- 作品 : 交響詩・うるんだ美女~四万十川をさかのぼる
- 番組 : FMシアター
- 格付 : C+
- 分類 : 旅とグルメ
- 初出 : 1987年12月19日
- 回数 : 全1回(60分)
- 作 : 川崎洋
- 演出 : 平畑克巳
- 主演 : 日下武史
先日、「日本の川を旅する~カヌー野郎のロンリーツアー」を聴いて興が乗ったので、今回は四万十川つながりと言うことで、「交響詩・うるんだ美女~四万十川をさかのぼる」を紹介します。
本作品は1987年にFMシアターで全1回(60分)放送された作品です。
制作したのは、NHKはNHKでも他にはあまり例を見ない地方局の松山局(「風になった男」の岡山局などの例はありますが)。
そのためか、通常、ラジオドラマが放送される「FMシアター」で放送されながら、本作品はかなり異色な作品になっています。
ほぼ紀行もの
一応、日下武史さん演じる主人公が四万十川をさかのぼる、という筋はあるものの、日下さん以外のプロの役者の出演者としては芦田容子さんがいる程度で、ドラマと言うより、随筆、紀行文、あるいはナレーターの独り言に近い内容です。
それに加えて、随所に、四万十川流域に住む一般の方々の話(インタビューに答えているような内容)が挟まります。
そして方言
この一般の方々、作品冒頭の出演者紹介では「高知県四万十川流域の人々」とまとめられていますが、実際の作品中では、「毎日、魚市場に行く朝比奈さん」、「アカメ釣りの名人の高山さん」、「船大工の中脇さん」などの地元の人が(数えていませんが)10人以上出演するのです。
中には訛りが強い人もいて、日下さんが翻訳することもあります。
本作品の脚本を書かれた川崎洋さん(2004年没)は、詩人で放送作家でもあったのですが、全国各地の方言収集にも力を注いでいたそうですので、まさに適任といえます。
自然破壊
それはさておき、この「一般の出演者の皆さん」に話を戻しますと、これらの方々の職業で最も多いのは、四万十川で漁をして生計を立てている川魚漁師。
そのため、彼らの語りは、豊かな漁場としての四万十川についてのものが中心となるのですが、終盤になるにつれ、川の変化、すなわち四万十川においてさえ自然が失われ、魚が減りつつある様子が語られるようになります。
この点で「日本の川を旅する~カヌー野郎のロンリーツアー」も同様であったのですが、「日本の川を旅する」では著者の主張として明確にこれが語られるのに対し、本作品では、流域に住んでいる方々の語りや、女性に例えられた四万十川の様子を通して、やや間接的・幻想的に語られます。
うるんだ、の意味
幻想的と言えば、本作品のタイトルである「うるんだ美女」ですが、これを標準語で聴くと少し艶めかしいイメージを覚えられるかも知れません。
もちろんダブルミーニングで、そういう意味もあるのですが、実は高知の方言で「うるんだ」には別の意味があり、本タイトルはそちらを主な意味として使っています。
これについてはネタバレになってしまうので、これ以上は書きませんが、ちょっと興味をひかれる内容でした。
その後の四万十川は?
なお、この作品中で「最近では四万十川を「守ろう」から「取り戻そう」になった」と環境の悪化が嘆かれています。
私の中の四万十川のイメージと言えば「釣りキチ三平」のアカメ編であり、変わらない清流のイメージなのですが、本作品の放送から30年近く経ったその後の四万十川を巡る環境がどうかわったのか、気になるところです。
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