ウブヒメ 作:今城文恵(青春アドベンチャー)

格付:AA
  • 作品 : ウブヒメ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA-
  • 分類 : 伝奇(日本)
  • 初出 : 2022年2月21日~3月4日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 今城文恵
  • 音楽 : 関向弥生
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 田村芽実

元禄9年8月。
お江戸・浅草の裏長屋に住む5人の男女が、竹藪のあばら家に集まっていた。
浪人の天野新右衛門、猿回しの音兵衛役、町奴(侠客)の権太、そしてやたらと目力のある武女(むめ)という少女。
彼らが目論むのは権力者、柳沢出羽守保明の屋敷の焼き討ち。
罪のない町人たちが磔や追放の憂き目にあう徳川綱吉の世を一刻も早く終焉させるのだ。
由井正雪すらなし得なかった大事を目論む彼らにはある切り札があった。
それこそが武女の持つ“産火(ウブヒ)”の力。
正しい人間である自分が、悪いものを灰にするための力。
私が火をつけてやる。



本作品「ウブヒメ」は演劇ユニット活動をしている「浮世企画」代表の演出家・脚本家、今城文恵さんオリジナル脚本による青春アドベンチャー2作品目の作品です。

前作と異なり舞台は江戸時代

現代が舞台だった1作目「イッツ・ア・ビューティフルワールド」と異なり本作品の舞台は江戸時代・元禄期。
今城さんのnote(外部サイト)によれば時代劇でやりたいというのは今城さんご自身の希望だったとのこと。
ただ、ゾンビが人間と共存?している不思議な世界観だった前作同様、本作品も単なる時代劇ではなく、主人公の少女は“産火”という一種の超能力(発火能力)を持つ少女と設定されています。

冒険・アクションではない

「江戸時代+超能力+オリジナル脚本」というと、青春アドベンチャーでは小林克彰さん脚本の「エド魔女奇譚」を思い出します。
「エド魔女奇譚」と本作品「ウブヒメ」を比較すると、前者が正統的な冒険ものでアクション色が強かったのに対し、後者は作中におけるストーリー展開に動きが少ないのが特徴。
そういえば「イッツ・ア・ビューティフルワールド」も一種の“ゾンビもの”である割に実に淡々と進行する作品であり、毒親的な存在が登場することを含め、本作品とよく似ています。
幕府転覆の陰謀、という言葉から想像されるよりは相当地味な展開に終始し、終盤、一応のアクションシーンはあるものの、結局ボヤひとつで終了します(火事の規模という点では「火喰鳥」の足元にも及ばない)。
プライベートな事情が世界の運命に直結する最近流行りのセカイ系とは一線を画する小劇場的な展開です。

表面上は小さな事件

ただそれがつまらなかったという一言で終わらないのが本作品の奥深いところ。
徐々に印象が変わっていく新兵衛のドロドロした思い(鬱屈した男をやらせたら渡辺いっけいさんうまいなあ)や、いくつもの思いに引き裂かれる武女の苦悩などが聞きどころだと思います。
ホント、この4人+おりつにも幸せなひと時は確かにあったんだよなあ…
また、小さな事件と書きましたが最後にちょっとした種明かしというか黒幕明かしがあるのも悪い印象ではありません。
このエピローグは、あくまで爽やかながら陰影のある人物像の柳沢保明を演じた成河さんがいてこそだと思います。

主演は田村芽実さん

さて、本作品の主役、武女を演じるのは、ハロー!プロジェクトのアイドルグループ・アンジュルムの元メンバー田村芽実さん。
さすが元アイドル、公式ホームページの写真が異常に若く(幼く?)見えますが、これで23歳。
既に多くの舞台やミュージカルに、主演含め多くの出演経験のある女優さんでもあり、NHK-FMのオーディオドラマでは本作品の前年の2021年FMシアター「黄昏ペンライト」に出演経験があります。

成河さんの柳沢吉保

そして、この年若い“座長”を支えるのが、青春アドベンチャーの新・旧常連出演者である成河さんと渡辺いっけいさんのおふたり。
まず成河(ソンハ)さんといえば、2014年から2016年まで6作品続いた「白狐魔記」シリーズのほか、「武揚伝」(2018年)、「ソラのスケッチブック」(2021年)など近年、主演作がずらり。
個人的には“やることなるなすことすべてが裏目”の榎本武揚をやるせなく演じた「武揚伝」が一番印象的です。
本作品では「武揚伝」に続いて実在の歴史上の人物である柳沢保明(=吉保)を演じています。

90年代の常連・渡辺いっけいさん

そしてそして…
本作品を語る上で忘れてならないのは何といっても新右衛門を演じている渡辺いっけいさんでしょう。
青春アドベンチャーがスタートした1990年代の常連出演者で、「悲しみの時計少女」(←厳密には前番組のサウンド夢工房が初出)、「北壁の死闘」、「サンタクロースが歌ってくれた」、「くたばれ!ビジネスボーグ」など懐かしい作品がいっぱいです。

30周年記念?

その後、TVドラマにも多数出演され有名な俳優になった渡辺いっけいさんですが、青春アドベンチャーには2019年のオムニバス「僕たちはもう帰りたい」の出演されたくらいで、長編のレギュラーとしては長らく出演されていませんでした。
丁度、番組が30周年を迎える直前に渡辺いっけいさんの起用って、これ制作陣、狙っているのかな?と思っていたら…書いてあるじゃないですか、公式HPに(外部サイト)。
本当に意識していたんだ、30年。
ご自身の青春と絡めた渡辺いっけいさんのメッセージを読んで、「青春アドベンチャーって番組自体が渡辺さんの青春でもあったんだな。」と思うと、なんかもうちょっとうるっとしていまい、格付けをあげてしまいました…

その他の出演者

その他、石田圭祐さん(音兵衛役)、久留飛雄己さん(権太役)、仙名彩世さん(元宝塚トップ娘役、おりつ役)、市川しんぺーさん(徳川綱吉役)、谷田歩さん(多賀朝湖役)、鬼頭典子さん(明の妻・定子役)、木下祐子さん(猿の万寿=ナレーション)などが主な配役です。


【30周年記念全作品アンケート】
2022年に当ブログが独自に実施した青春アドベンチャー30周年記念・全466作品アンケートの出演者編において、本作品に出演している渡辺いっけいさんが13票を獲得し1位になりました。
リスナーの感想等の詳細はこちらをご覧ください。



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