ブルータスは死なず 原作:三浦浩(アドベンチャーロード)

格付:AA
  • 作品 : ブルータスは死なず
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : AA
  • 分類 : サスペンス
  • 初出 : 1989年7月24日~7月28日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 三浦浩
  • 脚色 : 関功
  • 演出 : 笹原紀昭
  • 主演 : 渥美国泰

私、アメリカ合衆国上院議員であるジョージ・マキタは、ある日、上院の地下駐車場で同僚の上院議員リチャード・オコンネルから呼び止められた。
オコンネルは次期大統領選挙に出馬が噂されている有力議員だ。
彼は言う。
「私のランニングパートナーになって欲しい。はっきり言おう。私が大統領で君が副大統領だ。私と一緒にナショナルチケットを買わないか?」
彼は、この日系人ジョージ・マキタに副大統領候補になって欲しいというのか。
初めて上院議員になったときに感じた戦慄が、再び私の身体を駆け抜けた。
自分は副大統領になっても、いやそれ以上になってもおかしくない人間なのだ。
そう、合衆国の歴史には副大統領から大統領になった人間も大勢いるのだから…



本作品の原作小説「ブルータスは死なず」を書かれた三浦浩さんは、産経新聞の文化部の元記者(当時の文化部長は司馬遼太郎さん)で、文化面編集部長、論説委員などを歴任された方です。
記者時代には休職してアメリカとイギリスに留学もされています。

ポリティカルサスペンス

小説「ブルータスは死なず」は、1985年に三浦さんが産経新聞を定年退職(当時は55歳が定年だったんだな~)されてから3年後の1988年12月に出版されており、アメリカ留学経験のある元新聞記者が書いた小説らしい、アメリカ大統領選に絡んだ上質なポリティカル・サスペンス作品です。
この記事で紹介するラジオドラマ版「ブルータスは死なず」も、大人向けの渋い作品が比較的多かった「アドベンチャーロード」の中でも数少ない、これぞサスペンスという作品です。

1992年の意味

さて、本作品の舞台は、作品発表時からみると近未来である1992年。
現実には存在したことのない日系の副大統領候補という設定にリアリティを出すために近未来に設定したのだと思いますが、実はそれだけではありません。
この1992年時点でマキタは52歳という設定。
実はこの「1992年時点で52歳」というのは物語上、重要な意味があるのです。
ヒントはアメリカ合衆国憲法第2章第1条第5項なのですが、これは重大なネタバレなので、あまり参照されることはお勧めしません。

老年アドベンチャー

何はともあれ、52歳の初老の人物を主人公に据え、演じる渥美国泰さんも当時56歳。
妻リアンヌを演じる柳川慶子さんが53歳、ディックことオコンネル上院議員を演じる小松方正さんも63歳と、他の方々もかなり高年齢。
現在の「青春アドベンチャー」では考えられないほど渋いキャスティングです。

意外とアニメ声優多し

ただ本作品の面白いところはそれだけではなく、日本人側のキャラクターは意外とミーハーなアニメ声優がキャスティングされていること。
マキタを脅迫?する雑誌記者・河北誠役は「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイや「巨人の星」の星飛雄馬で有名な古谷徹さんですし、ヒロインの坂上田鶴子を演じるのは「風の谷のナウシカ」のナウシカ「めぞん一刻」の音無響子「ルパン三世カリオストロの城」のクラリスで有名な島本須美さん。
古谷さんは後番組の「ネムコとポトトと白い子馬」で芸達者なところを見せて頂いているのですが、おふたりとも後年になるとナレーション(古谷さんでいうと「イカロスの誕生日」、島本さんでいうと「小惑星美術館」)を担当されることが多くなるので、ちゃんと役で演技しているのは貴重です。
ちなみに、原作ではマキタと田鶴子の(かなりソフトでイメージだけではありますが)ムフフなシーンもあって、是非島本さんの声で聞きたかったところではありますが、残念ながら尺の都合か、本ラジオドラマではほとんど省略されています。

わかりづらい結末

さて、内容からは随分と脱線してしまっているのですが、その理由としては本ラジオドラマが全5回しかない短い作品であり、少しでもストーリーを紹介するとネタバレになってしまうことがあります。
実は本作品、短いが故に、様々な要素がたたみきれず、しかも終盤に現実と妄想がはっきりしない部分があるため、最初に聞いたときは、ややわかりづらい結末と感じました。
この点については、後年、原作小説を読んでみたところ、あまり深読みせずそのまま捉えれば良いとわかったのですが、この辺の説明をするといずれもネタバレに直結します。
そのためストーリーにはほとんど触れないことをご了承ください。

コンパクトにまとまった脚本

ちなみに原作を読んでの感想としては、やや短めとは言え、単行本一冊分の大人向きの小説をよく15分×5回の枠に収めたものだな、というものです。
確かに多くの要素を削りすぎて説明不足の点が多く、そのためもともと原作のストーリーがもっていた結末の尻切れトンボ感が強調されてしまった嫌いはありますが、それでも全体として原作のストーリーを破綻せずに収めています。
脚色の関功(あっ「イサオ」だ!)さんは、同じ演出の笹原紀昭さんと組んだ「皇帝の密使」や「幽霊海戦」もなかなかの出来でしたが、本作も上手い脚本だと思います。

アドベンチャーロード末期の良作

なお、この作品は1990年3月に再放送されているのですが、この再放送が、5年間続いたアドベンチャーロードの最終放送となりました(新作として最終作品は同年2月の「ラバウルの秘宝」)。
この後、特番の「続・西遊妖猿伝」をはさんで、4月からは新番組「サウンド夢工房」(第1作は「学問ノススメ-挫折編」)が始まりました。

【笹原紀昭演出の他の作品】
アドベンチャーロード期を中心に多くの傑作アクション作品を演出された笹原紀昭さん。
演出作品はこちらに一覧を作っています。

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