今年の梅は 作:伊佐治弥生(FMシアター)
世の中には“便利屋”という仕事に不信感を持つ人間もいる。
確かに家庭内の仕事を手伝うという性格上、その家庭のナイーブな側面に触れざるを得ない面はある。
ましてお客が老人の場合、なぜ他人である便利屋に頼むのか、老人の弱みに付け込んで金をとっているのではないかと、依頼人の家族に思われることもある。
しかし、それにしても突然現れた倫子さんの大学生だという孫の言い方は失礼過ぎる。
これまで倫子さんとは適当な距離を保ち楽しくやってきたのだ。
それに私にだって事情はある。
女ひとりで便利屋を切り盛りすることはそんなに楽なことではないのだ。