笑う20世紀 原作:藤井青銅(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 笑う20世紀
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : コメディ
  • 初出 : 1994年10月24日~11月4日
  • 回数 : 全9回(各回15分)
  • 原作 : 藤井青銅
  • 脚色 : 藤井青銅
  • 演出 : 川口泰典
  • 主演 : 小須田康人(下表のとおり)

青春アドベンチャーに最も多くの脚本を提供している脚本家・構成作家の藤井青銅さんによるショート・ショート集「笑う20世紀」をラジオドラマ化した作品です。
原作本は15作品で構成されていましたが、そのうち9作品が本作品でラジオドラマ化されました。
原作本のうち本作品でラジオドラマ化されなかったのは、「新聞が来た日」、「火事男」、「古典芸能の夕べ」、「こおろぎ橋」、「現代人は病んでいる」、「たぬきのくじ」の6作品です。
なお、青春アドベンチャーは通常連続10回の番組ですが、本作品は9回という中途半端な回数の作品です。
これは第2週目の木曜日に特番が放送されたためのようです。


屈指の長期シリーズ

さて、藤井青銅さんと言えば、青春アドベンチャーの年末企画として17年間連続で制作されたコント作品「干支シリーズ」が有名ですが、本作品から始まった「笑う」・「踊る」シリーズも青春アドベンチャー屈指の長期シリーズです。
具体的には、翌年からオリジナル脚本に変更された「笑う」シリーズの続編が6作品が制作され、さらに21世紀に入ってからは「踊る21世紀」と改題されて2作品が制作されました。

風刺色強し

いずれも、いわゆる「ショートショート」ですが、「笑う」のタイトルどおりコメディ色が強く、オープニングテーマ曲も和田アキ子さんの「笑って許して」です。
ただし、藤井青銅さんらしく、単純に笑ってお終い、というコメディではなく、ブラックユーモア的な風刺色が強くなっています。

コントではない

また、「干支シリーズ」が登場人物や舞台の設定を必要としない、いわゆる“コント” 仕立てであるのに対して、本作品は短編とはいえきちんと“ドラマ”の体裁を保っている点では統一されており、その面ではむしろ「不思議屋シリーズ」や「ライフシリーズ」に近い作品です。
藤井青銅さんは「第一回星新一ショートショートコンテスト」に入選して作家デビューした方ですので、その意味では本作品こそが藤井青銅さんのルーツに近い作品なのかも知れません。

各回の概要

本作品の各回(各話)の主演俳優、格付け、粗筋、一言を紹介しますと下表のとおりです。
基本的に1回(15分)1話で構成されています。
出演者は、大高洋夫さん、小須田康人さん、山西惇さん、千紘あいさん、前田悠衣さん、三矢直生さんの6人であり、下表のとおり持ち回りで各回の主役を演じています。
よく見ると前田悠衣さんだけ主演作がありませんが、準主役級の作品はいくつもあります。

◆第1話 「恐怖の駅前商店街」

主演 : 小須田康人
格付 : B+
粗筋 : 医師が過剰に増えた日本では、医師達が差別化を図りサービス合戦を繰り広げていた!
一言 : 一種のディストピアもの。過剰なサービス内容にはちょっと笑えた。オチも悪くはない。

◆第2話 「ヨセ・オブ・ドリームス」

主演 : 山西惇
格付 : B+
粗筋 : 「それを作れば彼はやってくる」。雑草だらけのアパート予定地で男はその声を聞いた。
一言 : ケビン・コスナー主演の「フィールド・オブ・ドリームス」(1989年)のパロディ。

◆第3話 「南関東大地震」

主演 : 三矢直生
格付 : B
粗筋 : 南関東大学が突然、急激な多角化に乗り出した。人呼んで「南関東大・地震」。
一言 : 産学連携が当たり前の昨今では、さほど突飛な内容ではなくなってしまった。

◆第4話 「メンデレビウム・カード」

主演 : 大高洋夫
格付 : B
粗筋 : 友人が得意気にひけらかす特典に心奪われた男はゴールドカードの取得に向かうが…
一言 : 笑いというよりブラックな結末の作品。メンデレビウムは原子番号101番の元素。

◆第5話 「ゲンゴ十番勝負」

主演 : 小須田康人
格付 : B
粗筋 : 廃墟と化して正しい日本語も失われた大東京シティ。聖典「コク・ゴジテン」はどこに?
一言 : これもディストピアもの。失われた「アホ」という言葉の意味を探す話。

◆第6話 「ドラマチックな恋」

主演 : 小須田康人
格付 : B+
粗筋 : 相手に関する希望は聞かないがドラマチックな出逢いを演出するという結婚相談所。
一言 : OMGMC、大高さんがマスター、熱海は貫一お宮など小ネタ多し。オチは読める。

◆第7話 「清き一票」

主演 : 大高洋夫
格付 : B-
粗筋 : 選挙は国民の娯楽!選挙期間を延ばそう!そう考えた官僚たちだが…
一言 : 贈賄を富の再分配方策にするのは画期的な方法ではある。

◆第8話 「借りもの競走」

主演 : 小須田康人
格付 : B-
粗筋 : 所有から利用へ。世の中のあらゆるものはレンタルで済む時代がやってきた。
一言 : 序盤からひたすら続く駄洒落は何なのだろうと思ったら、一応オチにつながっていた。

◆第9話 「パパのガイガー」

主演 : 大高洋夫
格付 : C
粗筋 : 何が放射線を発しているかわからない。ガイガーカウンターを買ってきた父親だが。
一言 : この作品は東日本大震災(福島原発事故)前の作品です。

原作本との関係

なお、原作本は一旦、絶版になった後に、2013年に「笑う20世紀 赤」、「笑う20世紀 黄」、「笑う20世紀 青」の3つに分けてamazonのKindle版で復刊されました。
その際、「笑う20世紀 紫」、「笑う20世紀 ピンク」、「笑う20世紀 緑」の3集が追加されていますが、これらは様々な媒体に藤井さんが書いていた短編を集めたもののようです。
そのため、同じ続編でも、青春アドベンチャー版のパート2以降の内容と、この「紫」、「ピンク」、「緑」の内容は直接の対応関係はないようです。

【藤井青銅原作・脚本・脚色の他の作品】
青春アドベンチャーの長い歴史において、最も多くの脚本と最も多くの笑いを提供しているのが脚本家・藤井青銅さんです。こちらに藤井青銅さん関連作の一覧を作成していますので、是非、ご覧ください。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。



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