- 作品 : 記憶を食(は)む
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : 旅とグルメ
- 初出 : 2025年9月1日~9月5日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 僕のマリ
- 脚色 : 井出真理
- 演出 : 大久保篤
- 主演 : 朝倉あき
大好きだった業界に新卒で入ったもののノルマに追いまくられ無残にも退職。
絶望しかない中で選んだ喫茶アジールでのアルバイトで私は救われた。
アジールで得たのは自分に対する肯定感。
でもそれだけでなく、自分の生涯の仕事が「書くこと」だということに気づくこともできた。
今はアジールから巣立って、生涯の伴侶とともに駆け出しの物書きとして暮らしている。
まだ体調は万全とは言えない。自分の気持ちがコントロールできないことも多い。
でも今回依頼された「食にまつわるエッセイ」は良いものが書けそうな気がする。
グルメレポートではない。
編集者の人は「食べ物が呼び起こす記憶のようなもの」を書いてほしいと言ってくれたのだから。
本作品「記憶を食(は)む」は、「僕のマリ」さんによるエッセイ「記憶を食む」(原作はルビなし)を原作としたオーディオドラマで、2023年に放送された「常識のない喫茶店」の続編的な作品です。
エッセイで続編?
続編「的」と微妙な表現で書きましたが、もともと両作品とも「僕のマリ」さんによるエッセイが原作。
エッセイですので、当然語り手は作者自身なのですが、青春アドベンチャーではこれをストーリーのあるドラマとして再構成しています。
そして両作とも原作者である「僕のマリ」さんに相当する「マリ」を主人公にし、2つのエッセイを出版順にドラマ化したため、本作品は「常識のない喫茶店」の後日談、つまり事実上の続編ドラマになっています。
そう、前作で、店員を不愉快にするお客さんは客ではない」という強い信念を持ったマスターのもと、「書くこと」を武器に再生の一歩を歩み始めたマリのその後が描かれているのです。
NHKもよくわかっているので本作の直前に「常識のない喫茶店」(全5回)の再放送を実施。
あたかも全10回でつながっているような放送となりました。
喫茶アジールへの賛否両論
さて本作品のあらすじについては冒頭のとおり。
マリはすでにアジールを退職しているので舞台はアジールではありません。
実は当ブログで実施しているアンケートで、前作における喫茶アジールの経営方針については、一定割合、不快に感じている人も多かったようです。
これについての私自身の感想は「常識のない喫茶店」の記事に書いたとおりなので割愛しますが、正直、客をあだ名で呼ぶ(特に迷惑をかけていない客を含めて)部分にはあまり良い印象は持ちませんでした。
その一方で、SNSでの感想を含め「共感した!」という声も多く、その意味で賛否が分かれる作品でした。
穏やかな世界観
ところが今回はアジールが舞台でないこともあり、その「毒」はあまりなくなっています。
また前作ではブラックな職場の一方的な被害者的に描かれていたマリさんがもともと持っていた性格的な特性も描かれており、これを聞いた後だと「常識のない喫茶店」における彼女についても少し違って見えるような気がします。
全体的に本作品は「常識のない喫茶店」よりはアクが少なく優しい世界観の作品になっていると思いますが、この辺をどう評価するかはリスナー次第なのかもしれません。
ちなみに原作は全21章(+断章2+あとがき)で構成されていますが、本作品でドラマ化されているのは以下の5章のみです。
- チーズケーキの端っこ
- 朝食のピザトースト
- 苺の効力
- 不安と釜玉
- 明日のパン
出演者紹介
さて、本作品の出演者ですが、前作で最も印象的だったと思われる本田博太郎さん(マスター役)が登場しないのは少し残念。
ただ、アジールの同僚役だったの吉田美佳子さんと中村映里子さんは継続して出演されています。
また、新キャラとしてマリの夫の智之(ともさん)が登場し、その悠揚迫らざるキャラクターが本作品ののんびりした雰囲気づくりに大きく貢献しています。
この役を演じたのは青春アドベンチャーではおなじみの俳優、神農直隆さんなのですが、かなり外連味が強い「白銀騎士団」で演じていた、主人をからかうのが得意なインド人・ゴーシュとは全く違う演技なのが面白いです。
朝倉あきさん第3のシリーズ
そしてなによりこのシリーズを支えているのは主演の朝倉あきさんの演技。
NHK-FMの超常連の朝倉さん。
演技力を買われFMシアターでも青春アドベンチャーでも単発作品での出演が多いのですが、本作品をシリーズ作品と考えると「放課後はミステリーとともに」、「風の向こうへ駆け抜けろ」についで主演のシリーズ作品も3作品目となります。
この10年ほどの青春アドベンチャーを代表する演者さんですね。
そういえば「風の向こうへ駆け抜けろ」は原作小説の完結編(灼熱のメイダン)が今年刊行されたはず。
こちらのオーディオドラマ化を熱望している方も多いと思います。
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