ラバウルの秘宝 原作:中津文彦(アドベンチャーロード)

格付:A
  • 作品 : ラバウルの秘宝
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : A
  • 分類 : サスペンス
  • 初出 : 1990年2月19日~3月2日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 中津文彦
  • 脚色 : 久保田圭司
  • 音楽 : 天上昇
  • 演出 : 上野友夫
  • 主演 : 小川真司

新進気鋭の推理作家、中小路信(なかこうじ・しん)は山岳部でザイルパートナーだった吉竹治男から、戦前、ラバウルで財を成した日系人が隠した財宝の謎解きを依頼される。
吉竹がニューギニアに左遷され腐っていることを知っていた中小路は、前向きな活動をはじめた吉竹の姿が嬉しく、いちもにもなく応諾。
山岳部の後輩、伊勢崎がツアコンを務める5泊6日のラバウルツアーに参加し、ラバウルを訪れるのだが…
そこで待っていたのが、財宝探しだけではなく、ある殺人事件だった。



アドベンチャーロード」は1985年4月から1990年3月までNHK-FMで放送されていたラジオドラマ番組で、現在放送中の「青春アドベンチャー」の前々番組です。

上野友夫演出作品

時代的には昭和末期から平成初期頃の番組なのですが、その中でも上野友夫さんの演出した作品群は、天上昇さんの音楽、菩提樹さんの歌、そして広川太一郎さん・羽佐間道夫さんの多用などにより独特の「昭和っぽさ」が濃厚でした。
その一番の代表作は、AM時代の「連続ラジオ小説」から引き続き広川太一郎さんを明智小五郎に起用し大長編となった少年探偵団シリーズであり、これはアドベンチャーロード時代のひとつの象徴と言っても良いシリーズだったと思います。

コテコテだけど

このブログでも当然、上野友夫さん演出作品を多数紹介してきたのですが(ドールズ~闇から来た少女帝都誘拐団)、正直、高い格付けを付けた作品は少数です。
というのも、いくら何でも演出がコテコテすぎるというか、この時代にしてさえ少し古いというか…
上野さん演出の「モヒカン族の最後」なんて、後に洋画で映画化された(1992年「ラスト・オブ・モヒカン」)ときに同じ原作だと気が付かなかったくらいですから。
ただ本作品に関してはその通俗的内容が昭和風の演出にマッチして意外と良作になっています。

前半サスペンス、後半ミステリー

その内容ですが、サスペンスとミステリーの中間くらい。
双方の要素をいいとこどりをしていると感じました。
前半は主人公・中小路の過去にかかわる人間関係や太平洋戦争中のラバウルでの出来事を背景に、宝探しの要素が強いサスペンス調の出来。
そして後半は殺人事件が起こりミステリー風の作品になるのですが、両者が無理なく融合しています。
5泊6日のニューギニアツアーでツアコン含め旅行者が全部で7名という舞台設定が物語をコンパクトで締まった構成にしていると感じますし、旅行先がラバウルというのも戦争を絡ませるにはうってつけ。

でも結局大衆小説風

…と書くと結構なハードボイルド作品を想像されるかもしれませんが、上野演出と歌謡曲風のテーマ曲の影響もありあくまで大衆小説風。
結末はあっさりしていますし、結局、昔の彼女絡みの湿っぽいものであることも親父の読みそうな大衆小説っぽい感じ(原作はもっと濡れ場とかあるのかな)ですし、特に深いテーマ性も感じません。
でもまあ、もともとアドベンチャーロードはエンタメドラマ枠なのでこれもありでしょう。

主な出演者は小川真司さん(中小路信)、おやま克博さん(伊勢崎省吾)、松阪隆子さん(小峰遙子)、青砥洋さん(吉竹治男)、そしてナレーターの羽佐間道夫さんといったところ。
出演者の面でもいかにも上野友夫さん演出作品らしい作品です。

アドベンチャーロード最終作

なお、この「ラバウルの秘宝」はアドベンチャーロードで放送された最後の新作でした(本作品放送後「空色勾玉」、「ブルータスは死なず」が再放送された後に番組終了)。
今の「青春アドベンチャー」と比較すると、「アドベンチャーロード」は比較的ハード寄りで、男性向けの作品が多い番組でしたが、終盤には(今でいう)ライトノベル原作の作品(例:妖精作戦)や少女小説原作の作品(例:少女探偵に明日はない)なども増えてきて徐々に雰囲気は変わりつつありました。
後番組の「サウンド夢工房」で大きく若年層や女性層向けに舵を取り、その後「青春アドベンチャー」でやや揺り戻しがあったものの、全般的には多様でやや柔らかい方向へ番組はシフトしていく訳であり、旧時代の代表的な雰囲気をまとっている本作品でアドベンチャーロードが終了したのもその時代の変わり目の一つの象徴だったのかもしれません。


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日本のミステリー界の登竜門である江戸川乱歩賞。
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