- 作品 : ピアノdays
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 日常
- 初出 : 2024年12月16日~12月20日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 作 : 藤井青銅
- 音楽 : 川田瑠夏
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 平田広明
本作品「ピアノday」は「青春アドベンチャーにもっとも多くの作品を提供した男」藤井青銅さんによるオリジナル脚本のオーディオドラマです。
作品形態は1話15分完結のショートストーリーが5本で構成される、いわゆるオムニバス形式ですが、「全話(ほとんど)同一の作者」+「オリジナル脚本」+「コメディ色(ほとんど)なし」という作品は青春アドベンチャー30年の歴史でも実はほとんどなく、ほかには「ブラックホール」(宮崎由香さん・綾瀬麦彦さん脚本・1992年)、「日常生活の冒険」(北野勇作さん脚本・1997年)程度しか思いつきません。
藤井青銅さんといえば…
さて上記の本作品の特徴3要素のうち、藤井青銅さんらしからぬという点を選ぶとすれば、やはりコメディ要素の欠如でしょう。
そしてドタバタ要素もほとんどない。
毎年、青春アドベンチャー年末の風物詩だった「干支シリーズ」をはじめとして、「サウンド夢工房」時代に制作されたほとんど全編がパロディに彩られた怪作「愛と青春のサンバイマン」(1991年)から、最近の「00-03 都より愛をこめて」(2020年)、「ピーチ・ガイ~ハリウッド・リメイク『桃太郎』」(2021年)まで、青春アドベンチャーでは徹底的にドタバタコメディにこだわってきた藤井青銅さんですが、本作はコメディ要素はほとんどなく、なんとも穏やかな作風です。
シン・藤井青銅?
というのも本作品は各回ごとに著名なピアノ曲をモチーフとして、登場人物たちの人生の一場面を切り取っていく、日常系の内容なのです。
そういう意味では最も藤井青銅さんらしくないのが本作品の最大の特徴。
でも考えてみると「藤井青銅で1年度締めくくる」という点では干支シリーズを継承したともいける企画であり、その面では青春アドベンチャーらしい年末の締めとなりました(まだもう1作品「あずかりやさん」の再放送が残っていますが)。
各話の概要
さて、それでは各話の概要をご紹介します。
ピアノ曲の名称がそのまま作品名となっています。
なお、番組ホームページの出演者欄のトップに書かれているのは平田広明さんなのですが、平田さんの役どころ「ピアノ弾き」は役というより全体の案内役兼ナレーターです。
確かに、登場時間の多さ、作品全体の雰囲気に与えている影響力、全話に登場していることなど、主演という表記にふさわしい面もあるのですが、各話のストーリー上の主役とは言えないため、以下では各話の中心となる俳優さんを主演として表記します。
第1話「子犬のワルツ」
- 主演 :伊礼彼方
- 概要 :遂にボクサーを引退するときがやってきた。しかし、すぐに仕事を辞めることを繰り返してなかなか前へは進めない。流れ流れてたどり着いたのは銀座の端っこの夜の店。
- 一言 :「子犬のワルツ」をテーマにしているのに主人公が「ブルドック大岩」という厳つい顔の中年男はないだろうと思ったが、モチーフにしているのはぐるぐる回るところだった。
第2話「ジムノペディ」
- 主演 :野々すみ花
- 概要 :工業機械を扱っている地味な会社の、その中でも地味な経理の女性・しずか。社長ジュニアの領収書も平然と突き返した伝説を持つ彼女には意外な一面があった。
- 一言 :「帝冠の恋」や「軽業師タチアナと大帝の娘」のようなオーラを微塵も感じさせない野々すみ花さんの演技がむしろ見事。なお「ジムノペディ」だから事務の仕事がテーマという訳ではないと思う。
第3話「ジ・エンターテイナー」
- 主演 :百名ヒロキ
- 概要 :芸人になると決めた!とすればまずは浅草のストリップ劇場の幕間のコントだ。コントに何の興味もない客を振り向かせてこそ伝説の始まりになるのだ。
- 一言 :めずらしくタイトルそのもの「エンターテイナー」の話。とはいえ何だかよくわからない展開で当初予想していなかった境遇に登場人物たちがたどり着くのが藤井青銅さんらしい。
第4話「クシコス・ポスト」
- 主演 :フランク莉奈
- 概要 :中学、高校、大学、社会人。競争、競争でやってきたけどなんだか疲れてしまった。衝動的に退職して沖縄に向かった私。ここには競争ではなく共生があるに違いない。
- 一言 :競争はだめよ~という安易な話にならなくてよかった。収穫はフランク莉奈さん。素直な演技に好感触。
第5話「エリーゼのために」
- 主演 :伊礼彼方
- 概要 :今日は本町シネマの閉館日。皮肉にも閉館を発表したとたん連日満員だった。それでもついにすべてのお客が帰った。帰ったはずだけど…女性が一人残っている?
- 一言 :本作品で唯一のファンタジー要素のある作品。ひょっとしたらすべて幻で不思議なことはなかったのかもしれないけど。
芸術モチーフ
青春アドベンチャーで芸術をモチーフにしたオムニバス作品としては絵画をモチーフにした「<あの絵>の前で」という先例がありますが、本作品はそれ以上にアクが強くなく、間口も広い作品。
実際、「子犬のワルツ」と「エリーゼのために」以外は知らないぞ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、聞けば「ああ、この曲ね」とわかる超ポピュラーな曲ばかりです。
まあ年末ですしこのような落ち着いた作品で締めるのもありかもしれません(くりかえしますがまだ「あずかりやさん」の再放送が残っています)。
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