645~大化の改新・青春記~ 作:ウォーリー木下(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 645~大化の改新・青春記~
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B+
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2001年3月19日~3月30日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : ウォーリー木下
  • 演出 : 吉田努
  • 主演 : 松田洋治

僕の名前は中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)。
悪友たちからは「おうじ」とか「なかちゃん」とか呼ばれている。
今日、西暦645年6月12日、僕ら5人の悪ガキグループは、ある大きなことを実行に移そうとしている。
チェンジ・ザ・ワールド!
政権を握る蘇我入鹿を暗殺してクーデターを起こすのだ!
しかし、自分で言うのも何だが、僕らって何となく頼りない。
暗殺のリハーサルをしてみたものの、みんな、どこか真剣味に欠けている気がする。
これで無事にクーデターは成功するのだろうか。


本作品「645~大化の改新・青春記」は「劇団☆世界一団」(現在の名称は「sunday」)の代表である劇作家のウォーリー木下さん作のラジオドラマです。
タイトルの「645」はそのまま「ろく・よん・ご」と読みます。
ウォーリー木下さん作の青春アドベンチャー作品は他に、2002年放送の「スウィート・アンダーグラウンド」があります。
ちなみに、「青春アドベンチャー」という番組名でありながら、タイトルに「青春」という単語が入っている作品は、20年以上の歴史の中で当時、本作品だけでした(その後増えました。詳しくはこちら)。

舞台劇と青春アドベンチャー

さて、記事を書くにあたり、調べてみたところ、どうもこのラジオドラマの放送以前に、「劇団☆世界一団」の舞台として「645」が上演されているようです。
青春アドベンチャー作品のうち劇作家がシナリオを書いた作品の中には、ラジオドラマとして放送される前又は放送後に舞台で上演されるなど、舞台と密接に関係している作品が結構あります。
具体名を挙げると、「あたしの嫌いな私の声」、「サンタクロースが歌ってくれた」、「泥の子と狭い家の物語~魔女と私の七十日間戦争~」などです。

舞台が原作?

しかし、これらの作品は、ラジオドラマ化の前に原作小説が存在する、ラジオドラマは舞台とは異なる脚本家が脚色している、舞台とラジオドラマでは大きくストーリーが異なる、などの理由から、舞台脚本とラジオドラマが直接結びついているとは言いがたい作品です。
本作品のストーリーが舞台版のストーリーと、どの程度、異なるかはよくわからないのですが、仮に概ね同じだとすると、数少ない「舞台が原作」といえる作品なのかも知れません。

大化の改新

さて、本作品「645~大化の改新・青春記~」の舞台は、ずばり「大化の改新」です。
夢源氏剣祭文」や「風神秘抄」など平安時代を舞台とした作品は意外と多い青春アドベンチャーですが、飛鳥時代を舞台にした作品はさすがにこれ1作だと思います(ちなみに奈良時代が舞台の作品も、2013年放送の「いまはむかし~竹取異聞~」くらい)。

ほとんど現代のノリ

ただし、本作品は、一応、飛鳥時代というはるか昔を舞台としており、登場人物も歴史上で実在した人物たちですが、その台詞も考え方も現代風としか言いようがない形で造形されており、青春アドベンチャー史上に残る怪作ともいうべき作品になっています。
そのためジャンルは「歴史時代系」としたのですが、作品全体の雰囲気は「歴史時代系」という言葉から想像されるような堅苦しいものでは全くありません。
時代考証など、どこへやら(登場人物たちが「よーい!スタート!」とかしゃべっていますから)。

雑なあだ名

また、悪ガキグループはお互いにフランクなあだ名で呼び合っています。
それも、中臣鎌足の「鎌足さん」はともかく、中大兄皇子は「なかちゃん」、葛城稚犬養連網田(かずらぎわかいぬかいのむらじあみた)は「カッツ」、佐伯連子麻呂(さえきむらじこまろ)は「テツガク」、蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらやまだいしかわまろ)は「ナガイ」(名前が長いから)などとかなり適当です。
そのため、冒頭の暗殺のリハーサルシーンなどは、ほとんど学芸会のノリです。
最近、NHKのEテレ(教育テレビ)が、中村獅童が中大兄皇子にふんして歌う「新時代・大化!」という怪PVをつくったりしてますが、NHKも時々、妙なことを始めるものです。

(外部リンク)http://www.youtube.com/watch?v=oCsBI486wxQ

ノリと勢いのドタバタ劇

さて、物語は暗殺計画決行日の朝に始まります。
一応、当人達なりにはクーデターを起こす真剣な理由があるのですが、基本的にはノリと勢いで進めてきたような杜撰な計画です。
十分な準備もなされていない上、次々と生じるアクシデントにも対応できず、混乱のまま暗殺決行時刻が近づいていきます。
先が見えない展開…といえば聞こえはいいですが、どちらかというと行き当たりばったりで、とっちらかっている印象が強い展開でした。

舞台で演じるのがよい作品かも

しかも、作中でそれなりの人数の人間が死ぬのですが、終始ドタバタで、暗殺の結末も何となくトホホな感じでちぐはぐな印象をぬぐえませんでした。
この作品、登場人物や舞台がクルクルと変わるのですが、実際に舞台装置や登場人物がダイナミックに動くさまが体験できるとかなり印象が違う気がします。
その面で、やはり舞台劇向きの脚本と感じました。

いつの間にやら

ところで私が歴史を習った頃には「大化の改新=645年」だったのですが、最近は暗殺の決行(乙巳の変)と、その後の政治改革(大化の改新)とを分けて考えるのが主流なのだそうです。
その考え方に沿うと、大化の改新は646年スタート、ということになるのだそうです。
歴史の年号の語呂合わせでは、昔は「邪魔な虫殺す大化の改新」(むしこ=645年)などと覚えたのですが、今では「むしろこちらが大事、改新の詔」(むしろ=646年)などと覚えるのだそうです。
上手い!座布団1枚!

出演者紹介

出演者は主役の「なかちゃん」こと、中大兄皇子が松田洋治さん。
1980年代からNHK-FMのラジオドラマの常連さんですね。
青春アドベンチャー時代では「ふたつの剣」も主演でした。
その他、中臣鎌足・蘇我入鹿の二役を演じ、準主役と言って良いのは俳優の大沢健さん。
2018年以降はぼろ鳶組シリーズで 加持星十郎を演じています。
そして、ヒロインのまがない師・未来(みらい)役は本多真弓さんが演じていらっしゃいます。

最後にいろいろ本作品の情報を探していたら、以下のようなツイッターのボットを見つけました。
本作品、根強いファンがいるみたいですね。

(外部リンク)https://twitter.com/seisyunki_bot

コメント

  1. コン より:

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    憎しみは憎しみを生む。あの時代ではありきたりなことだったのかもしれません。
    どういうことがきっかけでクーデターを起こそうとしたのかが気になります。歴史を勉強すれば、もっと楽しめる作品だったのではないかと思いました。

  2. Hirokazu より:

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    コンさま

    コメントありがとうございます。
    大化の改新(乙巳の変)は日本史上でも有数の重大事件ですが、なにせ1400年も昔の話なので詳細は想像で補うしかないですよね。
    こういう時こそフィクションの出番なのかもしれません。

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