87分署のキャレラ 原作:直井明(カフェテラスのふたり)

格付:B
  • 作品 : 87分署のキャレラ
  • 番組 : カフェテラスのふたり
  • 格付 : B
  • 分類 : エッセイ
  • 初出 : 1985年9月9日~9月13日
  • 回数 : 全5回(各回10分)
  • 原作 : 直井明
  • 脚色 : 小水ガイラ
  • 演出 : (不明)
  • 主演 : 蔵一彦、田島玲子

朝っぱらに電話をかけてきたのは別れた女房。
清々しいくらい一方的に、いつものカフェテリアに呼び出した彼女が要望してきたのは、私の大好きな87分署とスティーヴ・キャレラの話をしてくれというものだった。
彼女が編集する雑誌で「都会を愛するハードな男のこだわりの世界」という特集記事を掲載するらしい。つまりは取材だ。
「鼻持ちならないうんちく野郎のお知恵を拝借」などと言われ何だか癪だが仕方がない。
スティーヴ・キャレラの名前を出されて私が黙っていられるはずがないのだから。



本作品「87分署のキャレラ」は海外ミステリー研究家の直井明さんの著作「87分署のキャレラ-エド・マクベインの世界」を原作とするラジオドラマ?です。

研究本を原作とするラジオドラマ

ただ、原作本とされている上記の書籍は、エド・マクベインの警察小説シリーズ、いわゆる「87分署シリーズ」に関する研究本です。
つまり、この「カフェテラスのふたり」版「87分署のキャレラ」は、研究本を原作とする特異な作品なのです。
ちなみに、原作本は、脚注(原著からの出典又は短い説明)と、補注(雑談・派生的な説明を行い各章の末尾に掲載)の2つにわかれた膨大な注が付いた、単行本で286ページの大作です。
また、原作本のあとがきによれば、この原作本は「世界で最初の87分署シリーズに関する単行本」であり、また、Wikipwdiaによれば直井さんは後年マクベイン自身が「過去の自作についての情報」を直井さんに聞くほどの87分署通だったとのことです。
つまり、一応、本ブログでの分類は「エッセイ」にしていますが原作本はそれほど気楽な書籍ではなく、かなり本格的かつ執拗な分析本です。

かなり大胆な構成変更

そして面白いのは、ラジオで放送されたこの作品が、原作たる研究本を何だか妙なドラマ風に作り替えていること。
冒頭の粗筋のとおり、原作の研究本には登場しない探偵と雑誌編集者の元夫婦が登場し、元妻が元夫に取材をしているという体をとりながら87分署の世界を紹介していく構成になっています。
ちなみに原作者の直井さんは、(会社名は不明ですが)商社にお勤めで、原作本出版時点(1984年)ではヒューストン支店長だったそうですので、本ドラマの主人公「ウンチクおじさん」の設定は直井さんご自身をモデルにしているのではなさそうです。

一見おしゃれだけど…

とにかくこの案内役のふたりを通してスティーヴ・キャレラの人物像や、作中のセリフ、出来事などが語られていきます。
ただ、「カフェテラスのふたり」は10分番組であり、本作品は全5回の短編なので、原典について紹介できる内容は限定的。
原作と比較すると「作品分析」の面では相当中途半端なものになっています。
一方、上記の紹介役ふたりのドラマも何とも言えない内容で、一応「大人の男女のおしゃれな会話」っぽくなっていはするのですが、よく聞いていると注文する肴が焼き鳥だったり、例えが冷やし中華だったり、バックにムード歌謡が流れていたりで、ニューヨークが舞台の作品を紹介している割には純ジャパな雰囲気。
しかも最終的にはふたりとも酩酊状態になるなど、ある意味何とも独創的な展開でした。

脚本家の色?

なお本作品の脚本を書かれたのは小水ガイラという方。
確証はありませんが、昭和40年代の日活ロマンポルノの代表作家のひとりであり、後年、ビートたけしさんプロデュースの映画「ほしをつぐもの」で脚本・監督を務めることになる小水一男さんなのかも知れません(小水さんのあだ名が「ガイラ」だったため)。
そう考えるとこの大胆な(ほとんど脚色のレベルを超えています)脚色も納得です。

各回の内容紹介

さて、各回の内容を紹介すると以下のとおりです。

第1回:(導入部)
87分署シリーズとスティーヴ・キャレラに関する基本的な事項の紹介。
87分署シリーズがあらゆる警察ドラマの基本となっていることなどを説明。

第2回:スティーヴ・キャレラの嗜好と妻テディについて
耳が聞こえず口もきけないが美人の妻テディについて。
主役ふたり(探偵と編集者)の結婚に絡むある秘密についても。

第3回:スティーヴ・キャレラと女性たちについて
妻テディに一途なキャレラだが、主人公なので他の女性ともいろいろある、という話。

第4回・第5回:スティーヴ・キャレラ肉体の危機
87分署シリーズの「マスター・クリミナル」L・ソルドとの戦いなど、刑事ドラマなら当然登場するアクション(拷問?)シーンの解説。
個人的には主役ふたりが、へべれけになっていく様子も気になった…

ちなみに原作の各章タイトルは以下のとおりです。

  1. 出会い<死んだ耳の男>
  2. ステファーノ・ルイジの親族たち
  3. 少年時代以降
  4. スティーヴ・キャレラと女性たち
  5. スティーヴ・キャレラの嗜好
  6. スティーヴ・キャレラと映画
  7. ある男からの告発

変わり種作品のご紹介

さて、さすがに本作品のように研究本を原作とする作品はレアですが、「ふたりの部屋」、「カフェテラスのふたり」はエッセイ的な作品の多い番組でした。
今まで当ブログで紹介した作品としては、「『日本の川を旅する』からカヌー野郎のロンリーツアー」、「スペインから」、「伸坊の哲学的」、「ザ・素ちゃんズ・ワールド-”ひでおと素子の愛の交換日記”から」、「韓国・鉄道・グルメの旅」、「遊佐未森のひなたVOX」があります。
現在放送中の「青春アドベンチャー」でもノンフェクションを基にドラマ仕立てにしてしまった「垂直の記憶」のような作品もあります。
今後も是非、さまざまな種類の作品にチャレンジして頂きたいものです。

本当の87分署シリーズはこちら

なお、本作品の約1年前、当時「カフェテラスのふたり」と並行して放送されていたもうひとつのラジオドラマ番組「FMアドベンチャー」にて87分署シリーズの第1作「警官嫌い」が放送されました。
こちらは普通のラジオドラマで、スティーヴ・キャレラは山口崇さんが演じています。



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