- 作品 : 幽霊海戦
- 番組 : アドベンチャーロード
- 格付 : AA
- 分類 : 冒険(山岳海洋)
- 初出 : 1988年7月4日~7月15日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 田中光二
- 脚色 : 関功
- 演出 : 笹原紀昭
- 主演 : 風見慎吾
トラック環礁でダイビングショップを営む日系人アキラ・セリザワはある日、驚くべき発見をする。
近くの海に沈没していた旧日本海軍の潜水艦を発見したのだ。
第ニ次大戦中の沈没艦船は全て登録されているはずであり、未発見の沈没潜水艦を見つけられれば大スクープだ。
しかし、テレビクルーとともに再度その地点に潜ったアキラはそこから潜水艦がなくなっていることを知り再び驚く。
そして海上に戻ったアキラ達を襲う、突然の嵐と不審な霧。
漂流を始めたアキラ達の前に、やがてディーゼルエンジンの音とともに第ニ次大戦中に撃沈されたはずの旧日本海軍の潜水艦イ20が姿を現した…
青春アドベンチャーの前々番組であるアドベンチャーロード時代に放送された田中光二さん原作のラジオドラマです(番組の歴史についてはこちら)。
田中さんは「血と黄金」など、FMアドベンチャー・アドベンチャーロード時代に複数の作品が原作として取り上げられています。
詳しくはこちらの記事をご参照下さい。
イ20を追え!
さて、本作は上記の作品紹介のとおり第二次大戦中の旧日本海軍の潜水艦がよみがえる話です。
作品タイトル自体がネタバレみたいなものなので、本記事も多少ネタバレになってしまうのを覚悟の上で書きますが、潜水艦イ20の復活に科学的、SF的な説明はなく、このブログの分類ではどちらかというと幻想系に分類することも考えられる作品です(本ブログのジャンル分類はこちら)。
深く静かに潜航せよ
しかし、本作の魅力は何といっても、青春アドベンチャー系の作品では恐らく本作だけと言って良い本格的な潜水艦と駆逐艦の戦闘シーン!(厳密には「シュレミールと小さな潜水艦」にも同様のシーンがありますが僅かです)
イ20の高取忠馬(ちゅうま)艦長が発する号令も、本当にこのような号令だったのかは私には知るべくもありませんが、ムードはたっぷりです。
近代兵器が登場する作品
アドベンチャーロード期には大人向けの硬派な作品が多く小銃程度の火器が出てくることは珍しくなかったのですが、艦船や航空機といった近代兵器を本格的に扱った作品はさすがに少なかったと思います。
本作の他にすぐに思いつくのは「ドラゴン・ジェット・ファイター」くらいでしょうか。
その希少性から、超常現象などの細かいことは置いておいて冒険系に分類しました。
ちなみに、本作品における戦闘は潜水艦側が旧日本海軍の巡潜乙型(モデルはイ19と推定)、駆逐艦側が現代アメリカ合衆国のスプルーアンス級ですので、本当はかなりの性能差があるはずです。
それが戦闘として成立するのはやはり超常現象あっての話ではあります。
軍人対軍人の戦い
ところで、本作品、主人公がわかりづらい作品です。
一応、風見慎吾さんが演じるアキラが主人公だと思うのですが、プロの軍人同士の戦闘に素人が首を突っ込めるはずもありません。
作品中でアキラも自衛隊の護衛艦に乗り込んでイ20を追うのですが、中盤以降は非常に影が薄くなります。
挙げ句の果てにはアキラ自身から「無駄だったわけだ」などという台詞が出る始末です。
これに併せて大場久美子さんが演じるヒロインも同様に途中から影が薄くなってしまいます。
ミーハーな配役は昔から
それにしてもこの風見慎吾さんと大場久美子さんの組み合わせ、おふたりとも放送当時はアイドルに近い位置づけであったはずです。
もちろん演技に不満があるわけではありませんが、若年層を狙ったかなりミーハーな配役です。
青春アドベンチャー系の番組の出演者はかなり多彩で、最近でも結構、アイドル的な方を採用することもありますが、本作などを見るとこれは昔からの傾向のようです(出演者の傾向についてはこちらの記事をご参照下さい)。
主人公の話に戻りますと、中盤以降は、恐るべき痴呆老人・高取忠馬(演:森塚敏さん)や、その息子で護衛艦ゆきかぜの高取誠悟艦長(演:永井一郎さん)などがアキラ以上に活躍するのですが、そうは言っても主人公とはちょっと違う立ち位置。
やはりアキラが主人公ということで良いのでしょう。
笹原紀昭さんの名作のひとつ
本作の演出は笹原紀昭さん。
主にアドベンチャーロード期に演出を担当されていた方で、名作「A-10奪還チーム出動せよ」を始めとして、「脱獄山脈」「摩天楼の身代金」「遠い海から来たCOO」「空色勾玉」などの良作がたくさんあります。
エンターテイメント性の高い冒険小説を、きっちりとラジオドラマにきっちり仕上げられる方だったという印象です。
【笹原紀昭演出の他の作品】
アドベンチャーロード期を中心に多くの傑作アクション作品を演出された笹原紀昭さん。
演出作品はこちらに一覧を作っています。
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