの作品で、主人公が逃げ込む喫茶店の名前も「アジール」。
偶然なのか意図的なのかわかりませんが、敢えてずらさなかったところをみると消極的では意図的に重ねてきたのだと思います。
これは制作側の意図に便乗しないと!と思って聴取したのですが…

つらすぎる

少なくとも私にとっては暗すぎる内容でした。
まず導入部で、今までの努力を全否定された男性が家に帰ったら専業主婦の妻に「お金どうするの!」って気の毒すぎる。
でも実際、一度だけ賞を取った純文学の作家が、自身の経験した貧困生活を題材に書いた作品って…確かに売れそうな気がしない(西村賢太さんくらいキャラが濃ければやりようはある気もしますが)
そして何より主演の藤山扇治郎さんの演技が鬼気迫ることがドラマに余計に暗い説得力を与えている(逆に言うと同じテーマでも救いを感じさせてしまう「常識のない喫茶店」における朝倉あきさんの魅力をも感じる)。

中盤以降の展開も

そして主人公が「避難所」に辿り着いてからのストーリーについても(賛否両論はあったものの)ある種の爽快感があった「常識のない喫茶店」と比較して、不幸要素多め、希望要素少なめの展開で、まあ良くも悪くも地味な展開が続きます。
まあFMシアターなので個々の心の動きを丹念に描く方向性は悪くはないとはいえ、正直私には視聴がつらすぎる作品でした。

人によって評価は…

逆に言えばFMシアターらしい作品だとも言えると思います。
本ブログはあくまでエンタメ重視のブログにおける評価ですので、その辺は割り引いて考えていただくか、はむしろこのブログで求めているものがあわないと感じる方にとってはむしろ高評価の作品なのかもしれません。
この辺は各自でご判断下さい。

というか評価は逆?

なお、藤山さん以外の出演者は、いしのようこさん、三宅朱莉さん、丹下真寿美さん、曽我廼家八十吉さん、山本拓平さんとなります。
とはいえやっぱり藤山さんだよな、この作品は。
内気な男性を演じ切っているのは、ある意味、見事ではあります。
あれなんか意外とほめている?
ひょっとしたらこれは傑作だったのかもしれません。

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