- 作品 : 土方さん、さようなら
- 番組 : FMシアター
- 格付 : AA-
- 分類 : スラップスティック
- 初出 : 2021年5月29日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 神宿つばき
- 演出 : 門脇陸
- 主演 : 塚本奈緒美
まともな仕事がない。労働条件も悪い。税金が高い割に公務員の給料も低い。
行政サービスも悪いからみんな街を出て行きどんどん人口は減るばかり。
市民満足度最悪レベルの街、それがこの函館市。
そんな函館に起死回生の観光資源が現れた。
150年前、戊辰戦争・箱館五稜郭の戦いで戦死した、あの新選組「鬼の副長」土方歳三、幕末きってのイケメン剣士が幽霊として蘇ったのだ。
市役所観光課の女性職員・三原は市長の特命を受け、土方に箱館の客寄せパンダになってもらうべく交渉を始める。
確かに函館は土方終焉の地だが、ふるさとの東京や新選組のいた京都に奪われる可能性もあるのだ。
しかし土方にだって土方なりの目的もある。
何とか幽霊・土方と街の妥協点を見出す方法を考えなくてはいけない。
本作品「土方さん、さようなら」は、日本脚本家連盟北海道支部が主催した第16回北のシナリオ大賞を受賞した神宿つばきさんの脚本をオーディオドラマ化した作品です。
まじめな町おこしもの…?
冒頭の粗筋からすると「ロズウェルなんか知らない」(青春アドベンチャー・2008年)のような町おこしものを想像されるかもしれません。
確かにそういった側面もあるのですが、何せネタが土方の幽霊化というファンタジーです。
小ネタが笑える
それに加えて全編に、ストーリーと多少関係のある笑える要素(新選組が歌って踊れる団体に進化する)と、ストーリーとほぼ関係のない笑える要素(嘘つきの友人や放送事故ギリギリの「溜め」など)が散りばめられています。
このコメディ要素はあくまで味付け程度で、本作品をコメディと規定するほど濃厚ではないのですが、適度に力の抜けたライトな雰囲気に仕上げる原動力になっています。
あくまで軽いファンタジー
通常、こういった作品は(特にFMシアターでは)終盤になるにつれ真面目な展開になっていくのですが、本作品は最期までお気楽な雰囲気に終始します。
終盤に雑なゴーストハント展開になるのはむしろ好印象でした。
イタくて聴いていられなくなるほどの無理なコメディさでもありませんし、FMシアターだって、たまにはこういうライトなものを放送してもいいじゃないですか。
全くジャンルは違いますが「漆黒に落ちる」といい、本作品と言い、2021年の札幌局の作品は適度にエンタメ寄りで好感触です。
出演者紹介
さて主役の観光課職員・三原を演じたのは北海道出身の舞台女優の塚本奈緒美さん。
その他のキャストも、課長役の丹生尋基さん、土方歳三役のリンノスケさん、サイコパス(笑)役の多田萌加さんなど北海道関係者で固めています。
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