あずかりやさん 原作:大山淳子(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : あずかりやさん
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 日常
  • 初出 : 2019年11月11日~11月15日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 大山淳子
  • 脚色 : 新井まさみ
  • 演出 : 矢部誠人
  • 主演 : 岡本玲

そのお店は商店街のはしっこにあって、一見、お店なのか民家なのかもわからないし、ぼーっとしてたら通り過ぎちゃうかも知れない。
お店の名前は「さとう」?
いえいえそれは和菓子屋をしていた先々代がわかりやすく「砂糖」と書いただけ。
では和菓子屋さん?
いえいえ違うのです。
そこは「あずかりやさん」。
盲目の店主が「社長」と一緒に営む小さなお店。
預かり賃は1個1日100円です。



大山淳子さんによる小説「あずかりやさん」シリーズの第1作「あずかりやさん」を原作としたラジオドラマです。
この小説「あずかりやさん」シリーズは、標題作のほか、「あずかりやさん~霧島くんの青春~」、「あずかりやさん~彼女の青い鳥~」の合計3冊が刊行済みです。
ちなみに大山淳子さんは脚本家でもあり、2007年には「届けてレッドマン」でNHK名古屋支局が主催する「第22回創作ラジオドラマ脚本募集」に入選、同作は同年6月にFMシアター枠でラジオドラマにもなりました。
つまり本作品はNHK-FMに原作者として凱旋した形になります。

基本的には日常系

さて、本作品は盲目のアラサー青年が一人で営んでいる不思議なお店「あずかりやさん」を舞台とした作品です。
「不思議」といっても業態が少し変わっている(というかとてもではないが採算がとれていなさそう)だけで、ファンタジックな出来事は全く起こりません。
一応、人間ではない「社長」がナレーションをしている点ではリアル志向ではないのですが、「社長」が誰か登場人物と会話をしたりすることは(ほとんど)なく、基本的にはモノローグ扱いなので、このブログでの分類もあくまで「日常」としています(この作品と同じ←ネタバレ注意)。
基本的には、心優しい店主とあずかりやさんを訪れるお客さんとの間の心の交流を描くほんわかとした作品です。

サスペンス要素が小気味よい

ただ、単なる癒やし系の作品ではないところが本作品のミソ。
そもそも盲目の青年が一人で店番をしているところからして何だか訳ありですし、ナレーションをしている「社長」の正体は実は…とか、点字ボランティアでよくやってくる気さくなおばさんが実は…とか、預かり屋を始めるきっかけとなった最初の預かり物が実は…とか、多少ミステリアスな要素もあります。
加えて、主人公が盲目であるという本作の設定と、聴取者が音からしか情報を受け取ることができないラジオドラマというメディアとの相性はなかなか良かったのかもしれません(ブラインドマラソンを扱った「ステップを聴かせて」や全く逆説的ですが聴覚障害を扱った「沈黙とオルゴールなどと似ている)。
そして、各回の切れ目がまた絶妙で、淡々とテンポ良く進むだけではない、ほどよい変調をはらんだ展開が視聴者を飽きさせない作品になっていました。

共感がわきづらい

ただ、肝心のエピソードの内容に、個人的にですが、あまり共感が持てなかったのは残念でした。
現金を詰め込んだ袋を渡そうとする母親にも、それを他人にあげてしまう店主にもなんとなく釈然としませんし、あずかりやから追い返されたというネタだけで積年のわだかまりが氷塊してしまう父子もなんだか安易に感じました。
また、(作中でも一部言及されていましたが)養育費が滞っている風でもない中、自転車(色からするとビアンキ?)一台で大騒ぎする高校生の自意識過剰さも???でした(カードで買えるからお金持ちというのは高校生にしてはあまりに幼稚。そもそもあずかりやさんに月3000円払っても平気って結構お小遣いをもらっているのでは?)
最後の取ってつけたような「星の王子さま」の引用も???(そういえばこの作品の翌週の作品も王子様ですね)

終盤の急展開

極めつけが第4話後半からの石鹸さんと「社長」を絡めた一連の急展開。
いい話のようになっていますが、事件の顛末も、社長の行く末も私には後味が悪く感じました。
また、(即物的な感想で自分でもどうかと思いますが)そもそも預かり賃をとっておきながら、期限を過ぎた瞬間に所有権が店に移転するルールって質屋もびっくりの暴利のような気もします。まあどうでもいいことなのですが。
…この作品を聞いて優しい気持ちになっている方に水を差してしまったら、ごめんなさい。
そもそもこういった「心が優しくなる系」形の話って私、苦手なのです。
個人の感想と言うことでご容赦を。
冒頭に書いたとおり、相対的には飽きの来ないよい作品だったと思います。

実質的な主演は小関裕太さん

出演者は、まず店主の桐山青年を演じるのは俳優の小関裕太さん…なのですが、公式HPをみると小関さんがトップではない!
主演は「社長」役の岡本玲さんなんですね。
社長はほとんどの場面でナレーション的な扱いなので、小関さんが主役だと思っていました。
それはさておき、岡本さんはファッション雑誌「ニコラ」のモデル出身の女優さんなのですが、本作品では……
いかーん、ネタバレに配慮していると書きづらくて仕方がない…
第2話ラストでほぼネタバレは済んでいるし、無理に隠す必要はないのかも知れませんが…まあこのまま行きましょう。

矢部誠人さん青春アドベンチャー初演出

最後に演出の矢部誠人(やべまさと)さんは青春アドベンチャーでは初演出の方。
TVドラマの演出が多く、土曜ドラマ「総務部長はトランスジェンダー」、連続テレビ小説「なつぞら」、FMシアター「風のち、りんご晴れ」などを演出されています。
Twitterでは以下のように書かれています。
今後のご活躍に期待です。


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