ハートでジャンプ! 原作:岬兄悟(アドベンチャーロード)

格付:B
  • 作品 : ハートでジャンプ!
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : B+
  • 分類 : スラップスティック
  • 初出 : 1988年7月18日~7月22日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 岬兄悟
  • 脚色 : 吉村ゆう
  • 演出 : 保科義久
  • 主演 : 鶴見辰吾

壁の薄いアパートに耐えかねてようやく見つけた優良物件。
駅から5分・3DKで家賃4万円!
…でもこれって優良すぎ?むしろ怪しいのでは?
実際、弟分の浪人生・高志が言うには、建物がぼんやりとソフトフォーカスがかかったように見えるとか、奇っ怪な老人が出現したとか、ピンク色の服を着た少女の幽霊が出たとか…怪しさ満点。
でも4万には勝てない。俺にはそんなものは見えないしな。
しかしさすがの俺も想像しなかった。この引越が次元を超えた大旅行、すなわち怪奇とSFとシルクロードとスペースオペラとミステリーゾーンを一緒くたにした大冒険へのきっかけになろうとは!



本作品「ハートでジャンプ!」はSF作家・岬兄悟さんによる同名のライトノベルSF小説を原作とするラジオドラマで、1988年に「青春アドベンチャー」の前身番組のひとつである「アドベンチャーロード」で放送されました。

今でいうラノベ作家

岬兄悟さんは、同じくアドベンチャーロードで「スターライト・だんでい」がラジオドラマ化された火浦功さんなどと並んで、1980年代にライトSFで人気を得た方で、同じSF作家である大原まり子さん(「タイム・リーパー」)の夫でもあります。
本作品も極めて軽いテイストの作品で、「少女探偵に明日はない」などとともに、前番組「FMアドベンチャー」のハード路線からの変革期である1988年を代表する作品のひとつです。

主人公が陽キャなのが80年代的

なにせ主人公が、4流私大・大和大学2年生の長渕修と、その大和大学にすら入れない浪人生・宇地木高志のおバカコンビ。
?…「長渕」と「うじき」?…まあ気にしないことにしましょう。
それはともかく、行き当たりばったりに引越しした先が、次元航行船「ラブリー花丸号」と癒合した状態にあったのが運の尽き。
冒険好きのお騒がせジジイ・花丸老人と、巻き込まれた被害者なのに健気な幽霊・愛ちゃんたちとともに次元を旅するわけですが、ラブリー花丸号は基本的に行き先をスロットマシーンでしか決められないため、行き当たりばったりで旅するしかないわけです。

展開はあっさり

そもそも本作品、全5回しかないわけで、「銀河鉄道999」のように行き先ごとに重厚なストーリーが展開できるはずもなく、旅立って、いくつかの旅先が簡単に描かれただけでもう結末へと一直線。
あまりにも安直すぎる!…と当時は思っていたのですが、改めて聞いてみるとあまりにライトすぎて意外と悪くない。
バカコンビに悪意や嫌みがないのがいいのかな。
槐柳二さん(「天才バカボン」の「レレレのおじさん」ですよ!)が演じる素っ頓狂な老人も、あまり嫌らしさはなく、終盤の気遣いなどはむしろ好印象。
ただ愛ちゃんの希望も聞いてあげたらいいのに…とは思いました。
ラジオドラマオリジナル設定の老人でしたが「妖精作戦」の田の中勇さんといい、昔の超ベテラン声優の力はさすがですね。
なお、ベテランと言えば本作品には納谷悟朗さんも出演されています。

鶴見辰吾さん、コメディもいける

さて、本作品で主役の長渕修を演じているのは俳優の鶴見辰吾さん。
1979年に「3年B組金八先生」の第1シリーズで、生徒たちの中では主役格とも言える役を演じて注目を浴び、以降、多くの大映ドラマや「飛んだカップル」などの青春ものの映画で主演を務めました。
その後演技の幅を広げ、やくざ物の悪役やリアリティのある中高年役を演じられる役者として大成しており、2010年には青春アドベンチャー「マナカナの大阪LOVERS」に主要キャストとして凱旋出演?されています。
最近ではロードバイクファンとしても有名ですね。
1988年といえば鶴見さんが20代半ばの時期であり、この後、この人は俳優としてのキャリアを模索しながら成長していったんだなあと思いながら聞くと感慨深いものがあります。
ちなみにアドベンチャーロードにおける本作品のひとつ前の作品が「幽霊海戦」なのですが、そちらの主演は風見慎吾(現「風見しんご」)さん。
偶然でしょうが、妙に似たお名前の役者さんの主演作品が続いたことになります。

スタッフ紹介

最後に本作品のスタッフについて少しだけ紹介すると脚色が吉村ゆうさんで、演出が保科義久さん。
保科さんはアドベンチャーロード期から青春アドベンチャー初期に掛けて冒険ものの良作を数多く手がけられました。
一方の吉村ゆうさんはアドベンチャーロードで本作品と「怪事件が多すぎる」を担当されたほか、青春アドベンチャーで「魔女たちのたそがれ」を脚色されています。
そして本記事アップの約1カ月前の2021年4月に青春アドベンチャーでは初のオリジナル長編「嘘か真か」を担当されています。
いずれも軽めの雰囲気の作品ですが、この長い活動期間を考えると、一体いくつの方なんだろう?と考えてしまいます(ちなみに現在、日本放送作家協会の理事らしい)。

【保科義久演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。




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