常識のない喫茶店 原作:僕のマリ(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 常識のない喫茶店
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 2022年2月13日~2月17日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 僕のマリ
  • 脚色 : 井出真理
  • 演出 : 大久保篤
  • 主演 : 朝倉あき

駅前から続くこじんまりとした商店街の先に、学生時代に通っていた喫茶アジールはある。
この喫茶店のドアにアルバイトの募集の張り紙があることに気が付いたのは求人誌を買って帰る道すがらのこと。
大手メーカーに就職したものの目標予算に追いまくられて心を病み、退職。
そこでは面倒な客に頭を下げ続けるのが常識だった。
「この店で働くにあたって一番必要なことは優しさと思いやり」
面接をしてくれたアジールのマスターはそういった。
ここでなら私も働くことができるのだろうか。
この常識のない喫茶店でなら。



朝倉あきさん主演!

みんな大好き(青春アドベンチャー全作品アンケート出演者編第3位)朝倉あきさんの久しぶりの青春アドベンチャー出演作が本作品「常識のない喫茶店」です。
青春アドベンチャーでは2018年の「蒼のファンファーレ」以来ですから、かれこれ約4年ぶりになります。
思えば最初の出演作「放課後はミステリーとともに」(2011年)はもう11年以上前の作品になります。

エッセイ⇒オーディオドラマ

さて、本作品「常識のない喫茶店」は「僕のマリ」さんによる文芸作品を原作としたオーディオドラマですが、この原作は僕のマリさんに経験をもとにしたエッセイのようです。
エッセイを原作とする作品は青春アドベンチャーでは1994年の「少年探検隊」くらいですが、更に過去にあった前身番組(ふたりの部屋カフェテラスのふたりサウンド夢工房)では結構多くみられました。

ドラマ仕立て

有名なところでは2015年に「今日は一日ラジオドラマ三昧」で一部が再放送された椎名誠さん原作の「『気分はだぼだぼソース』日本の異様な結婚式について」でしょうか。
「気分はだぼだぼソース」もそうなのですが、エッセイを原作とする作品は、そのまま放送するのではなくドラマ仕立てに作り直す場合が多く、本作品「常識のない喫茶店」もそのパターンです。
ちなみにエッセイ以外にノンフェクション作品でも同じようにドラマ仕立てにすることが多く、「1985年のクラッシュ・ギャルズ」(2013年)などスポーツものに目立ちます。

常識外れか

さて、本作品は「店員が楽しくなくてお客さんが楽しめる訳がない」「働いている者が嫌な気持ちになる者はお客様ではない」「間違っていることは間違っていると言っていい」というポリシーを持った「常識のない」喫茶店を舞台にした女性の再生物語です。
ただ、このポリシー、別に常識外れではないですよね?

類は友を呼ぶ

また、作中のマスターのセリフとして「優しくするとそういうお客さんが集まる」というのもあるのですが、これも同意です。
社会人になって色々な会社、組織の人と付き合うとわかると思うのですが、社風というものは確かにあって、同じ会社には自然と同じ雰囲気の人が集まる(あるいは同じ雰囲気の人になっていく)。
そして似た雰囲気の会社どおしだと仕事がしやすい。
食っていけるだけ稼げないと企業体として存続できないのでぬるま湯的な状況は論外としても、最低限、人としてお互いに尊重しあう文化のある会社が相手でないとどうしても仕事がしんどくなってきて、自然と疎遠になっていくというのは私も経験しているところです。

本当に爽快か?

ただ、無礼な客を追っかけて店外で背中に向けて怒鳴ってやったとか、むしろ周りの客を不愉快にしていないでしょうか。
確かに客と対等なのかもしれないけど、対等というより無礼な客と同じ土俵に立っちゃっている。
また、一度謝ると理不尽な要求を受け入れ続けることになる、というのも少し思い込みが強すぎないだろうか。

優しさとは

もちろんそういうやり方があって良いと思うのですが、彼らに違う考えを示すと「あなたはお客様じゃない」とすぐに切り捨てられそうな気がする。
それは結局、思いやりというより、身内意識に過ぎないのではないか。
そういえば本作品で店員が常連客で陰であだ名をつけて楽しんでいる描写がありましたが、それも身内意識が透けて見える。
…と、なんだかモヤモヤが残りました。

良くも悪くも起承転結

また、全5話というのがやや微妙。
キチンと起承転結ができていて脚本の井出真理さんは流石だなとは思うのですが、原作の目次を見ると細かいエピソードを積み重ねたエッセイのよう。
成長物語として完成させるために肝心のアジールの深みを十分にだせなかったのが印象に影響を与えている気もします。
なお各回のサブタイトルは以下のとおりです(※追記に補足あり)。

  1. 人生の分かれ道
  2. 優しさと思いやり
  3. 出禁です
  4. 本当にやりたいこと
  5. 卒業

個人の感想です

とはいえ、この感想は私が今、基本的にはBtoCの接客業をしておらず、クレーマーの問題を切実なものとして感じてないからというのはあると思います。
あくまで個人の感想として、その辺は割り引いて考えてください。

固有結界と領域展開って似てるよね

さて、とはいえ実際に聴いていてあまり不愉快な印象を受けないのも本作品の特徴。
これはやはり朝倉さんと本田博太郎さんの声と演技の賜物だと思います。
朝倉さんの優しい声で語りかけられるとどうしても殺伐とした雰囲気にはなりません。
また、「ちいさなちいさな王様」でもそうでしたが、本田博太郎さんがぼそぼそした喋りで展開する固有結界(あるいは領域)が、世界をファンタジックに染め上げています。
小難しいことは考えなくとも素直に聞いて楽しめる作品です。




※2023/2/18追記
オーディオドラマ版の第1話は原作では実は最終話とのこと。

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