- 作品 : ゲノム・ハザード
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA-
- 分類 : サスペンス
- 初出 : 1998年10月12日~10月23日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 司城志朗
- 脚色 : 山本雄史
- 演出 : 保科義久
- 主演 : 有馬克明
それは、イラストレーター鳥山敏治にとっては誕生日の夜の出来事だった。
残業で退社が遅くなり、妻の機嫌を損ねていないか恐る恐る帰宅した彼を待っていたのは床で冷たくなった妻の死体。
突然現れた刑事と名乗る不審な二人組から逃れることになった鳥山は、夜の街をあてどなく彷徨うことになる。
そして、妻の実家、友人宅、昔のバイト先、再び自宅などを尋ねるにつれ、鳥山は自分の記憶と、周囲が語る自分の姿とがかけ離れていることに気がつき始める。
何より自分の記憶自体が少しずつ変化を始めているようなのだ。
自分は誰なのか、どこに住んでいて、何をしてきた人間なのか。
すべてが信じられなくなる中で、“鳥山”はどのような真実に辿り着くのか。
司城志朗さん原作のサイエンスミステリー小説を原作とするラジオドラマです。
原作は青春アドベンチャーでこのラジオドラマが放送された1998年に第15回のサントリーミステリー大賞読者賞を受賞しています。
映画版も間もなく公開
また、本記事をアップしたすぐ後の2013年1月24日には、西島秀俊さん主演で「ゲノムハザード」(“・”がなく文庫版と同じタイトル表記)として映画が公開される予定です。
この映画は日韓共同制作とのことで、キャストも半分が韓国の方です。
もともと原作には韓国要素はありませんし、そもそも主人公の名前からして変更されているようです。
どのように翻案されたのか興味深いところです。
ジャンルが難しい
さて、映画はともかくとして、このラジオドラマは原作に忠実につくられているようです。
内容としては、科学的な事象をタネに使ったサスペンスものです。
科学的なトリックという面では東野圭吾さんのガリレオシリーズが有名ですが、本作品「ゲノム・ハザード」は犯罪の謎解きをメインテーマとする推理小説ではなく、本ブログの分類でいうと、「SF(日本)」、「サスペンス」、「推理」、「活劇」のいずれの要素も持った作品です。
上手く騙して欲しい
本作品のキーなるSF要素は、「記憶」と「ゲノム=遺伝情報」と「ウイルス」。
本作品で前提となっている科学的な仮定が、どの程度が正しいものなのか、私には判断できないのですが、ネットで簡単に検索してみると確かにそのような説もあるようです。
SF要素をトリックの種にする以上、私のような素人を騙せるくらいのリアリティはあって欲しいものです。
その点で本作品については、鳥山が倒れた僅かな間に“感染”したというのがちょっと気になりましたが、概ね一定の説得力がある前提でした。
盛りだくさん
ところで、主人公の“鳥山”は突然思いも寄らない事態に巻き込まれ、逃げ回る羽目になります。
逃走している内に、協力者が現れたり、別の勢力が“鳥山”確保に加わったりする展開は典型的なサスペンスです。
また、単なるSFやサスペンスではない要素として、一種の密室や誤解といった推理系の要素もあり、ちゃんと“殺人犯”も存在する内容です。
なかなか盛りだくさんで、先の展開が読めない作品でした。
うまく消化できている
そして最後にちゃんと全ての謎解きを済ませているのも好印象です。
エンディングも全ての登場人物にとってのハッピーエンドではありませんが、上手く着地した結末だと思います。
ただ、作中冒頭で殺されていた**(ネタばれ防止のため伏せ字)の立場からみるとちょっと納得いかない結末かとは思いますが。
敢えていうならサスペンス
以上のとおり本作品は、SFというほど新しい世界観を作ることに熱心な作品ではなく、推理ものというほど謎解きに特化した作品でもなく、冒険ものというほどアクションに偏重していません。
そのため、消去法的にですが本記事では「サスペンス系」に分類してみました。
織田優成さん全開
出演者は、主役の“イラストレーター鳥山”を、「タイムスリップ明治維新」、「王の眠る丘」などの保科義久さん演出作品ではお馴染みの、有馬克明さん(現芸名:織田優成さん)が演じています。
本作品の脚本はタイムスリップシリーズを始めとする多くの作品で演出の保科さんと組んでいる山本雄史さんなのですが、織田さんのモノローグがナレーションになる脚本になっており、ファンにとっては全編で織田さんの声が楽しめる作品といえるでしょう。
脇役も保科さん演出作品らしい
また、ヒロインのフリーライター奥村千秋役は富沢美智恵さんです。
富沢さんも「ジャガーになった男」など保科作品の出演が多い方ですね。
また、重要な脇役を、ルパン三世に登場する次元大介役で有名な小林清志さん(林下清志さん=ビッグダディではないですよ)が演じています。
この有馬(=織田)・富沢・小林のトリオは、やはり保科さん演出の「完璧な涙」でも競演しています。
90年代に大量に演出を担当されていた川口泰典さんには、渡辺いっけいさんや宝塚出身の女優さんを頻繁に起用する傾向がありました。
やはりスタッフによってキャストには癖がありますね。
【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。
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